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一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(五)

 四月八十二日午後十時二分一秒。
 場所は首都四門中央地区神武聖堂生子の間。
 天同生子は手紙を読んでいた。宛先は仁徳島学会員ベレッタ・バルケミン。
『拝啓 天同生子様
 
 自分は現在も学会で様々な成果を発表しております。その内容については例の
内臓モノ。生子様のお言葉で仰るならおぞましきモノについてでございます。
 内臓モノおぞましきモノはこの星に落ちてから百六十の年が経過。それまでに内臓モノおぞましきモノはあらゆる者達の人生を食らい続けます。
 最初の死者一場雄吉を始め、自分の先祖オッツールとリーベルダスの弟にあたるユーリディス、テレス族の長である北条ブル璃を含めた多くのテレス村住民、暦学者ヒュット・ヒッスイ、ICの生みの親ストルム・ササーキーと彼の愛弟子三名、初めての戦いを始めたベアール・毛利、そして軍の前身を作り上げた真島ギャラッ都など多くの生命がおぞましきモノに食われた。自分は内臓モノおぞましきモノを心の底から恐い。しかし、それ以上に怒りがこみ上げる。ですが、自分は戦うことが出来ない。それだけが悔いであります。戦うことが出来るなら色葉に顔向けが出来るというものを。
 話を戻します。自分はおぞましきモノを調べております。そしたら不思議なことがわかりました。それはおぞましきモノの周りを覆うモノは物質ではありません。あれはおぞましきモノの精神そのものであります。
 何故なら彼等が死ぬ時、あれは無くなるのです。無くなるということはあれは物質ではありません。物質ならば何かしらの痕跡を残します。ですが、痕跡一つ無いということは物質ではなく我々と同じく精神そのものだという可能性が浮上しました。
 現在はこのことについて名称決定委員会は結論を見出せません。何しろ物質なのか精神なのかで意見の総意が決まらないからです。
 そういえば決まらないことが他にもありました。内臓おぞましきモノの名称です。
 自分はおぞましきモノを【内臓モノ】と呼びます。何故なら内臓を剥き出しているからそう呼びます。けれども他の者は【食らいしモノ】【剥き出すモノ】【落ちてきたモノ】と意見が一致しない。そう呼ぶのには食らうからや、剥き出すからや、空から落ちてきたから、といった理由です。現在も決定的な事実が分からない以上、名称の決定は幾らもの年を重ねる可能性が濃厚です。
 最後に生子様に伝えたいことがあります。もう一度生子様にお会いしたいと思います。
 しかし、学会での活動が多忙を極め、こうして手紙を送ることも日に日に難くなっております。ですが、いつの日か必ずあなたにお会いして伝えねばならないことを自分の言葉で伝えたい所存であります。
 その日が来るとき、自分を助けてくださったこの世で最も美しいお姿でいてくれることを心より願いとうございます。
 桜の散りゆく季節に太陽が真上に照らす場所で心よりお待ちします。
                             仁徳島からベレッタ・バルケミンより』
 その手紙を読んだ生子はベレッタの気持ちを理解することはできなかった。
(あの男も頑張っておられるのね。ただ少し気になるのは手紙の書き方だけは勉強が必要だわ。
 まあ細かいことを気にするのはあの男と次に会う時に考えれば良いことね)
 その日は果たして来るのか……それは遠すぎる過去を知るしか他は無い。

 四月八十三日午前十時零分一秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区中央官邸重要会議室。立方体にして約成人体型四千。出入り口は六つ。左右の三つづつ、均等な長さにある。
 机は円卓になっており、上左右出入り口を繋ぐように挟まれたところある椅子に座る者がいた。国家神武の象徴天同生子だ。彼女は国家の最高位にいるのか、背後に赤い丸模様の旗がある。これはお日様を表す物だ。
「ではこれより我々はおぞましきモノが住むといわれる第二東門から東に成人体型五千離れた地へ軍を向かわせる!」
「待って下さい! 軍の意向一つで会議を進めるべきではありません! ここは慎重に話し合うべ--」
「最高官は口を閉じてろ! ここで動かなければ俺達は--」
「いい加減にしないか、零防衛官! 国家神武の理念は互いの意見を尊重し合い、統一した見解を決める事にあるだろう! 和をおろそかにすれば我々は生き残れな--」
「時間稼ぎはいずれ食われることになるんだぞ、兄貴!」
「最高官と呼べと言ってるだろうが、零防衛か--」
「静くかあにせんかああ! ここは自分のお家じゃあなあいいんだあぞ、お二方よおう!」
 国家最高官天同読四と国家防衛官天同零を静まらせたのは齢三十五にして三十日目になるエウク梟族のフルシャル・シャウルル税務官だ。
「会議が始っまるといっつも二名は喧嘩しって意見が纏っらない。この場合生子様の意見を優先しっましょう!」  そう勧めるのは生活安全官エウミョウル・ムルリリウームだ。
「ですがだ、生子様だは国家だの象徴だですぞだ! 任命権以外だの権利だの
行使だはできないお立場だでありますぞだ!」
 官房官アルジェミィ・アルティニムムは反対意見を出す。
「そうだな。私の立場は何もしないという事。これ以外でやれるとしたら御子のように予報するだけだ。国民を活気づける事だけだ。
 だが、緊急の要する場合は別に置く。例えば中央地区までおぞましきモノが攻めて来るようであれば私は動く。それだけだ!」
「生子様だは仰ってるではないかだ! 緊急時以外だは何もしてはなりませぬだ。
 よって生子様だに意見だを求めるのは時期尚早だであるとだ」
「そうかい。それ、じゃあ、僕、じゃなかったよ! 自分らの、意見は、出して、問題ないね!」
「何か言いたそうだねだ、文部官ライッダ・来栖だ」
 齢二十七にして十の月と二十九日になるクレイトス飛蝗族のライッダ・来栖は意外なことを言い出す。
「実は、偵察官、リム-バ・キングレイの、報告を、僕は、聞いた、んだ。それに、よると、明くる日の、夜明け前、まで、例の地、にいる、おぞましきモノは、産卵する、との事。その時、まで、向かうと、こちらが、有利だ!」
 それを聞いた者達は皆、驚くばかりだ! ただ一名を除いて。
「まさか姉上が勝手にやったのではないでしょうね?」
「私は象徴よ。むしろリムーバの働きに感謝を送るのが常道じゃないかしら?」
「ったく俺に教えを説く口じゃねえぞ、こんなの!」
「ですが、私は反対イーですぞ! 声明を産む儀式中に食らいーしモノ達を倒すなんて」
 齢三十二にして九の月と一日目になるプトレ羊族の黒川メエ美要員促進官は反対した。
「おっさんは黙ってろ! 今がその時なんだよ!
 ここで向かうかそうでないかは姉貴の予報にかかる!
 姉貴! どうだ、予報内容は!」
「問題ないわ!」
 零の質問に生子は即答した!
「全ては生子様の予報通りいーの結果になりいーますね! 仕方がありません!
 私は賛成いたしいーましょう! 皆はどうかね?」
「モチ、の、論!」
「結局生子様のやろうる放題か!」
「私は雌だけうど、生子様大好きんなので賛成う!」
「美しいから賛成にゃ!」
「こら、まじめにしろ! でもさんせい!」
 議論は自然と賛成の方向に流れた。そして……
「全会一致したようね。では改めて第三東門より東に成人体型五千離れた住処に軍を向かわせる!」
 こうして国家として初めての遠征が始まった……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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