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一兆年の夜 第七十四話 優央の記憶 真古式神武の終焉(一)

 ICイマジナリーセンチュリー二百十五年十月一日午前六時十一分二十三秒。

 場所は真古式神武首都六影府中央地区神武聖堂。
 そこから百羽以上もの様々な空中種族が飛び立つ。彼らは全国に未だ残る国民に向けて命懸けの避難命令を発信しに行く。それは今にも銀河連合が降り注ごうとする中で一名でも多くの生命を助ける為。情報の速やかな発信は最重要課題。真古式神武の首脳陣がこの日が来るまでに訓練して来ただけに飛行速度は中々の代物。肉体鍛錬も重要だが、鍛錬するには先ず意気込みが重要。その意気込みは既に命懸けであり、抜かりはない。そして鍛錬した先にある技術もその為にある。故に速く飛べる。
 そんな彼らを心配そうに見つめるのは齢四十三にして七の月と三十日目に成る神武人族の老年にして剃り残しが目立つ仙者天同優央やさおは齢四十四にして七の月と八日目に成るルギアスカンガルー族の老年マンメリー・レヴィルビーと次のような会話を手短且やや長く話す。
「この地下道の深さと耐震力では直ぐに崩れる」
「実は俺モソウ思ってました」
「だからこそ躯伝とメランコリーナ達にはある経路を行かせた。無論、そこを読んで内部に潜伏する銀河連合達は先手を打つだろう」
「その為ニシレンデンだな。相変ワラズデスネ、優央様。謙遜しなければもっと凄イ事ヲ果たせたはずだが?」
「僕の力じゃない。死んでいった者達の残していった者がようやく実りを産んだんだ。その話は」優央は既に雲の上より何かが通過してる事を確認する。「この生きてる心地がしなくなるだろうこの六影を中心とした大地を無事抜け出した後で良いな!」
 オウサ--とマンメリーは優央を背中に乗せて神武聖堂を十の秒も掛けずして脱出!
 それから一の分より後……凡そ二十の年もの間、自らの住処としていた神武聖堂は銀河連合という名の質量の雨に依り、呆気なく崩壊した!

 午前七時零分十一秒。
 場所は古都タイガーフェスティ第三南西地区。その手前まで既に彼らは避難を完了する。
「ハアハア、遂に六影が」齢十三にして四の月と二十六日目に成る優央と史烈の息子躯伝くでんは後ろを振り向く。「何だよ、何だよあの黒く激しい雨は!」
「クウウ、これが……何て勢イナノ!」躯伝の付き者をするのは齢十二にして四の月と十六日目に成るマンメリーの第二子メランコリーナはその行き過ぎた質量が雨として降った時に発生する勢いを肌で感じ取りながら驚愕する。「体が、浮イテ、シマウ!」
 メランコリーナの口にした通り、行き過ぎた質量の落下に依って大地を揺らす事で躯伝達を大きく浮かせながら更には同時に発生した風に依り彼らをタイガーフェスティに運んでゆくように吹っ飛ばす--それは打ち所が良くないと命を落とす程……果たして躯伝達は無事で済むのか?

