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一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇

 ICイマジナリーセンチュリー四十一年二月六十七日午後十一時一分十二秒。

 場所は国家神武首都四門中央地区国家防衛官邸。その入口付近。
 そこへ齢二十五にして四の月と十二日目の黒髪が肩まで伸びて、均整な顔つき、
口は大きく上下唇は小指の横幅の大きさ、両眼は中庸な大きさ。成人体型は人族に
してはコンマ一以上高い。
(零はここにいるわ。リムーバからの報告によるとあの子はここでリモートを入れてる
わ。いつまでも他者に迷惑をかける子になってるわ。亡き母上の仰るとおりだわ)
 風が夜に静寂を与えないように吹く。それを受けて黒髪は綺麗にそして美しくなび
いてゆく。その様はそのものを美しく魅せる。そう、この者は美しい。ただ残念なのは
鼻が兎族のように可愛い以外に可愛さが全くと言っていい程見あたらない事。
(気配? 変だわ。零とリモート以外に誰かいるの?
 直ぐに入らないと!)
 その者は三階にある国防官寝室に向かって、虎よりも早く大地を蹴った!
 名前は天同生子。国家神武の頂点に立つ象徴。
 そしてこの物語の主人公でもある……

 午後十時時四十分三秒。
 場所は国家防衛官邸三階国防官寝室。
 毛布を首まで被る形で二名の人族が仰向けになっていた。一名は齢二十二にして
七の月と十五日目になる青年と齢十九にして二の月と十八日目になる少女が事を
済ませた後だ。
「どうだ? これで俺を好きになれたか?」
「なれないわ。あなたはいつも私を強引に動かそうとする。三の年より前にあなたと
出会わなければ良かったわ!」
 彼女は目を逸らしながら言った。
「別に動かそうとしてるんじゃない。あれは神々が導いて下さったことだよ。リモートと
の出会いもそしてこうやって命を産む儀式も」
「本当の事じゃないわ。あなたは寂しかったからよ。
 だってあなたみたいなのがこんな時に神々に礼を整えるなんて変だわ。私の好き
でない雄、天同零と呼ばれる雄がそんな弱々しいことなんて」
「的を射てない! 望遠刀の名手が俺の心を外すのか?」
「誰が狙い撃ちますの! 私は勘で言ってるのよ。私は思うわ」
「思う? 何を思う?」
 リモートと呼ばれる少女は零と呼ばれる青年の顔を真っ直ぐ見つめて言う。
「あなたは母を求めてるんでしょ?」
「ぐっ!」
 零の顔は弱々しくなった。彼は全体的に剛面な顔つきだ。それだけ母のことは彼に
とって辛い物であった。
「お前にわかるのか! 母上のことなんかよ!」
「わからないわよ! 私なんて産まれて直ぐに両親を覚えしモノ達に食われたわ。
 だから私も親を求めることには反対しないわ!」
「話の線が脱けてるぞ! 俺が言いたいのは俺の母、天同子季がわかるかと聞いて
いる!」
「さっき言ったでしょ! それならあなたの母はどうなったの?」
 リモートの問いかけに零は一瞬だけ答えを躊躇う。
「母上は、俺を庇って食われた……
 俺が母上を死なせたんだよ。俺さえいなければ母上は死なずに済んだのに!」
「零……辛いのね。あなたも」
「俺にいちいち共感するな! 俺は皆から好かれない存在なんだよ!
 俺はいつだって好き勝手にやらせてるんだ! いつも喧嘩する兄読四だって!
 たとえ越えられない姉である生子にだって俺は好き勝手やらしてるんだよ!
 なのに、なのに俺は母の死だけは忘れることが出来ねえんだよ!」
 零はこの後もリモートに自らの悲しみを吐き出していく。半の時が過ぎる程に。
「全く弱いな、俺も」
「弱くて良いわ。あなたは私の時だけ弱さを見せればいいわ。それ以外は--」
「お前って奴はやっぱり母の代わりは務まらないな」
「務まるわけな--」
