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一兆年の夜 第七十三話 優央の記憶 悲劇の再現(九)

 午前四時六分零秒。
 場所は真古式神武首都六影府中央地区六影病院二階天同史烈の病室。
 お日様を背景に自らを美しく魅せる史烈の命ある輝きに優央は涙を流すしかない。
「如何したの、優央?」
「ああ、史烈」優央は一歩又一歩と寝台へと近づく。「如何して君はまだ可能性を信じるんだ!」
「生命の可能性を信じずして何が伝統主義なの。そうでしょ、優央」
「それでも」優央は抱き締め、涙の一滴一滴を彼女の頬に滴らせる。「それでも君がそこまで無理をするくらいなら進化主義何か何の価値もないじゃないか!」
「パパと同じ事を……君はそんなに伝統主義が信じるに足るの?」手を離させようと抵抗する史烈。「伝統主義は結果しか見ず、昨日に縛られるだけの思想なのよ」
「昨日があるから今日がある。君は今日と明日だけを見過ぎる。そんなの昨日まで培ってきた先達の思いを汲まない勝手気ままな性格を孕む」
「そうして過去の反省ばかりするのは過去に縛られた伝統主義及び懐古主義のいけない所なの。パパはそんな考えを最後まで変えようとせずに想念の海に旅立ったの。ずっと許せなかった。パパはずっとそんなふうに昨日ばかり見つめ、ママの死を振り切ろうとしなかった!」
「それでも僕は史天のあは最後まで君と同じく自説を一切曲げずに突っ走った素晴らしい姿だと思ってる。それもまた生命賛歌の一つとして捉える!」
 優央……やっと歩き始めたのね--優央の迷いの衣が剥がれゆくのに気付くと史烈は既に優央を抱き締め、涙を流す。
 それは老者二名の愛の結晶。それを受け入れない生命が一名。
「御免、親父にお袋」
「あ、済まない。ついつい熱く成り過ぎた」
 本当よね、全く僕達はく……グボゴボォ--優央から離して両手で口を抑えながら血の唾液を吐く史烈。
「の、史烈様……コノ出血量は!」マンメリーは史烈の出血量が茶碗一杯よりも半分程である事に気付き、既に風前の灯火である事を思い知らされた。「俺達は銀河連合カラ史烈様ヲ守れても……病から守れないのか!」
「病……礼を失するわ。僕は、既に四十代、半ばの生命なの。この、場合は、ハアハア」既に呼吸も荒く、上手く喋る事も難しい。「ハアハア、老い衰えで亡くなる……そんな生命達と同じ末路よ」
「それでも……わかってても僕は君が先に逝ってしまうのが悲しい!」
 自らの両手で彼女の両手を強く握り締める優央。少し痛みがあったのか、彼女は力づくですり抜ける。
「ハアハア、躯伝ちゃんも見てるの。マンメリーやメランコリーナも見てるの。ハアアア、ハアアアアア……そろそろ面会を終わりましょう」
 いや、実は面会しに来たんじゃない--とようやく本題を語り始める優央。
「まさか」お日様の光が徐々に強く成り始める頃合なのに何だか光が弱まる事に気付いた史烈は窓の方を振り向き、こう呟く。「予言の年ってのは案外正確に図れない物ね」
 お日様の光を遮るのは……銀河連合の塊だ--そう呟く躯伝の瞳は青く輝く!
「また光った……やっぱり躯伝こそ僕の提唱する説の半分を実証する生命だったの、ウグッ!」またしても吐血する史烈。「ゲボゴボゲボ……ハアハア、少し眠るね」
 史烈の瞳は閉じようとする。これを危惧して……「イケマセン、史烈様。まだ意識ヲ保ッテ下さい!」と願を掛けるマンメリー!
「いや、まだ死なない……僕はそう信じている!」
「デモ--」
「大丈夫、パパ……躯伝様ハ信ジル」
 メランコリーナカ--メランコリーナは躯伝を心より敬愛する故に彼の信じた物は最後まで信じる模様。
「そう、では眠るね」
 史烈は眠りに就いた。
『--最近は中々に辛い物がある。只でさえ、あの場面この場面を思い出すのが難しい
上に筆が遅くそれから書き違え違いも激しい中でだえ僕はそれを書き上げなければ
いけないからな。
 さて、続きというのは--』