 午前九時零分十八秒。
 場所は六影府未定。
 マンメリーの声を聞きながら優央の意識は起き始める。
(この声……マンメリー、イデデ。流石の仙者も、寄る年波には、屈する、な)
 瞼を開けるも、その時に侵入した頭部から出た血が流れ落ちて、左眼だけがまともに開かない状態。そうして右眼だけでマンメリーの老いた素顔を見つめる優央。彼は自分の事を気にせずに状況を聞き出す。
「降ッテ来タ銀河連合ニ押し潰され、戦力ノ半分ヲ失った!」
「戦力……では、逃げ遅れた生命は?」
「優央様……その生命ハ如何カ諦めて下さい--」
 今、何て言ったんだ--マンメリーの服の襟を掴む優央の感情は激しい様子!
「捜索ニ力ヲ注ぐ国力を、今ノ、いや、最早俺達ニ、残サレテ、居ますか?」
 それは聞きたくもない言葉。力を緩め、マンメリーを放す優央。放されたマンメリーは咳き込みながらも優しげな眼で見つめる。それには優央も揺さぶられた激しい感情を一旦最天井まで押し上げつつも次のように考えて自分を落ち着かせる。
(ここで起こるのは銀河連合の思う壺だ。頭の良くない僕でもこれだけはわかる。下手な感情の使い道こそ銀河連合の思う壺だってな。そうだ……今は少しでも生き残りを作る為にも僕はやらねば……グうう!)
 優央を長い年月掛けて苦しめる胸の激痛はこんな場合でも彼に襲い掛かる。幸い、朝の分はまだ服用していない。量は医者から勧められた一の日に三回と一回当たり七錠。優央は胸の痛みで手元が狂うのと格闘しながらも七錠出して余分な薬を袋の中に仕舞い、そして口に放り込む。それから高齢だけにいっぺんに喉に通す事はまま成らない。その為、一錠ずつ喉に通してゆく。少しでも通らない場合は用意された水で少しずつ食堂に引っ掛かる薬を流し込んで。
(下痢の時の方がまだこの苦しみは楽だ。病の苦しみは何時自分に来るかわからないという恐怖を僕に迫る。生きるのがこんなに苦しいと僕は……いや、収まったのなら何時までも『油を断つな』と訴えてる場合じゃないよな)
 優央は何をすべきかを知ってる。故に彼は次のように決断を下す!
「命懸けで逃げろ!」
 実に単純且つ的確な命令か。方角を聞かれればそれは「蛇族に聞け、風に聞け、そして逃げが上手い生命に聞け」と!
(まだまだ銀河連合の雨は続く。その雨は既に大陸藤原には既に降り注いだ後だろう。伝達部隊には事前にその報告を聞いた後だ。だから僕達が行くべきなのは……タイガーフェスティだ!)
 自然とそこへと行き着く。しかし--
「優央様。タイガーフェスティには恐ラク伏兵ガ多く潜んでいるでしょう。そこを目指スノハ少々安直ではないでしょうか?」
 伏兵か--それに気付かない程優央は卑して下に見るような生命ではない。
「目指すなら船に乗って遠回リデ以ッテ新天神武ニ行くのが一番かと自分は思いますが」
「プロタゴラス大陸か……確かにかの林原コブよしはそこから目指して武内大陸も制覇したと記してあったよな?」
 まあ検問所制度ニ怒リヲ露にしてね--と頭から血を流しながらもマンメリーは半笑いでコブ吉の動機を語った。
「じゃあお前の意見に従い、向かうぞ……プロタゴラス大陸を--」
 その時、齢二十八にして十一の月と十九日目に成るエピクロ隼族のハヤブルス・ハルトマンが優央達の前に近付く。彼は右足に一枚の紙を括りつけて!
「何々、確認すると……どうやらマンメリーの案は無理みたいだ」
 そんな事ハ……クウ、範囲ガ広過ぎるだろうが--その手紙は一枚でしかも百字程度……だが、その百字程度の手紙で納得するしかない!
「真実でい。最早赤黒い雲が真古式神武全土を覆い被さってれい!」
 カモツが発見した法則は何も来る時期だけを示してはいない。来る時期が遅ければ遅い程にその範囲は広大であり、逃げ場所を大きく制限。気が付けば真古式神武に今も残る生命はタイガーフェスティを目指す以外に道はない。しかし、その道は銀河連合を知らない筈がない。
「ああもう時間ねえ。優央様やマンメリーの爺さんはちゃんと無事でいろい!」
 そう言ってハヤブルスはと飛び立つ--少しでも多くの生命を救う為に伝達部隊の使命を全うする為に!
「クソウ、僕達は既に奴らに喰われる為の蜘蛛の糸に絡め取られているんだな」
「こんな時ニ躯央様ガ居てくれたら……あ、イケマセン!」直ぐ様、頭を下げるマンメリー。「優央様の心に用意じゃない傷を抉ルヨウナ発言ヲシテ申し訳ありません。申シ訳--」
 叔父さん……そうだ、思い出したぞ--優央はマンメリーの言葉から何かを閃く!
「優央様?」
「有難う、やっぱお前は僕にとって掛け替えのない付き者だ!」
「何か閃イタノデスカ?」
「タイガードライバー……彼の魂の導く先にこそ僕達今も残る真古式神武の生きる術が残されてある!」
「タイガードライバー・佐々木ダッテ?」
「ああ、彼の魂の眠る場所……そこで僕達は奪還した際に何かやったじゃないか」
 ああ、アレデスネ--マンメリーは何かを思い出した!
 それは今だ明かされない事。但し、優央は次のように心の中で説明する。
(銀河連合に依って一度喰われた大地は元の状態に戻るまで十の年以上もの長い年月を掛ける。その原因は土壌の穢れにもある。幾ら表面だけ浄化をしてもその根っこが穢れていたのなら意味がない。一本の木を抜く為に上辺だけだと考えるのと同じだ。木は大きく成る為に根を張る。その根は常に大地に血管のように張り巡らせて抜けないようにする。そうして僕達は新天神武から派遣された地質学者達と共に穢れを払う為に様々な方法を模索した結果……発見したんだ。実は遥か先まで掘ると……穢れてない土壌がある事も。そしてそこから掘れる水は……清浄である事も)
 と考えながらも優央はマンメリーと共にタイガードライバーが眠るとされる始まりの地下道へと向かってゆく……

