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一兆年の夜 第七十四話 優央の記憶 真古式神武の終焉(二)

 午前十時五分十一秒。
 場所は古都タイガーフェスティ中央地区。
 そこには旧拠点型の住処が今も残る。そこで躯伝と史烈、そしてメランコリーナはシレンデンの部下にして分隊長を務める齢四十一にして四の月と十一日目に成るエウク馬族の老年真島ギャスー太と副分隊長を務める齢三十一にして三日目に成るエウク鹿族のシカルット・ムラサメルに案内される。
「ここなら比較的安心ッツ」
「だああが、度々降って来る銀河連合の塊には気を付けえええい」
 わかってるよ--と意地を張るのは流石はこの母親にしてこの子ありな躯伝。
「躯伝様、無理シナイデ」
「メランの言う通りよ、躯伝」
「わかってても親父やあいつらが無理してるのにどうして無理せずにいられるかよ」
「まあまあああ、躯伝様。今はここおおおえで--」
 爺さんッツ、来たぞッツ--そこで会話は終わり、真島分隊は最後の戦いに赴く。
「大丈夫だろうか、僕が行かなくて良いのか?」
「躯伝様、力量を認メルノモ現実ニ立ち向かう糧となるよ」
「ゴホゴホ……今は彼らを信じて、僕達も、僕達で、生き残る術を、見つけ、ましょう」
 お袋……クソウ--躯伝は歯を食い縛って心の痛みに耐え抜くしかない。
 躯伝は後に優央に語るのは以下の事。
 銀河連合の雨は中央地区に降り注ぐ頻度は十五の分に一回。たまに一の時と十の分に一回は雷時の大雨に相当する銀河連合が降り注ぐ。その場合は天に、そして神に任せる以外に生きる道はない。
 それから真島分隊は全部で八名程の精鋭。対する銀河連合の数はその百の倍。とても釣り合う戦力ではない。にも拘らず、彼らはその百名程を半分の犠牲のみで二の時掛けて済ませた。しかも犠牲者の内の三名は球に降り注ぐ大雨のような銀河連合に押し潰されての事。躯伝達三名はその中でもギャスー太の体術に驚かされる。四足雄略包丁の切れ味が落ち往く中でも特に跳ね技が他の馬族生命と異なって最早芸術の域に達する。相手を如何にして背中に乗せてそれから投げ飛ばすか……銀河連合は改めてギャスー太の跳ね技が既に背中に乗る事は即ち攻略ではなく相手を仕留める合図まで完成度を高める事を知らしめた!
「凄い、凄いぞ!」
「ゴホゴホ、でも戦えるのはもうギャスー太だけね」
 何--だが、無敵話などこの世に存在しないように高い実力者が何時までも相手を倒すのが簡単である話なんて存在しないのだ……更に倍の三百四十四体がギャスー太達四名を取り囲んだ!
 これにはほぼ無傷のギャスー太のみならず、両後ろ足が全く動かなくなったシカルットも望み絶たれる余り表情が笑みで一杯の様子!
「どうやらここまでですッツ」
「……」ギャスー太は三名に合図するように高く跳躍し、それから強く着地。「フウウウン」
 それを二名は知らない。けれども史烈は「さあ、急いでここから離れましょう……躯伝にメラン!」ギャスー太の合図を素早く読み取り、病み上がりな肉体を酷く使って二名を持ち上げるとその場から走り去った!
 残った四名は彼らが逃げ去ってゆくのを最後まで確認すると……直ぐに雄叫びを上げて四方へと散る!
「では想念の海で合流しましょうッツ、爺さんッツ!」
「ウオオオオオオオウ、これが真島の心を受け継いだギャスー太の真骨頂だああああぞ!」
 四名中三名は一体と対峙して直ぐ力負け。ギャスー太は背中から体当たりした後、後ろ右足、前右足、前左足、それから背中に乗せたまま旋回跳ね飛ばし、そして最後は獅子型の首筋に思いっ切り噛みついて頸動脈を引き裂く程の暴れっぷりを見せ付けた!
「ウオオオオオオオオオオオオオウ、まだわしハアアアアアあたたぁ--」

 午後零時十五分四十三秒。
 場所は旧都タイガーフェスティ東地区。
 そこまで走った所で史烈は前のめりに倒れた。彼女が倒れた事を受けて躯伝とメランコリーナは容態を確かめる。
「どうして無茶ばっかりしてえ!」
「そりゃあ、ハアハア、息子、だもの」
「徐々ニ体ガ、冷える」
「こんな時に……逃げ切れてないなんて」銀河連合は三名を取り囲む。「しかも指で数えなくとも十体以上いる事は丸わかりだ!」
「ここは私ガ前ニ出て--」
 いやっち、そこはわしらに任せるっち--そこへ齢四十四にして三の月と四日目に成る応神鼬族のタケナカノイタトロウが杖を突いたまま一名だけで駆け付ける。
 流石に幾ら強くとも多勢に無勢だとわかる躯伝とメランコリーナは一斉に反論する。だが、イタトロウは有無も言わせずにこう断言する……「鎌鼬流があれば百体でも千体でも問題ないっち」と--余りにも根拠がない一言だが、自信満々に言ってのけるイタトロウだから妙に貫禄があって何も反論出来ない二名!
 そして二名は史烈を運びながらイタトロウの示した方角に向かって走り出す。逃避行はまだまだ続く。だが、その逃避行を銀河連合が見逃す筈もない。地上に居る十名以上? 空から今も降り続ける銀河連合の雨? いや、地中から二名の踏み出そうとする足を掴む--人型銀河連合一体が両手を使って!
「ウワアアア、点がもう目だった!」
「地面ノ中ニ潜んでたの?」
 その二名は引き剥がせない程成長が遠い訳ではない。特にカンガルー族は雌程雄よりも体の成長が速く、そして簡単に二本共引き剥がして見せた!
「メラン……今のは高速で突っ走るチーター型へのふせきだよ!」
 ほ、本当ダ--その速度は体の成長も経験値がまだ浅い二名には対応出来ない程……故にこのまま喰われてしまうのか!
 その時、チーター型は突然跳躍して三名の背後から成人体型十の所に後頭部から着地!
「……あれ?」
「フウウウ、如何やら、鎌鼬流、まだまだ衰えはないのね」
 史烈の言う通り、チーター型が変な受け身をして痙攣を起こす原因はタケナカノイタトロウの神業にあり!
「これが極めし者の極意っち」
「凄い、学んでみようかな?」
「止めときなさいっち、これは……集中力を切らさない為に会話はここまでっち」
 それが遺言に成ろうとは--彼の鎌鼬流の為に史烈はまた肉体を酷く使って立ち上がった!
「良くないよ、お袋!」
「ソウデス、ココハ私達に--」
「じゃあさっさと連れて行って!」
 口を動かす前に先ずは体を動かせ--無言実行こそ全生命体に課せられる条件……故に躯伝とメランコリーナは史烈に肩車しながらイタトロウに任せて去ってゆく!
 その後、イタトロウは如何成ったかを誰も知らない。何しろ、イタトロウの勇姿を目撃した生命は数少ない。それだけに彼がどれほど、鬼族と神々のように並み居る銀河連合を投げ飛ばしたかどれ程彼の魂が報われるかわからない。けれども優央は次のように記す。
『--イタトロウは達者故に名声を要らぬ。真の武芸者は名声よりも先に命尽き果てる
まで鍛錬あるのみ。何とも難しい話だろうな。これだけ素晴らしい物を身に付けるという
のにそれを披露する場を作れば鍛錬の怠りにも繋がるのだからな。
 さて、僕だよね。僕達は--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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