 午前四時十一分十五秒。
 病院の表門外に出た五名。そこで熾烈以外の四名が目にするのは次のように優央は表現。
(既にお日様は覆い尽くされ、見えるのは星々として僕達真古式神武を見下ろす銀河連合の数々。終焉は近い。そしてタイガーフェスティに訪れた悲劇は再現されてゆく。予言の年を乗り越える為の秘策を叔父さんは様々な事を提言した。だが、どれも当時としては財政状況も鑑みて誰も賛同しなかった。今じゃあそれに賛同出来る。しかし、何もかも遅かった!
 遅過ぎる話を悔いてる暇はない。これを糧に僕達は前進しなければいけない、そうだろう……なあお前達!)
 優央が真上から前に目線を併せた先には軍務大臣齢四十八にして七の月と三日目に成るシレンデン率いる真古式神武軍が並び立つ!
「ハン、俺達真古式神武軍端何時だってあんた乃為那羅死ねるぜ!」
「真島の心ある限り、この髭もこのわしも健在だあああぞ!」齢四十一にして四の月と十一日目に成るエウク馬族の老年にして一の年より前に右眼を失った真島ギャスー太は髭を自慢する。「真島隊は必ずや優央様を安全にお運びしようじゃないいいか……亡き叔父が優央様の母上である優希ゆき様をここ六影府まで運び切ったよおおおうに!」
「鎌鼬流は落下物さえ自在に操るっち」齢四十四にして三の月と四日目に成る応神鼬族の老年にして杖を突く程に身体能力の衰えが目立つタケナカノイタトロウは自らの技に絶対の自信を主張する。「なのでわしに任せるっち」
「ゲホゴホ……わしも史烈様と同じく長っくはない」既に衰えが激しく今にも死にそうな齢四十五にして四の月と十八日目に成る雄略猿族の老年サルタビト十八代は彼を支える第三子である齢二十一にして三日目に成るサルタビロウ五代にこう言った。「だからこそサルタビロウや、お前さんはわしと反対に生っき残れや」
「全力を以って父上の言い付けをお守っりします!」
「良いよな良いよなッタ」子供が一名も居なくて悔しそうなのは齢三十三にして四の月と二十三日目に成る雄略蜂族の中年ビーダ五世。「おらなんか細工がないので結局結婚出来ずにこの日を迎えてしまったッチ!」
「お前達は真正なる五式……済まない、僕達の為に余生を使い果たすような真似をして!」
「何、俺達乃時代端終わった。後端銀河連合似終り於意識した生命牙どれ程怖い物科於十二分似刻み込ませる事だよ……まあ俺端只出端死んだり端せん牙那」
 全く御祖父ちゃん端元気だね--齢十一にして一日目に成るシレンデンの孫であるミチナカノシドウシンはその年齢でありながらも既に身長成人体型一とコンマ二程ある模様。
「息子達端直ぐ似死似おってから似……妥牙、お前端生きていろ余、これ端御祖父ちゃん愛妥曾!」
「それ於言うなら孫過保護斗言います科羅」
「談話してる場合ジャナイダロウ。今、空カラ奴ラガ降り注ぎに掛かる……お前達のやるべき事ハ最後ノ日マデ移住し損ねた一般国民を安全に新天神武マデ運ブ事だろうがああ!」
「マンメリーの言う通りだ。今から僕はお前達に最後の命令を下す……と言っても命令らしい命令も下す事が出来なかった僕だからな。必ず……必ず生きてくれ!
 それが僕の最後の命令だ!」
 その言葉を聞くと共に新古式神武軍は雄叫びを上げる。それは一瞬だが、空を覆う銀河連合の落下速度を少し遅らせたのか。或は……世界観補正の為せる業なのか?
(僕は果たして……いや、何も下手な考えを起こすまい。この国の最後の時まで僕は見届けねば成るまい!
 真古式神武最後の象徴として……全生命体の希望として!)
 それから一の日より後の午後十一時五十九分五十九秒……タイガーフェスティを襲った悲劇の再現は始まる!
『--以上が取り返しのつかない悲劇の再現を綴ったお話。マンメリーは自らの怠りが
原因で代わりを務めたサーバ十二世を死なせてしまった事でその償いをする為に今以上
に僕の為に尽力するように成る。そんな彼と真正なる五式最強の軍者であるシレンデン、
それから最愛成る史烈は今の僕へと導いてゆく。それが次に紹介する真古式神武の
終焉を綴ったお話
さ。
 そこから先は発作が起こる度に筆を止めて進捗状況を描くかも知れない。少々、調子の
狂う所が散見するかも知れない。それはこの発作の激しき痛みゆえ故である事を御容赦
下さい。を。
 それから五冊目である真古式神武の終焉は少々、一名息子である躯伝も執筆代行
するかと思う。故に彼は真実と幻想を入り混じって描いてゆく事を何卒御容赦を。既に僕
は一名だけでは執筆する事も難しい状態にまで追い込まれた。そこへちょうど彼が訪れ、
自らの目的の為に僕の日記を欲してる事に気付いて親心ながらに躯伝にも協力を仰いだ
までさ。何とも恥ずかしい父親だと己も自覚する。
 ではこれにてこの話も締めくくりにしたいと思う所存。
                                悲劇の再現 完』

 ICイマジナリーセンチュリー二百十五年十月一日午前五時零分零秒。

 第七十三話 優央の記憶 悲劇の再現 完

 第七十四話 優央の記憶 真古式神武の終焉 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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