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一兆年の夜 第七十四話 優央の記憶 真古式神武の終焉(終)

 ICイマジナリーセンチュリー二百十五年十月一日午後九時零分零秒。

 場所は国境。天道星央道。そのほぼ中央にて優央は史烈の亡骸を抱いたまま正座を止めない。それを好機と見た周囲に展開する銀河連合は一斉に物部刃のような何かを発車しようとした時、突如として新天神武側より各仮設民家に狙撃を受ける。
「親父、それにお袋……う、そんな!」新天神武が狙撃を始めた理由の一つとしてちょうど二名の所に駆け付けた全身切り傷だらけjの躯伝が救出された事も関係する。「お袋なのか、それは!」
「ああ、泣いて良いんだぞ。史烈はお前については何も言わなかったが……泣いても良いんだぞ!」既に涙を流す優央は促す。「泣く事は心の中の苦しみや辛い事を洗い流す為にあるんだ!」
「死に目も遺言に立ち会う事も出来なかった僕に」背中を見せて泣く姿を見せまいとする躯伝。「そんな死角はないんだよ、絶対に僕は泣いたりする物か!」
 いいえ、泣いても良インダヨ……躯伝様--既に父や史烈の事で胸が張り裂けそうな己を我慢出来ずに号泣するメランコリーナは促す!
「僕は、僕は、僕は……なあ、親父。僕が進むべき道は何処なんだ? 真古式神武はもう何処にもないんだよ」背中越しに優央に尋ねる躯伝。「お袋が愛した新古式神武はもう何処にもない。親父の愛した真古式神武ももうない。じゃあ僕はこれから何を指標に生きて行けば良いんだよ!」
「指標ならあるじゃないか、今だけ僕の刺す方角を見よ」優央は徐々に近付く新天神武救出隊に向けて指差す。「僕の物語はこの後終わるだろう……だが、天同躯伝の物語はまだ始まってすらないんだから!」
「親父の物語は終わり、これからは僕の、僕の物語?」
 ここから先は優央自身の後書きで詳細に説明されよう。それは次のように記されてゆく。
『--こうして真古式神武は終焉を迎えた。けれどもそれは納得のいかない終わりだとは
限らない。このように僕が残り寿命に掛けてこれまでの記憶を辿って記してゆくのだから
な。この後についても少しだけ記述しよう。
 先に脱出を図った真古式神武首脳陣の内の最後の最高官を務めたストラ戸はその後、
一の週もまるで魂が抜けたように過ごした後に想念の海に旅立った。享年四十一歳。
 副最高官のドレイズは今も生きており、たまに新天神武の政治状況を報告しに来る
ものだから困るよ。僕はもう隠居の身なのにね。
 カモ八郎はその後、剛力党の党員と成って近々立候補するとの事。まだまだ現役の身
だな、カモ八郎は。
 チュウ十五朗は出家して残りの余生は山で過ごすらしいな。僕とほぼ同じ考え
なんだろうな。
 ハヤブルスは無事生き残り、新天神武でも配達員として空を飛び回るとの事。たまに彼
がここへ来る場合もある。それだけに彼に対しては親近感が湧く。
 序に鳩山ポッしょうについても紹介すると彼は後にハヤブルスの上司と成ったそうな。故に
ハヤブルスは日毎に彼の頼りなさに困ってるとの事だ。
 そう言えば忘れていたが記し忘れていたが、キューかるは如何成ったかだろう。今も僕の
連絡係として勤める。時々、彼には躯伝の元へ行くよう再三に亘って勧めるも首を横に
振るだけで言う事を聞いてくれないな。僕は後少しの寿命なのに彼は最後まで見届ける
つもりだな。困った坊やだ。
 他の者達についても記したいが、既に日記は後少しの頁だ。なので必要な分だけ記して
幕を下りるとしようか。真古式神武は確かに銀河連合に喰われて広大だった領地は一瞬
にして奴らの支配地と成った。けれども生命の国は真古式神武だけじゃない。新天神武は
早速借款を全て取り返す為に進軍を開始。僕達の関係者の知恵もあって少しずつでは
あるが、担保確保しつつある。それが僕と最高官との取り決めだ。借りた物を返す方法
として契約した事を果たすのが大人達のする事だ。後は左右されやすい民意を何処まで
納得させるかだ。ここが新天神武の硬直性。
 もう良いか、隠居した僕が記す事じゃないな。後は躯伝自身が描く物語の為にも僕は
緞帳を下ろそうじゃないか。ここまで読んでくれて感謝する。天同優央の軌跡を記した
真実と幻想を織り交ぜた物語は幕を閉じよう。この先は君達に任せる。おいぼれの、いや
僕達老者は黙って次の世代に席を譲らないとな
                              真古式神武の終焉 完

