FC2ブログ

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(二)

 ICイマジナリーセンチュリー四十一年六十三日午後三時二分一秒。

 場所は国家神武首都四門中央地区神武聖堂広場。
 ここには数十万もの国民が炊飯器で出来たご飯粒のように押し合うくらい集まって
いた。
 この日は国家の象徴である天同生子の誕生祭だ。祭壇の中央には祝われるべき
者が立っていた。
(皆の顔は笑顔に満ちてるわ。こうゆう時ほど幸せなことはないわ!)
 聖子は思わず笑みをこぼす。その表情は神秘性に富み、あらゆる生命に安らぎを
感じさせるものだ。
「ああ、幸せだう。生子様の笑う表情はわいを幸せうにしてくれっちゃ」
「ゥゥ生子様万歳! ォォ仙者生子様万歳!」
「ありがたや~、ありがたや~」
 国民一名一名はあらゆる仕草をしながら生子を讃えた!
(この幸せがいつまで続くかしら?
 いえ、続けてみせるわ! 必ずや--ん?)
 生子は気付いた--幸せでない者の存在に。
(国を作るということは必ず幸せを享受出来ない者を生む。
 あの者は私を強い眼差しで見つめるわ。いえ、あの者だけではないわ!
 この者もその者も……でも私の力で出来るのかわからないわ)
 生子は安らげない表情になった。それを見た者達は次々と安らぎをなくしていく。
「生子様が辛そうるのじゃ! これは大変なことが起こるる証拠じゃろう!」
「なっに! そっれは大変だ! れっいの食い過ぎるモノか!」
「生子様が笑顔をなくしたよおお! うえええん!」
 それを見た生子はどうすればいいのか迷う。その時に後ろで十枚程度の書類を
眺めていた齢二十一にして三の月と十日目になる灰色に近い黒色の体毛を持つ
八咫烏族の青年は生子に進言する。
「生子様だ。ここは真実だでなくとも笑顔だにおなり下さいだ!
 国民だを安らげないようでは象徴だとして如何かとだ!」
「相変わらず親譲りの現実主義者だな、アンジェル。
 確かにそれならば民も笑顔を取り戻すでしょう。
 けれどもそれは大多数の者しか満足しない。少数は笑顔を見せない。
 それは国家神武で幸せを享受出来ない者達。その者達にどう接する?」
 生子から質問された神武八咫烏族にして故アルジェミィ・アルティニムムの第一子
アンジェルは答えに一瞬迷った。
「それは読四様だと零様だ、それに我々だがやるべき事でございますだ!」
「それでも享受出来ない者を満足出来なければ意味は成さない。私はそんなのは
可能でない事は一番わかる。
 しかし、それでも私はそんな事をやらなければいけないと考える!」
 生子の無茶苦茶な言い分にアンジェルは苦言をする。
「我儘だを言うべきではありませんだ! 生子様は象徴であられます!
 万が一あなた様だの命だに関わることがあったらどう責任をとれるのでしょうかだ!
 官房官だの私だでも切り抜ける題目だになりませぬだ!」
 苦言を聞いた生子は自信満々の笑顔をアンジェルから見た左側面で魅せた!
 それを見てアンジェルは目を逸らさぬことで必死になる!
「照れるな。私の美しさは自分でも認めている」
「ごだ、ご自分だで言うものではありませんだ! あなた様だは本当だに手間だが
かかって困りますだ!」
「そうね。それでも私はその手間のかかることを今からしてみせる!」
「はいだ?」
 アンジェルの両眼の焦点が合わなくなった--直後に両眼は一点に集中させる
ように強く瞼を開けた!
 それは生子が祭壇を降りて強い眼差しで見つめる者の一名である蝶族の少年に
近づいた!
「な、何、いえなんでるしょうる?」
 齢十二にして五の月と六日目になる紫色でシッダル数字の八の紋様を両羽に持つ
少年は右の触覚を揺らしながら戸惑う。
「少年よ。私はあなたに辛い思いをさせてしまったわ」
 その言葉を聞いた少年は内にある怒りをぶつけてしまう!
「な、何が辛いる思いるをさせてるしまったるだ! 僕は、いや僕達は国さえなけれる
ばこんな思いるしなくるて済んだるのに!
