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一兆年の夜 第七十四話 優央の記憶 真古式神武の終焉(八)

 ICイマジナリーセンチュリー二百七年十月一日午後二時十五分四十八秒。

 場所は真古式神武旧都タイガーフェスティ中央地区。
 齢十二にして七の月と三十日目に成る神武人族の少年は密かに公務を抜け出してとある建物の中に隠れる。彼が何故真ん中より五番目に小さな建物の二階第三空き部屋にある寝具の下に隠れるのか?
(叔父さんは何時もそうだ。僕に出来ない事を押し付けて困るよ。叔父さんに出来る事が僕も同じように出来るか。勉強なんてこりごりだよ。特に図形の勉強なんて一々解き方を覚える程容量ないし)
 子供は遊ぶのが好きであって勉強が好きではない。その為に少年は人生で初めて責務から逃げ出した。そう、彼は一般生命とは異なる。自らの役割が一般の生命と異なり、重たい。重たいが故に何時も己を強く持てない。己が強くないとこうして逃げ出す可能性だってある……いや、既にこうして逃げ出すのだから彼にはその役割は荷が重すぎると見て相違はない。
(どうせ僕が居なくとも叔父さんが居れば国は持つんだ。そうとも新古式神武は何も僕が居なくとも動く。使命だとか勉強だとかそうゆうのをどうして僕がしなくちゃいけないんだよ。僕が好きに生きて何が良くないんだ。僕は僕のままに生きれば良いんだ。そしたら父さんや母さんだって納得する筈……筈だよ)
 だが、心根が優しい故に途中で抜け出した事を罪深く感じ始める。今にもここから逃げ出そうと考え始める少年。そんな少年が隠れる空き部屋に誰かが扉を開ける。
「そこに居るのは何方様かな?」齢十四にして七の月と五日目に成るプラトー人族の少女は寝具の下に誰か居る事を察知。「寝具の下は隠れる所じゃないのよ」
(あれは人族? でも知らない雌の生命だ。誰だろうか?)
 少年は体を晒した。その顔を見て少女は突然、抱き締めて口付けをする!
 わわ、あにをしるんだ--突然の事に少年の下は呂律が回らない!
「何って……そりゃあ僕達は愛の誓いをしたんだよ」
「初対面だよ。僕達は……って僕?」
「うん、僕だよ」
「胸が少し膨らんでるよ」
「それが僕が僕を示す一名称だよ」
「一名称?」
「君は少し頭が良くないんだね--」
 君は何が言いたいんだよ--幼い少年に取って己の気にする所を言われて怒らない筈がない!
「まだまだ青い。君は自分の本質を言われる事に我慢出来ないんだねえ、そうだねえ」
「それが愛とか言った君の態度か、僕を誰だと思ってるんだ!」
 今度は隠していた己の役割を口にしちゃってえ……面白いんだね、君は--と少女は少年を翻弄。
「ウググ、言わせておけば!」少年は思わず少女に右拳を振るうが。「わわ、わあああ!」
 あらら--体勢の良くない拳打を繰り出した為に右足を滑らせて前のめりに倒れる少年……それを見て呆れる少女。
「ウウウ、雌に格好良くない所を見せてしまったよ!」
「どうやら僕の読み通りに君は頭だけじゃなく、体もまだまだみたいだね」
「君は本当に成んなんだよ、僕をそんなに揶揄って楽しいか!」
「うん、楽しいよ」正直に答える少女。「君は飽きないって」
「生命は見世物じゃないよ」
「わかってるよ……だからこそ僕は信じてるんだ」
「いきなり何両手広げるんだよ!」
「うん、君のような生命だったら僕は幾らでも可能性を見出せる……そんな気がする!」
 それから少女は少年を抱き締める……「だから僕と結婚して、君」突然の求婚宣言--それには口付けされる以上に頬を赤らめる少年!
「君は僕が誰なのかわかってるのか!」
「天同優央。そんなの顔見た事ない僕でも直ぐに理解したよ!」
「僕がどうしてそうだと理解したんだ!」
「何となく君の中に壮大なる系譜を見たからよ!」
「言ってる意味わかってるの?」
「そうゆうのが説明出来ない事柄なの。何でも説明出来たらそれこそ面白くないでしょ。説明出来ない事にこそ僕は可能性を信じるの」
「君は言う事が危ない!」
「へえ、君は古きしきたりを信じるんだ……だったら余計に君は僕と結婚するべきだと」
「意見がぶつかるような生命と釣り合わないだろう」
「それは安直だよ、優央様。意見が同じ場合だと結局上手く行かない物。生命が生命足り得るのはそして雌雄が愛し合う条件は互いにない所を埋め合わせてこそ……優央様には僕にない部分が合わさるの」
「君みたいな何でも出来そうな雌が僕みたいな何も出来ない天同家の落ちぶれに!」
「優央様の良くない所はそうして誰かと比較して自らの評価を上げようとしない所なの。優央様は別に他社と比較しなくて良いんだよ。優央様には僕にはないその心根があれば良いんだからね!」
「僕の心根? そんな物でみんなを引っ張れる筈がないよ!」
「そう、たったのそれだけで十分なの。何も強い力を持つ必要もないの。何も優れた頭脳を持つ必要はないの。たったそれだけで周りは君の為に、君の為に真っ直ぐ進めるの!」
「それだけで……さっきから言おうと思ったけど」
「そこも優央様の良くない所よ。先ずは目の前の事を終わらせてから次の事に移りなさい。君の良い所を聞かれたらどうこたえるの、次の話に移る場合はそこを済ませてからでしょ!」
「僕の強さ……でも結局強い指導者こそ国を動かすんだよ。僕みたいな何も持たない生命に真古式神武を動かせないよ!」
「今はまだそう答えるんだ。でもね、この答えは合ってないよ。待ってるわね、優央様。君が正しい答えを僕に伝えるのを」
「そうか、君はそうやって話を逸らすんだ。もう良いだろう、君の名前は何だ?」
「僕? 僕は春風史烈。史実の史に烈風の烈と記して史烈のれあと呼ぶの」
「の、れ、あ、な。そう呼ぶのに史烈と記すんだね。君も大概変わってるね」
 優央様、ここに居る事はわかりましたよ--空き部屋の外から尻尾で自身の体を止めるのは齢十三にして七の月と八日目に成るルギアスカンガルー族の少年が優央を連れ戻しにやって来た!
「そろそろ行くよ、史烈」
「うん、また会いましょう」
 そうして優央と史烈は約束を交わし、空いた時間があれば内緒で会うように成ってゆく……