 まだ頁を残すようだな。ちょうど躯伝が帰宅した頃だな。確か--』

 未明。
 とある民家に齢十八に成る天同躯伝がある老者の所に尋ねて来た。
「何じゃ、ゴホゴホ……手短に済ませろよ」
「別れの言葉を告げに来た」
「そうか……とうとう始まるのか」
「いや、まだ俺の物語は始まらんさ……親父」
「じゃあ何しにここまで来た?」
「それは二の年より前かな? 紹介するよ」
 躯伝は建物の内側に入り、それから横に移動。すると躯伝が立っていた方角に躯伝よりも二の年も若い金色の髪を持つ少女がお腹を少しふくらましながら挨拶をする……「初めまして、私は雄略人族のソーラ六代と申します」
「ソーラ……と言ったら滅多に一般生命の前に姿を現さないという少数部族の者か?」
「御存知でしたね、流石は躯伝さんのお父上ですね」
「別に僕はそこまで褒められる生命ではない。それにしても豪い綺麗な雌に何て事をしてくれたんだ、躯伝!」
「ちゃんと婚約の上で……すまん、秘密にしてたよ」
「別に構わない。もう僕は……ウググ!」
「や、優央様!」躯伝及びソーラの付き者とを務める齢十七に成るメランコリーナは二名に続いて駆け付ける。「至急薬ヲ……薬を、薬ガ!」
「まさか親父……注文しなかったな」
「フ、間隔が短くなる病だぞ。い、今更、苦しんでまで、長生き、して、やら、ないな」
「命を、命を高潔にするおつもりですの!」
 優央と呼ばれる物の周りに生命は複数集まる。中でも医者を務めるテネス鬼族で齢三十九にも成るギロウドロウト・ダッジャールは賢明な治療をして何とか優央は一命を取り留めるも……「どうやら後一乃日乃余命だな」と宣告--優央は納得の微笑みを見せる。
「親父……俺達は結局お袋を失った時の胸の痛みを一生抱えないといけないのか!」躯伝は再度、尋ねる。「如何して生きてる内に悲しみは亡くならないんだよ、教えろよ!」
「それが命の輝きだよ。それが他者を思う心さ。躯伝よ、お前は素晴らしい力を秘める。その力を正直僕やお前の祖父は羨ましがってる。そこへ至ったのは全てお前が他者を思う心を持ち続け、そして僕達天同が培ってきた連続性のお蔭だ。それを誇りにお前はお前の物語を紡げ!」
「ああ、紡いでやるよ。俺はその為にここへ来た。その為にソーラを連れて来た。その為にここに居るみんなという宝を持つんだ!」
 そうして優央は自らの席を躯伝に譲り渡した。
「親父たちの無念、いや願いは俺の代で全て完遂する。例え孫の代にまで掛かろうとも俺は……天同躯伝は全生命体の希望として次の世代の遺産を残さない事をここに誓うぞおおおう!」
 そして天同躯伝の物語は始まる……その前に日記の後書きを紹介しよう。
『--天同優央は日記を記した後、僅かな世話者だけに看取られながら四十八年の人生
に幕を閉じた。

                               優央の記憶 完』

 ICイマジナリーセンチュリー二百十七年一月一日午後一時零分零秒。

 第七十四話 優央の記憶 真古式神武の終焉 完

 第七十五話 最高官のお仕事 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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