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一兆年の夜 第七十四話 優央の記憶 真古式神武の終焉(六)

 午後六時五十八分三十四秒。
 場所は国境。真古式神武検問所。
 ビーダを失った事は今の新古式神武軍にとって大きな痛手として残る。実際に彼らは一部を除いて自分自身を信じるかどうかの迷いを患う。其れに拍車を掛けるようにサルタビトの死を知らせる墓を目の当たりにすれば一体如何して前を向けるのか? シレンデンが必死に鼓舞しようとも既に彼らは度重なる真古式神武の危機に依って持ち前の自己犠牲精神が失われようとしている。優央はこの時、次のように考える。
(検問所で戦いが起こったんだろう。そして墓の存在が益々自分達には辿り着くべき理想郷はないと思わせる。今は僕もあいつらの無事を祈るしか道はないからそうゆう事を考えたくはないのだが、僕は史烈と躯伝が無事でいる事を信じたい。いや、無事だろう。僕がそう思えても周りの彼らはかつての僕を見るように迷いの羽衣を纏う以上は難しい。何時までも僕が立ち上がらせるなんて事は既に……だから僕が口にするべきは他の事だ。
 それはこれを糧に……前進あるのみ!)
 優央はシレンデンの鼓舞を止め、自ら背中を見せる。一歩間違えれば潜伏する銀河連合に貫かれかねない体勢。そんな状態で優央は静かに……「もう直ぐだ、もう直ぐ僕達の向かうべき場所へ辿り着ける」と言って真っ直ぐ歩き出す。その姿には後ろ姿ではわからないように見えて実は誰もが胸の痛みを必死に堪えて進んでる事を察した。特にマンメリーには既に気付かれており、咄嗟に優央の元へ向かうとする素振りさえ見せる。だが、次の事でマンメリーは--
「何故、お前端優央様乃所把行かない?」
「銀河連合ガ襲イ掛カッタラ如何する?」
 そう科--シレンデンは其れが己自身に潜伏する何かだと察した!
(マンメリーは僕に近寄らない。そこまでして僕に……やっぱりお前は最高の親友だよ!)
 優央は背中を向けて涙を見せない--マンメリーの自己犠牲精神に改めて感謝!
『--この後二の分より後に僕は倒れた。マンメリーはやはり僕を案じてシレンデン達に
向かわせた。ずっと食糧を喉に通さなかった事もあって胸の発作が起こる感覚は短縮し
続ける。そこでシレンデンの孫であるシドウシンはなけなしのテレスプリを渡して僕に
服用出来るようにした。最も服用と言っても前飲まなかったから次飲む際は倍にして
服用するという事ではない
ちゃんと用法容量を守って更には浄化された綺麗な水を喉に
注ぎ込んでね。それで発作が直ぐに収まるという訳ではないがお陰で幾分か楽に成った
な。
 それから銀河連合の雲が一部晴れて月が姿を現す時間帯だったかな。そこで--』

 午後八時零分十一秒。
 場所は天同星央ほしお道。そう名付けられるこの道が着工し始めたのは新天神武との借款の約束が交わされた年から翌の年。ICイマジナリーセンチュリーにすれば二百十一年十二月一日。完成したのは更に翌の年のICイマジナリーセンチュリー二百十二年三月十二日。
 星央道には両国双方から計百名程が配備され、そして望遠砲が各所で設置される。その為、一層強固な道路と化す……だが、それが却って喰われた場合は二小隊しか存在しない真古式神武軍にとっては最後の障壁として立ちはだかる!
「望遠砲が厄介だ。特に銀河連合はそれを良からぬ方へ用いる!」
「ええ、優央様。如何やらイタトロウが率イル小隊ガ書き残した手紙通りでしたね。そのお蔭デ最初ノ一小隊だけで……いや、一小隊ダケデモ十分ニ痛手ではあるが!」
 言うな、それ以上の悔いはもう後でしろ--と優央はマンメリーに言った……もう直ぐ優央は迷いの衣を全て払いのける日が来た!
(望遠砲は便利な分、一度銀河連合に渡れば……だからこそ僕達は矛を手にする事を考え直さねば成らない!)
『--一旦、己の筆で蛇の足の如く書き加える。生命が戦いを望むように成ったのは
凡そ七百六十の年より前。それ以来、生命は守る為に銀河連合の命を取る事を選択。
その選択は功を奏する部分が多い。実際に僕達は救える命を多く救った。銀河連合の命
を取る選択をする事で。
 けれども、代償として銀河連合に喰う名分を与えてしまった。一方的に命を取って来た
のは奴らなのに逆さの怒りでこちらへの攻撃を強めてしまった。正直、そこにも僕達生命
の心の痛みがある。もしも戦う選択肢を選ばずに対話の道を突き進んでいたなら如何成る
だろうか、と。
 それだけでなく、戦う道で欠かせないのは手に取る武器は年々強力な物へと様変わり。
それが銀河連合に渡ればあのように僕達を守る為の矛のような盾は僕達の命を取る矛と
化す。
 全く良くない流れだな。さて、蛇の足を書き記した。次は僕が懸念する--』

