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一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(六)

 四月八十三日午前三時零分二秒。
 場所は廃マンドロス村西付近。遠征部隊はそこに待機していた。
「第十部隊を食らったからわかるが、おぞましきモノ共は弱い連中を先に狙う!
 次に形勢が有利でないと見るや鮮やかに身を引く! 悔しいが学ぶべき事がまだまだあるな!」
「へえ、あなたみたいなものでも学ぶことってあるのね」
「うるせえぞ雌が! お前は偵察でもしてればいいんだよ!」
 防衛官天同零と偵察官リモート・キングレイはお喋りをしていた。
「雌じゃないって言ってるでしょう? ちゃんとリモート・キングレイって名前なんだから」
「声が大きいぞ! 合図はまだ先なんだから音量を下げろ!」
「あなたが一番大きいよ--」
「いえい、二名とも声が大きいですよい! とにかく静かにして下さいい!」
 二名を注意したのは齢二十にして二の月と二十日目になるアリスト蜻蛉族の
正岡シ季だ。第八部隊の隊長を務める雄だ。
「全く二名があ会わなあければこんなあに騒あがしくなかあったとおいうのに。こりゃあ将う来子作りりす--」
「誰がしますの! こんな礼儀知らずな雄と!」
「声ガア大きいゾオ。だが、真島ヨオ! 謹んデエ慎むベエからずな事を言っタア
お前が良くナアイぞ!」
「申し訳ありまあせんベルッドさん」
 第二部隊隊長を務める真島ベロウ都は本隊副官ベルッド・マウグスタに苦言され、落ち込んだ。
「落ち込むのハアこの戦いガア終わったラアいつでもしロオヨ!
 それデエ防衛官殿! いつ合図を送るのダア?」
「望遠鏡で眺めている! 今はまだ産卵中だな。産卵が終り次第おぞましきモノに
俺達が来たことを知らせる!」
「時間かかるるな! しっかあし望遠鏡で眺めえれば眺めるる程に村の状況はあ、悲しすぎるるくらあいの惨状だよお! 大地はあ灰色おに枯れてえ、村に流れるる水は桃色お。これえで生命があ住めるる方が凄いいよ!」
 望遠鏡で眺めた者達は皆、おぞましきモノのよって食われた村の惨状に心を痛める。そうこうするうちに産卵は終了した。
「では第九部隊隊長ジンドラウ・ムシャリーニよ!
 火を付けた物部刃をお月様に向かって放て!」
 齢二十二にして三の月と五日目になるメデス蟷螂族のジンドラウは蟷螂用望遠刀を器用に扱い、月の方角へ放った!
「防衛官殿い! 学びしモノ達が気付きましたい!」
「ではこれより攻撃を開始する!」

 午前五時五十分十八秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区神武聖堂生子の間。
 天同生子は表側から騒ぐような駆け足の音で目を開けた!
「ああ、どうした?」
「どーうしたもーこうしーたもありませーん! つ、ついーに戦いーが始まりまーした!」
(戦い? 何のこと? 今日はどんな、ああ。そう言えば何でしょう?)
 ピートの訴える言葉に目覚めたばかりの生子は頭が回らなかった。
「ピート・プートよ! 詳しい報告をお願い」
「いいでーすか! 国ー防官率ーいる大ー部隊が第二東ー門より東ーに成人体ー型五千のところにーある廃マンドロス村ーへ向かーうというものーですよ!」
「ああ、ようやく思い出せたわ。どうやらそれを報告しにここへ駆けつけたのね」
「いえ、それだーけではありまーせん! 得体ーの知れーないモノは何だーか指揮官らーしきのがー現れましーた!」
 それを聞いた生子は予測しない事にすっかり目覚めてしまった!
「何! そんな事があるなんて! 私の予測が外れたなんて!」
 彼女は予報、予測には絶対の自信があった!
 彼女は『予測は必ず当てる』という自信がある。外すことはないと思っていた!
 だが、予測は外れた--容姿が台無しになるくらい取り乱した!
(私は罪深い! 自らの予めを測り外すなんて!
 遠征する者達にも、零にも申し訳のないことをしてしまった……
 私は国家の象徴として格を取り下げないといけないくらいだわ!)
「せ、生子様! おらがーこんなー事をー言うーのは差ーし出がまーしいですがー、外しーたのをー悔やむーなら今はー国防ー官殿達が無ー事に帰還するーことを信ーじましょうー!」
 その言葉を聞いたお陰で生子は徐々に我を取り戻していく。
(そ、そうだわ。また私は四の年より前の事を後悔して自ら取り乱すなんて!
 この場にお父上や母上、それに大叔父上高様からお叱りを受けるわね!
 それにもし零がいたなら怒られていたわ!
 私だけで希望に成るなんて腰を砕けた事を考えるなんて! ふふ、私も熟すのはほど遠いわ。私は誰なのか? そう私は--)
「私は天同生子。秘境神武最後の仙者!
 私は悠久の夜に照らす日の光……
 朝を迎えても、昼を迎えても。
 夜は終わらないわ。
 でもそれが世の命運び、世の宿めし運び。
 光は暗闇と共に、我等は命と共に。
 遠すぎる過去へ誘われるわ……」
「せ、生ー子様ー?」
 歌にもならない歌を聴いてピートは引いている。
「どう? 上手いでしょ?」
「え、えーえお上ー手でございーます……」
「無理しなくて良いのよ! 上手く無い事で自らを隠したって私はお見通せるのよ」
「はーい、申し訳ーございーませんー!」
「じゃあ引き続き偵察をして、ピート・プート」
 命令を聞いたピートは普段通りに身を固めて、いつでも動ける状態で構えた!
「ではーどういっーた件でしょうーか!」
「引き続き安全圏から廃マンドロス村を偵察して!」
「了解!」
 ピートは表側から駆け足で居間から出た!
(指揮官……
 零は勝てるのかしら?
 いえ、あの子は必ず勝てるわ!)