 突然扉をたたき壊す音がした--扉のあったところに天同生子が左腰に携えて
いる神武包丁の柄を右手で握り、立っていた!
 二名は幽霊を見るくらいに恐がり、そして驚く!
「姉貴! 扉壊して勝手に入るな! これは別に顔を上げきったことを--」
「おぞましきモノの気配……そこか!」
 生子は零達の直ぐ後ろにある成人体型一ほどある物入れの最上段に神武包丁を
飛ばす--平行に刺さり、そこから茶に近い赤色の血が流れる。それを見た二名は
驚く!
「あ、あんな所にあいつらがいたのか!」
「す、直ぐ調べ--」
 リモートは布団から出ようとするが、零は成り合わないトコロを触った--すかさず
肌を強く叩く音が響く! それはリモートの左手を熊の手状態で広げて零の左頬から
遠ざかるように横へ移動した後--零の右頬は赤く染みつく。
「堂々と触らないでくれる!」
「すまない。こうするしか方法がなかった!」
「代わりに私が調べておいたが、もう既におぞましきモノは死んだ。
 二名とも試しに見るの?」
 いつの間にか生子は神武包丁を抜き、刺さった所を開けていた。
「姉貴! すまねえが、しばらく外に出てくれるか?」
「裸は嬉しくないと?」
「そ、そうですわ生子様! さすがの私も零が見てる前で裸を見せるわけには参りま
せぬ。ど、どうか国防官の仰ることを理解して頂けるでしょうか?」
 生子は無言で二名の前で軽く頭を下げて、扉を壊した所から出て行く--互いの
視線が見えなくなるまで。
 それから十五の分が経過。
「いいぞ、姉貴!」
 生子は零の合図に応じて、中に入る。既に彼等は普段着に着替え終えた。
「ええ、生子様。た、確かに死んでます。ど、どうしてこんな所にまで覚えしモノがいる
の? こんなの初めてだわ!」
「いや、初めてじゃないはず、だぞリモート!」
 零の言葉に両眼を開閉した。どうやら言葉の意味が理解出来なかった。
「思い出せ! 三の年より前に俺達が戦った指揮官型のことを!」
 その言葉を聞いてやっと頭の中にある霧に光が差した! リモートは納得すると共
に恐れを抱く!
「こ、恐いわ! こ、こんなの初めてじゃないのに恐い! 覚えしモノは私達の姿形
だけじゃなく、見たこともない姿になれるの! も、もう私は--」
「ああ、無理をするな! これからお前は腹の子供を育てていくんだ!」
 その言葉はたちまちリモートの顔を太陽の色みたいに染め上げた!
「だ、誰が国防官の子供を産むんですか!」
「産むさ! 何故なら俺のモノは百発百中だからな!」
「腰砕けたことは言うべきじゃ--」
「どうやら二名は決まったみたいね」
 さすがの生子も二名の喧嘩に無言を通せなくなった。
「ど、どうゆう意味でしょうか生子様?」
「決まってるわ。それで挙式はいつにするわけ?」
 生子の言葉にリモートは口を開けたまま何も言えなかった。何故なら生子は真実
なき言葉を吐かないから。
「明日にでもやってい--」
「急ぎすぎよ! 明日はあなたも知ってるとおり国務院選挙の日。
 私は象徴である以上、読四の応援に行けないわ。代わりにあなたが行くしかない
わ!」
「誰が兄貴の応援に行くかよ!
 あんなのなんて票が集まらず、下野すりゃいいんだよ!」
「絶対外れて欲しいわ! 私が零と婚約なんて有り得ないわ!」
 リモートの叫びも空しく、一の月より後に二名は婚約。
 彼女はリモート・キングレイからリモート・天同となる。妊娠一の月になろうとして
いる赤子を身籠って……
(ついでに付け加えるけど、読四は見事に再選したわ!
 投票した理由が普通なのが良いというよくわからないものだけど)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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