 あなたが国さえ宣言しなけれるば今頃パパと一緒に大アリスト町を幸せるに暮らせ
たるのに!
 そのせいでパパは降りてきたモノに食われてるに!」
 少年は吐き出すように涙を流す! それを見た享受せし者達は更に安らげない心
持ちになる!
「ソ、ソウダ。クニノセイデアイツモ」
「俺ッチーは合ってーないのかーな! そんーな気ーがする」
 それを見た享受しない者達は一斉に生子を責め立てる!
「生子様あ! あなたあはとんんでもないい事をしてくれれたな!」
「あたしなってそのせいで息子と娘を死なっとるのよ!
 卵をかえっせー!」
「私もよ! 息子は戦った! のに死んだ! 返してよ、息子を!」
 当の生子は笑顔を見せる。
「な、何が嬉しいるんだよ!」
「いえ、良かったわ。あなた達の心の内を聞けて。
 私はまだ一つじゃないと自覚出来るのよ」
「い、意味わからないるよ! せ、生子様が意味わからないるのはいつものことだけ
るど」
 皆は生子の言葉の真意に戸惑うのか、中央地区全体は静まりかえる。そして、
追い打ちをかけるように、更に意味を理解出来ないことを生子はする!
「意味を見いだす事、ここに叶わず……
 生命は意味を求めて、迷い道を征く。
 迷い道から道を切り開き、また迷い道へ。
 そして更に道切り開き、またまたと。
 果てなき旅路は続いて征く。
 意味なき道から意味求めて。
 それこそ意味であるのかな……」
 皆の者は歌に全く感じない歌を聞かされて頭の中を更に迷走させる!
「そ、それで歌を歌っているるつもりでしょうるか?」
「ええ、歌っているわ。これは必ず皆の心に響くと思い、年の毎に必ず歌うのよ。
 今日はちょうど私の誕生祭も兼ねて歌ったわ!
 どう? 上手でしょ?」
 皆の答えは心の中でいいえだった。
「生子様はこんなことしなっとばもっと輝かしき御方になれしで。
 でも歌は良くなっともやっぱり生子様はわしら全員を思っとお歌いになられしよ!
 生子様万歳!」
「そ、そうダア! マウグスタさんが生きていタアラ俺達全員をお叱リイになられタア!
 あの方は生子様を何ヨオリ大事になサアった御方ダア! それだけ大事になされ
タア御方をわしらは何て事を思うたカア!」
「そ、そうにょ! うちはどうしてそんな事思ったにょ! 後悔するわ!
 でも後悔する暇あるくらいにゃら生子様に一生懸けて支えることをしにゃいといけな
いにゃ!」
 皆の心に活気が戻っていく--顔に自信が溢れるように。
「クニになった事だけは認めなイヨ。ダケドいつまでも下を向いている場合じゃナイ!
トウサンならこう言ウナ。『セイコサマを困らせる暇があるならまず己自身を何とか
シロ!』ッテ」
「やっぱり、生子様は、偉大、だったわ。でも、私は、町に、戻りたくてよ。
 それだけは、事実。けど、真実は、生子様、だけでなく、愛する夫や、十名以上の、
息子達、今いる、この子も。それ含めて、国のみんなも、守りたい!」
「ウツクシイワ。セイコサマガウツクシイワ」
 享受出来ない者達は次々と心に自信をつけていく。
 それを見た蝶族の少年もついに--
「認めないると! 僕はパパの死を認めないるからこんな辛いる思いるになるるの?
 教えてる生子様!」
 少年の訴えに生子はこう言った。
「自分で決めなさい! 他者に答えを求める事はかえって自分の為にならないわ。
 まずは己自身で悩み、そして己の心に従いなさい!
 それが万物の神々が私達に与えた答えよ!」
 その言葉に少年は静かに両目を瞑る。そして瞑りながらゆっくり涙を流していく。
(ゆっくり泣きなさい。それがあなたの答えなの)
 少年を見つめ終えたのか、生子は空を見つめる。
(私は答えを見つけられないわ。歌の通り私は意味を探しているわ。
 この空が歪む訳……神々は曖昧な答えしか返らないわ。
 やはり自分で見つけていく以外に道はないわ!
 それが例え意味無き道であったとしても!)



 空の歪んだ先は刻一刻と近づく……

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR