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一兆年の夜 第七十四話 優央の記憶 真古式神武の終焉(四)

 午後三時零分五十八秒。
 場所は国境。真古式神武と新天神武を繋ぐ道路。
 躯伝、史烈、メランコリーナは齢四十五にして四の月と十八日目に成る雄略猿族の老年サルタビト十八代率いる小隊に守られる形で僅か五の分程で真古式神武軍所有の検問所到着。そこて待ち構えるのは検問兵に化けた銀河連合。だが、銀河連合の弱点は言葉を発しない事--故にサルタビト等小隊員は直ぐ様、看破……相手の攻撃が来ると同時に抜き放つ事でこれを打倒!
 全て打倒するも残ったのは自分達のみ。この腹立たしい状況下で躯伝は次のように述懐。
『--躯伝に依ると仇を討った所で取り戻せるのは死んでいった魂のみ。残された者達は
何も残らない。怒りから取り払われる先には何の生き甲斐もない。その通りよ、と僕は
躯伝に伝えた。
 それでも生命は如何して仇討ちを止められないのか? そう尋ねられた僕はある事を
あの子に伝えた。それは躯伝が見つけてる筈のあの事よ。--』
「これで全部っち」そうサルタビトに言うのは齢十八にして四日目に成る応神鼬族の少年にしてイタトロウの遠い甥にあたるタケナカノイタトラナ。「誰がどの骨なのかわからないけどっち、検問所で働く軍者の数は五名と聞いたんで数えてみたら……四名分しか残ってないっち」
「銀河連合は何を考えってそこまで喰らったのか?」
「きっとあいつらは国内でやって見せたような足を使うっち」
 足かっね--と若干生命に依って言い回しが異なる点について何か考えるサルタビト。
「如何っだ、親父」そこへやって来たのは齢二十一にして三日目に成るサルタビトの第三子サルタビロウ五代は躯伝とメランコリーナを連れて来た。「躯伝様もお連れっしたけど、良いっかな?」
 コラ、サルタビロウの馬か鹿な息子め--これは叱りの言葉ではなく、誉めの言葉である。
 それを知らない躯伝はサルタビトに何かを言う。けれどもその後にメランコリーナとサルタビロウの二の分足らずの説明で一応納得した躯伝--思わず、赤面する……赤い恥を掻くように!
 それからサルタビトは第三子サルタビロウ、彼が連れて来た躯伝とメランコリーナに向けて先程の話を伝える。そこで先程に加えて銀河連合が検問所の生存者を使って新天神武に攻め込もうという魂胆まで知らせた。
「そんあ。じゃあ銀河連合はもう新天神武側の検問所を通過してる可能性もあるって言うの?」
「あくまで可能性っです、躯伝様」
「可能性でも隊長っち、大変良くない可能性ですっち」
「骨ごと銀河連合が食べったというのは如何っだ?」
 それは歴史の上でもっと巨大な銀河連合の仕業だっろう……あの大きっさじゃあ難しい--とサルタビロウの考えを一蹴りで飛ばすサルタビト。
 躯伝はこう考える--親父が胸の苦痛を味わうまでけずり切って、更にはお袋がどうしようもない現実を前にして吐血するまで弱り切ってる中で僕は!
 僕はどうして早く生まれなかったんだろう。早く生まれていれば僕は仇討の案件を溜め込む事をせずに二名の為にがんばれたのに……なのに僕は若過ぎるよ--と!
『--当時の躯伝がそんな風に考えていたのかを僕は知らない。けれども、躯伝にとって
仇討ちをしてしまう答えとはこのように仇討の案件を増やしてしまった事を処理し、身を
粉にして少しでも仇討のない世界を実現する為の理由であると。
 そんな理由でも躯伝は納得しないだろう。あの子はこれからを担うこれからを。そんな
躯伝達の前に--』
 あ、隊長に躯伝様っだ--そこへ齢二十一にして十の月と二十一日目に成る鬼ヶ島兎族の青年イソルッタ・ドウワンが飛び跳ねるように走って来た。
「何だっち、さっきも言うようにイソルッタは--」
「如っ何、イソルッタに近付っくなあああ!」
 サルタビトの言葉が間に合わず、イタトラノはイソルッタの口から放たれた包丁のような何かに左眼を真っ二つにされた--悲鳴と共にサルタビトと青い目を輝かせる躯伝以外は恐怖で身動きが取れなくなる!
「ウワアアア、マリチャンガマリチャンガマリちゃんが」メランコリーナは十二の年より前に実の母と姉が死んだあの光景を思い出すように同じような事しか叫ばない。「マリチャンガマリちゃんが、ウワアア、ママガアママがあ!」
「イソルッタ……の中っに、指揮官っ型? 如何しろって?」
「眼がああ眼があああっち!」
「指揮官型……恐怖で逃げ出したい。でも」躯伝はその目を輝かせて液状指揮官型に向かって利き足で床を強く蹴った。「僕が逃げたら誰が戦うんだあああああ!」
 何も持たない躯伝では液状指揮官型の間合いに近付けない。繰り出す斬撃を躯伝は神懸った何かで予知し、躱すので精一杯。おまけに指揮官型は当時は最も強力な銀河連合故にどんなに不思議な力を有する躯伝でも成長が十分じゃない身体と若さ故の経験値の浅さもあって次第に追い詰められ、遂に壁際に追い詰められる。躯伝は--ここまでかよ--と思い、何も出来ない己の弱さを悔やんだ。そして--
「屈んっで下さっい、躯伝様!」
 な--その言葉に反応して躯伝は屈む……すると躯伝の首とへその上を刎ねようとした指揮官型の中段左手首と上段右手首が宙に浮く!
「サ、サルタビト!」
「親父、まっさか!」
「ここはわしに任せてお前達は他に銀河連合が潜伏してないかを見回れえええい!」
 サルタビトの熟練者だけにしか発せられる圧倒的な気の塊はメランコリーナを始めとした恐怖に屈する生命達に手足を動かす呼び水と成った--躯伝以外の三名は直ぐ様に己の為すべき役割を思い出し、迅速かつ速やかに行動を再開!
「親父……死っぬなよ!」
「クウっち、俺がもっと強かったらっち、強かったらっち」
 激しい斬撃の嵐は三名をそれ以外に集中させるのに的確。サルタビトと液状指揮官型の戦いはサルタビロウと左眼を失ったイタトラナを避難させる。だが、メランコリーナは躯伝を連れてイタトラノ達の所へ向かおうとした時……「僕だけは見届けたい!」と言って躯伝はメランコリーナの背中を断った!
「死ぬかも知レナイヨ、躯伝様」
「僕達はここで死なない……それは確かな真理だ!」
 躯伝の瞳は今も青く輝く。如何して青いのかを幼い二名は知らない。知るのは更に明日まで進まないとわからない。
 今はサルタビトと液状指揮官型の激しい斬撃に集中。一名と一体の斬撃は正反対。左右対称。液状指揮官型は力と速さのままにサルタビトを仕留めようと試みる。故にそこには素晴らしさはなく、只効率良く相手を斬り捨てるような何物も生めない何か。
 一方のサルタビトは効率こそ指揮官型に比べてそれ程じゃない。けれどもその斬撃は指揮官型の攻撃を次々と払いのけ、まるで空気すら斬り割こうせん程の華麗で美しく、そして儚い--何よりも躯伝とメランコリーナの目に飛び込むのは壁際に追い詰められて後少しという所までくるではないか!
 止めの一撃がサルタビトの頭部に突き刺さると彼は確実に死は確定。だが、液状型も又……「見テ下サイ……液状型銀河連合ノ身体がばらけられてるよ!」言葉通り、サルタビトが繰り出した空気すら斬り割かんとする斬撃は消える事なく指揮官型を完膚なきまでに裂いて見せた!
 見届けた……やっぱ凄いぞ--躯伝は既に号泣するメランコリーナに続く!
『--それがサルタビト十八代の最後。信じられない話だが、あいつは死に際に斬撃を
残すという極意に至った。包丁使いが血糊を付けずに銀河連合を仕留める事は出来ても
一度空を切った斬撃をそのまま残すなんて摩訶不思議をあいつは実践して見せた。こんな
事はどんなに僕が真面目に一生懸けても無理な話だ。正にあいつのような達者だから
実現に至った。
 次は--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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