 それから三十一の年より後のあの日にて二名はあの時の質問の答えを精神世界の中で語り合う!
『ねえ、優央。そろそろ答え合わせしましょう』
『答え合わせ? 何の事だ?』
『思い出してよ、初めて会った時の事を』
『始めて……ああ、突然口付けしたり求婚宣言した時の事だね。当時の僕は勉強が好きじゃなく、更には重責に押し潰されかけていたね』
『僕も当時はパパに反発したもんね。お互い様だよ』
『それで質問の答えだろ……決めたよ、確かに史烈の言う通りだ。僕はこの心根があったからこそみんなを導く事が出来た。何も持たないからこそ僕は誰よりも誰かに頼り、そして頼り切る事で自らを覆っていた迷いの羽衣を振り払ってきた……だが、迷ったからこそ僕はこうして答えを見つける事が出来た。何も迷わない事が全てじゃない。僕は弱いんじゃない。僕は僕だけの強さがあるからマンメリーもシレンデンもビーダもサルタビトもイタトロウもギャスー太も雄三もキンヅロウもサーバもエリフィルズも叔父さんもタイガードライバーも……他にも数え切れない生命は僕にここへ至るまでの答え合わせを示してくれたんだ!』
『やっとですね。やっとよね。全く優央は回り道ばっかりね』
『その回り道があるから僕は幾らでも選択出来、幾らでも迷い、そして幾らでも悩み抜く事が出来たんだ。今思えば新古式神武の象徴としての僕の使命とはこのためにあるんだな。これから僕はどう生きて行けば良いんだ?』
『初めて会った時に注意しなかった? 現在進行形の話が終わるまで次の話をしちゃいけないって』
『そうだね。結局僕はここに至るまでそれを直す事無く、君とのお別れを告げるんだね』
『泣くなとは言わない。泣いても良いんだよ、優央。だって君の強さはあの天同真緒まおと同じく君の涙は他者だけの為にないのだからね』
『情けは生命の為にあらず、己の為にも……わかった、だからもう現実に還ろう!』
 それから優央の精神は現実へと戻ってゆく……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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