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一兆年の夜 第七十三話 優央の記憶 悲劇の再現(八)

 九月十四日午後十一時に十分四秒。
 場所は真古式神武応神海付近仁徳島北仁徳市第一北地区。そこで一番高い塔の最上階に成人体型十の巨大な望遠鏡が建てられる。
 それを使って星々を眺めるのは齢十九にして十九日目に成る仁徳雁族の少年臥間ガン造ふすまがんぞう。彼は五百の年より前に銀河連合の命名のきっかけを作った偉大なる天文研究者である板垣ツル夫に憧れて天文研究生として眠気でどうしようもなくなるまで星々を見つめる。
「ン?」ガン造はその中で異様な何かを見つける。「銀河連合は確か歪みだっタネ。マサカこれガ?」
 それでも彼は自らの肉眼を信じて更に確かめる。方角をそのままに自分の身体を動かしてそれを眺める。すると……「角度が僅かにずれたのカナ?」ガン造は一旦、観測を止めて数値を確かめる。
 すると明らかに成ったのは……数値にコンマ四桁までずれを確認出来なかった。しかも五回も確かめて!
「マサカこれガ!」ガン造は更に確かめる。「コレがツル夫先輩が発見したという動く銀河……なのカ!」

 九月五十四日午前零時七分四秒。
 場所は仁徳島北仁徳市第一北地区。天文塔最上階。
 ガン造は観察日記を記す。それは観測が終わり、お日様が出始めた頃に一旦目覚めて室内でそれを紙の冊子の一枚一枚に記してゆく。何の為か? 何れ降り注ぐ一の月より前に新天神武に移住し、真古式神武の終焉を知らせる為。彼も又、優央と同じく日記を記してゆく。ガン造の願いは叶わないのか? それはない。だが、それを紹介する前にガン造が何を記すのかを一部抜粋するとしよう。
『--雪が降り出す冬の到来。まだ秋最後の月のはずが仁徳島ではそうもいかずに雪が
降り始めた。決して銀河連合のせいではない。ちょうど海洋藤原に近い島だからか。
正直、地学地理の成績が良くない僕があれこれどれそれ語っても仕方ない。
 さて、銀河連合と思われる歪みは徐々に近付く。最初こそそれほど進んでないように
見えてもそれは木の成長と同じく一の時や一の日観察しただけではわからない程の
速度。だが、月の単位ならどうか。するとそれは顕著に表れた。その歪みは既に
冥の惑星の軌道を越えて海の惑星の軌道に到達。この勢いだとあと一の月で到達しそう
だが、問題は木の惑星の軌道だろう。あちらはスサノヲ太陽系でお日様に次いで重い
宙域。
 何、落下物は重さに関係なく同じ速度で落下するだって? まあそうだろうけど、光の
進行を考えれば重たいモノ程、光は目的地に到達するのが遅くなる。それを踏まえれば
あの歪みの一団は一旦、土、転、海の軌道よりも重い軌道に差し掛かると一旦減速する。
原則と言ってもあくまで一時的であり、それを踏まえると後二の月かな?
 あんまりわからない話だからな。けれどもこれだけは確かだよ。光の速さは物体の速さ
に比例して速く成ったり遅く成ったりはせずに一定なんだ。では話の続きをしよう。
 先ずは--』

 九月八十四日午後十一時四十三分十五秒。
 場所は仁徳島北仁徳市第一北地区。天文塔最上階。
 ガン造にとってこれが最後の観測。己の計算が正しいかどうかを確かめる。すると次のような独り言が呟かれる。
「チョウド木の惑星軌道を越えたばかりカ。随分と太ってるからな……だからカ。イヨいよ僕は行かないト。ソシテ、コノ日記帳は必ず新天神武に住む全ての生命に届けないト!」
 ガン造はその後、名を馳せる。理由は日記が爆発的に売れたからではない。彼が後に政治の道に目覚め、ある生命と共に新天神武を変革したが為に!

