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一兆年の夜 第七十九話 天草は生贄として担ぎ出された(七)

 午後八時二十四分十八秒。
 フクロン、チュンニーナ、ビーリ、ネズ高、そしてウメッ禽を含めた約百五名の生命は顔中恐怖の青色に染まる。理由は生命が死んだのも一つ、もう一つは梟族の青年を食べたのが他でもない戦闘に特化した銀河連合だった。
「あんなの如何やって倒ちゅんだよ。指揮官型が出て来るなんて流石に無理でちゅ!」
「ここは、ここは俺に任せな、さ、さ、さああん!」震えつつもこの中で自分しか居ないと思い、前に出るウメッ禽。「恐怖がある事は別に良くない訳じゃなああい。恐怖のせいにして何もしない事にこそ結果として良くない状況に成ああある!」
「一理あちゅが、だからとしてもあいつを相手に僕達は如何対処すちゅ?」
「無理無理無理無理無理いいい!」
「こ、ここはッチ。ここはッチ、大声を出して俺達の背後に避難させましょうッタ」
「いや、遅おおい。もう動き出したああん!」
 仕事とは話し合うばかりで決まる訳ではない。話し合う時間が長い程に時既に次の段階に移る為に常に状況は拙速を求め続ける。状況は遠回りを許さない。常に近道を進ませ、熟慮する時間すら設けない。これが頭脳労働者達の限界。故に状況は肉体労働者の行動力を優先する。その結果はやり方を知らないばかりで思い付く限りの最善策しか取れない。肉体労働故に巧みな行動が採れずに結果として最終的な成果は芳しくない。これが肉体労働者の限界。ならば進むべき道は両者の良い所を上手く取り入れるしかない。だが--
(ウメッ禽が防戦を強いられてるちゅ。防戦一方じゃあ必ず喰われるような物じゃないか。でも、でも、でも……指揮官型の手足が速過ぎて逆にこっちが助けようとすると火傷どころじゃあ済まないちゅ!
 こんなに力の差があるのにどうやってちゅ……全然案が思い付かないちゅ!)
 フクロンはこのままウメッ禽を見死なせるしかないと思い始める。それで何が銀河連合とわかり合うと言えるのか。結局はわかり合わない方が遥かに幸せではないか、と考え始める。それはフクロンだけの考えではない。ネズ高、チュンニーナ、そしてビーリも同様に考える。このままでは後数の分にてウメッ禽は指揮官型に食べられる。だが、加勢すると自分が死ぬだけで何の成果にも成らない。それだけに指揮官型は強い。強いからこそ、力を合わせて倒すという戦法が取れない。ここに軍者経験のある生命が一名でも居たら状況は違っていただろう。だが、その経験者はこの場に居ない。関係者が駆け付けるまでまだまだ時間が掛かる。
(そんなに長い時間も待ってられないちゅ。その間にウメッ禽は死んでしまう。何とか成らないのか……んっちゅ?)
 フクロンはある物を見て脳内で透き通るような何かを感じる。そう、それこそが閃き。フクロンは直ぐにネズ高、チュンニーナに呼び掛ける。
「それで何をちゅるんだ?」
「只転がせば良いだけちゅ!」
「只転がせば……それでも指揮官型を倒ちゅ意味に--」
 あ、わずかな隙……そちゅなんだな、フクロン--と普段は肉体労働者寄り思考のチュンニーナは閃いた!
「でもあの指揮官型だぞ。上手くやれんと逆にこっちがあいつの足を引っ張ちゅ事に成ちゅぞ!」
 神様を信じるんだ、二名共オオッチ--そこへ呼ばれてもいないのにビーリが駆け付けて陣頭指揮に当たる。
 そうして四名は苦戦中のウメッ禽を助けるべく協力してゆく。この方法では所詮、隙を作れるだけ。隙を作った所でウメッ禽が上手くそれを活かさなければ意味はない。この方法で指揮官型を倒せる確率は極僅か……それでも懸けるしかない。極限まで追い詰められた生命が今まで生きて来れたのは誰かを守る為に幾らでも明日を捨てる覚悟があるかないか……それだけの覚悟があって今日まで全生命体は生き延びて来られた。
 そしてフクロン達はこの一撃に全てを懸ける。後はウメッ禽がその僅かな隙を逃さずに指揮官型を倒せるかにも懸る。其れでもやるしかない……そんな思いで転がっていた穴付き青銅缶は転がされる。しかもその見計らいはビーリが担当する。
 結果は指揮官型はウメッ禽に留めの一撃を刺そうとして己の下半身への注意が緩慢と成って、横転。突然、指揮官型が転ばされたのに一瞬呆気にとられそうになるウメッ禽だったが--
「ウオオオオ、死なばアアア」ウメッ禽は指揮官型の首目掛けて最大限の力を籠めて右前足で踏み付けた。「諸共オオオ……グフウウん!」
 結果は指揮官型は首の骨を粉砕された衝撃で息絶える。だが、ウメッ禽は指揮官型の素早い一撃を左わき腹に貰って四本膝を崩した。直ぐ様、四名と一部の大衆がウメッ禽に近付いて彼を指揮官型から大きく距離を離した。そして唯一の医者であるネズ高は緊急手術を始める。
「誰でも良いから清潔な傷止め紙と鋏、鋏をおおおお!」
「死ちゅなよ、ウメッ禽!」
「協力しよちゅか、ネズ高ちゅ?」
 その前に足を綺麗にしに行け--とあくまで医者の立場で物を言うネズ高だった。
(あーあちゅ、結局俺は働かない意義を見出せなかったちゅ)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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