 午後八時十分五十一秒。
 戦いは優勢に流れ込む。シレンデンの圧倒的な戦闘力にあった。例え望遠砲でもシレンデンにしてみれば対応がわかれば直ぐに攻略が可能だと!
「如何した如何したアアアア、こんな物出俺達似挑んで来た乃科あああ!」
 五十まで後少しというのに最新兵装すら全く意味を為さないような暴れっぷりを見せ付けるシレンデン。望遠砲から放たれる弾丸すら直接両手で掴むその様は正に鬼族を鬼族足らしめんとする!
「あいつ一名居ルダケデ大丈夫そうだな」
「いや、大丈夫じゃないぞ」当然、優央は個の力だけで全てが解決できない事を知っての言葉。「史烈、躯伝、それからメランコリーナは無事だろうな?」
「わかってるヨ、優央様。その為にシレンデンの孫のシドウシンを始メトシタ救出班ヲ向かわせたんだろう?」
 シレンデンが暴れ回ってちょうど午後八時三十分に差し掛かった時……一体の指揮官型が気絶して目を瞑るメランコリーナを前に突き出してシレンデンの所に向かって来るではないか!
「な、お嬢ちゃん端マンメリー乃娘だな」
 良くもメランヲオオオオ--親心が先走り、マンメリーは指揮官型に突進!
「止めろ、マンメリー!」周囲半径成人体型八十まで響き渡る大声でマンメリーを静止して見せたシレンデン。「巻き添えは……御免だぞ、マンメリー」
「クウ、メリーナやマリエラと同ジク助ケラレナイノカ……よ!」後ろ両足の膝を崩すマンメリー。「こんなに成ってまで俺はサーバの時ミタイニ過チヲ犯すのか!」
 全ては指揮官型の思う通り。指揮官型は六本の腕で金棒を放すよう指示。その指示に従い、シレンデンは放した--直後、シレンデンに向けて数百もの物部刃のような何かが飛んで来て内六割がその老体の全身に深々と突き刺さる!
(叫びたい……けれども僕には叫べない!)
 優央はその時、又しても胸の発作が起こったが為に叫ぶ事もまま成らなかった。代わりに……「ミチナカノシレンデエエエエエン!」マンメリーが叫んだ!
「大丈夫じゃ、大丈夫じゃ」シレンデンは頭部にまで深く刺さる物部刃のような何かを受けながらも尚、全身の機能を駆使して指揮官型に近付く。「一撃於受けたんだ……今度端お前、牙一撃、於受ける、番じゃああ!」
 そんな言葉を聞く程、銀河連合は礼儀正しい存在ではない。寧ろ、再度一斉斉射の合図を送り……シレンデンに止めを与えた!
 だが、シレンデンが前進したのは指揮官型を一発で仕留める為じゃない。マンメリーに静かな合図を送り、一斉斉射と同時に指揮官型の懐に接近して顎に一撃咥えると同時にメランコリーナを救出する事にあった!
 それが功を奏し、指揮官型はメランコリーナを掴む第一隠し腕の手を緩め、見事奪還された!
「うう、あ、あ、パパ?」
「済まない、これ以上はパパの顔を見せられない」マンメリーは我が娘を思って気絶し直した。「サヨナラダ、もう二度ト会エナイト知っても!」
 マンメリーが気絶してる間に当の指揮官型は死んだ筈のシレンデンの右正拳突きを顔面に受けて首を吹っ飛ばされた!
『--シレンデンは最後まで驚かせた。死して尚も真正なる五式最強の名を不動の物に
したまま想念の海に旅立ってまで指揮官型を打倒するなんて。あいつには最後まで
驚かされた。
 だが、そんな彼の誇りを銀河連合は次のように踏み躙るなんて。許せる訳がない。奴ら
がやった事とは--』

 午後八時三十一分十七秒。
 突如としてシレンデンの亡骸は赤黒い液体に包み込まれ、やがては液状鬼型として再誕!
「やっぱりそう成ルト思ッタカラコソ俺は……ウグググ、俺も後少シデ銀河連合ニ成ってしまうな。良イ機会だ。ここでお前を倒してミチナカノシレンデンよりも強イ事ヲ証明してやろうかああああ!」
 優央に止める術はない。マンメリーが如何頑張ろうとも真正なる五式の誰一名にも届かない事を痛感する。ならば如何してそう宣言するのか? 実は自らの命を使って液状鬼型を倒す事で優央を始めとした生命に同胞倒しをしないようにする為であった。
 こうしてマンメリー・レヴィルビー最後の戦いが幕を開ける!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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