『--一旦休憩を摂ろう。それがあの子を支えると思われる臥間ガン造の小話さ。
 それじゃあ続きを記そう。それは--』

 十月一日午前三時一分十一秒。
 場所は真古式神武首都六影府中央地区神武聖堂。天同優央の間にて。
 優央は早く目覚め、齢十三にして四の月と二十六日目に成る躯伝を起こした。
「何だよ、親父?」
「行くぞ、母さんの所へ」
「早いだろう、今からお袋の所に向かうのは?」
 史烈とは別々の場所で暮らす優央躯伝親子。入院する二の週より前に既に史烈は血の唾を吐くようになり、余命幾何もない模様。その為、優央は愛する彼女の為に予言の日が訪れるまで入院するよう訴え、初めて根尽きた史烈はそれを受け入れた。
 さて、優央と躯伝はそれぞれの付き者と共に行動する。優央にはマンメリーが、躯伝には齢十二にして四の月と十六日目に成るルギアスカンガルー族の少女にしてマンメリーの第二子であるメランコリーナ・レヴィルビーが付き者として行動を共にする。
 そして支度から十八の分より後……病院に到着。四名は彼女が眠ると思われる二階一番奥の病室を進む。すると突然、優央は左胸を抑える。
「大丈夫か、親父!」
「ハアハアハアハア、全く」
「無理ヲ為サラズニ……薬を」
 遠慮しとくさ--と優央は我慢する事を伝える。
(間隔が短いな、せめて最後の日までは……ン? 今は何時頃だ? もしや今日がその日? だとしたら夢の中に出て来たあの巨大な赤黒きモノ……せめて史烈だけでも病室から出さなければ!)
 焦りが優央に襲い掛かる。あの夢がもしも本当だとしたら一刻も早く大切な者達だけでも……「少シ足ヲ止めましょう、優央様」長年の勘で優央を落ち着かせる一言を伝えるマンメリー。
「……やはりお前は親友だ、マンメリー」
「お互いもう死ンデモ悔いはない」
 いや、死ヌノハ良くないよ--普段は無言のメランコリーナは初めて喋る。
「メラン……喋ったな」
「良イジャナイカ。だけど、全クモット早ク子供ヲ作っていたらなあ」
「お互い様さ。だが、僕はここで運命を共にする気はない」
「まさか優央様ハ--」
 勿論、お前達もそして史烈も同じだ--と優央は覚悟を決めたかのように真面目な表情で三名を見つめる。
(絶対に死なせてやる物か……この胸の痛みは物理的な物ではない。今まで死んでいった親しみのある生命の命を代償にしたんだ。僕はその生命に本当の償いを果たすまで死ぬ訳にはゆかない。悲しい事も楽しい事もそして嬉しい事も喜ばしい事も全ては僕と共にある。僕は……必ず生きてやる!
 優央の迷いの衣は……この時点で振り払う寸前まで来ていた!
「行キマショウ、優央様」
「史烈様ハ多分、待ッテオラレマス」
「メランの言う通り、お袋はきっと起きてるよ!」
 扉の前に立つ優央達。そして、優央は一回だけ深呼吸をした後、取っ手を回す!
『--済まない。またしても発作が僕を襲い掛かってな。このように発作はこの後も
場面々々で登場する。扉の先で待つ物は--』

 午前四時五分零秒。
 場所は重要患者用病室。かつて優央が眠っていたという清潔が行き届く病室。
「やあ、やっぱり来たのね」
 彼女はこの日の為にわざわざ窓を覆う暖簾を開けてお日様が照らせるようにした。その眩しさはまるで彼女の心その物を映し出すかのように!
(僕は既に涙を流す寸前だった。その眩しさは強がりな史烈が自分を美しくする物だとばかり思っていた。でも違った……雌心を少しでも踏まえればそれは大きな筋の違いだ。正しくは自らの死相を隠す為だった!
 史烈……そこまでして僕に死の警鐘を知らせようとさせないのか!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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