 午前十時零分二秒。
 場所は古都タイガーフェスティ未定。
 そこで躯伝は目覚める。瞼を開けた先に見えるのは齢四十五にして七の月と五日目に成る神武人族の天同史烈のれあ。弱り果てようとも彼女は我が子を見つめる表情は気高く、そして暖かい。
「お袋……か、イデデ」
「無理しないで、躯伝ちゃん」
「お袋に言われたくねえさ。僕は……ウグ」左二の腕に痛みが走り、それが何なのかを次のように言い当てる躯伝。「まさか罅入ったんじゃないだろうねえ」
「躯伝様は少シ自分ヲ見つめて下さい」
 言われてるわね、躯伝ちゃん--と茶々を入れる事を忘れない史烈。
「五月蠅いな。これくらいは戦場じゃあ当たり前だろう?」
「まあ躯伝様の所ナラ何処ヘダッテ行くのが私の務めですから……ネエ、史烈様?」
「ええ、そう……ゴホゴホ!」史烈は右手で口を押える。「ハアハアアア」
「無理するなよ、お袋。生命にしたら既に平均年齢を超えた段階だから……さあ、と!」
 躯伝だけではなく、メランコリーナも背中越しに殺気を感じ取れる史烈も気付く。既に取り囲まれてるという事実を!
「僕が--」
 いや、その役割端俺似任せんかあああい--金棒を直角に投げて三体纏めて始末するは齢四十八にして七の月と三日目に成る神武鬼族の老年ミチナカノシレンデン!
「凄イ、シカモ」メランコリーナが説明するようにその金棒を拾い上げる序に素手で犀型の首を捻り落とすという離れ業までやってのけた。「犀の首をあんな簡単に……怪力も半端じゃない!」
「シレンデンだけじゃない……彼が率いる十小隊が一斉に駆け付けてるぞ!」
 躯伝が目撃する通り彼らは駆け付けてから直ぐに戦闘を開始し、一名も欠ける事なくその場を沈黙させた!
「よっしゃああああ、それじゃあ最後乃戦い似赴くぞおおおう!」
 ミチナカノシレンデンと彼に付き従う部隊最後の戦いがここに勃発……そこで躯伝は何を見るのか?

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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