 午前六時一分四十秒。
 場所は廃マンドロス村。双方の死体で村は埋め尽くされていた。
「これで最後だ!」
 天同零は自ら持っている最後の物部刃を羊型に放ち、中心を貫通させた!
「零! 果物包丁うだがあ、使あえ!」
 ベロウ都は背中に乗せた荷物袋を下ろた。中から果物包丁を前右足で取り、零に放り投げた! 零は柄を両足で蹴りながら指揮官型の方へ向かっていく!
「猿型かよ! 遊びじゃねえぞ!」
 包丁を右手で掴んだ零は猿型の襟首を斬った--斬られた部分から茶に近い赤色の血が扇形に噴出。
「国防官! 前に出過ぎよ!」
 リモートは援護するように物部刃を放っていく!
「刃を使いすぎだ!」
「誰のせいですか! あなたは大事な要職に就いてますわ! 動かず指示だけすればいいのです!」
「断る!」
 返答と同時に牛型の眉間の包丁を深く刺す!
 その時、零の左眼に球体のような物が当たった--球体は卵の殻みたいに壊れ、零は左眼が見えなくなる!
「ぐっ! これは卵じゃねえか!」
「国防官! 目はみ--」
 零は見た--リモートの背後に指揮官型が中間の右腕を振り下ろそうとするのを!
「しゃがめ、リモオオオト!」
「しゃがめって!」
 リモートは言われた通りすぐにしゃがむ--それは彼女の赤い髪の天辺を擦るように過ぎた!
「な、何でなの?」
 リモートはいつの間にか背後に指揮官型が居る事に恐れおののく。
「待ってろよ! お前は必ず俺の妻になるべき雌だ! ここで土に還ってたまるか!」
 引き抜いた果物包丁を握り、指揮官型に近づいていく!
 しかし、羊型、猪型、鳥形が立ちはだかる!
「くそ! 刃毀れがなければ一撃で楽に出来るというのに!」
「わかってるなら私に構わないで! それに絶対あなたの妻にならないからね!」
 指揮官型は中間の左腕を振り下ろそうとする--零は二撃で何とか鳥形を倒してでも指揮官型に近づこうとするが!
「くそ! 今度は刃が欠けているぞ! 素手でやるしかねえのかよ!
 こんな時に真島が余裕なら労に苦しまないってのによ!」
「俺は皆のお支援で足をお回せんん! すまあねえ!」
「でい! くそ、倒れねえ! 万事休すか!」
 と零が言った時、一名の中年がリモートを前に弾き飛ばた!
「きゃあああ!」
「どう! おっさん! 助かったぜ、ふん!」
 副官ベルッド・マウグスタは指揮官型の振り下ろした手を挟むように掴んだ!
「おっさんではないと何度言えば--」
「だあ! い、いかん、マウグスタあああ!」
 指揮官型は更に中間の腕を先ほど振るった両腕のやや下から生やして刺すように両腕をマウグスタの脇めがけて振るった--それは彼の両脇を深々と突き刺す!
「グ……ああぁあ」
 それが彼の最後だった。二度と返事を出さない肉体となった。
「おっさああああん!」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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