FC2ブログ

一兆年の夜 第七十三話 優央の記憶 悲劇の再現(七)

 午前三時十九分零秒。
 場所は優央の間にて。
 優央は合計三枚立てで一面だけの手紙を全て読破。そこにはキンデヅの言いたかった事を簡潔に表したキンヅロウの努力の賜物も感じ取る優央。一緒に読んだ史烈もその努力には大変感謝をする。さて、内容は何なのか? それを優央は次のように心の中で示す。
(キンヅロウに依るとキンデヅは意識を失い、二の時より後に臨終を迎える前に色々な事を語ったそうだ。それは序破急で纏められる。一つ一つを題名に表すなら序論は第一子キンヅオウが一の年より前に幸せなく死んでしまった事への親の苦悩。破論は苦悩で苛まれる中で見出した閃き。急論が苦悩の先に見出した新発見。
 序論の場合はキンヅオウの死に依って最早ICイマジナリーセンチュリーとかACアウターセンチュリーへの思いなど関係なしに酒浸りの日毎を送るように成ったキンデヅ。第二子であるキンヅロウの苦い労いは中々に想像が付かないだろう。かつてのマンメリーのように父の甲斐性なき姿に四の年もそんな彼を支えるメランコリーナのように。メランコリーナはまだ何も知らない女児故にそこまでの衝撃を受けなかったが、キンヅロウにとっては大きな衝撃を受けるしかない。たったの一の年でもどれだけ苦い労いをしたのか想像に筆舌尽くし難いな。羨ましいな、そうゆう気持ちは。僕は良心こそなく成るのは早いけど、まだ幼い事もあって叔父さんのお蔭で何とか成った。そうして苦労するキンヅロウが羨ましい。
 そんなキンヅロウの労いに依ってある閃きをするキンデヅ。それは死の寸前に知ったのか或は関係なしにふとした事で閃いたのかわからない。キンデヅは突然、ずっと悲しんでいたのは親より先に死んだキンヅオウを悔やんで、ではなくキンヅオウの死を糧にして前進する為の閃きが浮かばなかったせいだと言い始めた。これにはキンヅロウも怒鳴り散らした。それは最後の親子喧嘩と成り、近所迷惑へと発展したのは語るまでもない。さて、そんな親子喧嘩も元々学者一家の喧嘩なのだから仲介しようとする者達もどうやって割り込めば良いのかわからない。何よりも喧嘩の内容が既に自分達の脳内だからこそ理解できる専門用語の羅列で満たされる。傍からすればまるで異なる世界の住者よ。と最近は恥ずかしい言い回しを覚えるように成ったか。そうゆうのは余り好きじゃないな。兎に角、その中でキンデヅはICイマジナリーセンチュリーの行き着く先を見出した。それが……だ。
 あれ? 何故僕はちゃんと心の中でその単語を出したのに言った覚えがなく成った? まさか……いや、今は序破急の急の方を説明しよう。急加速するようにキンデヅは様々に語り出す。そこにはICイマジナリーセンチュリーの計算が変わる時期も設定。それは三段階に分かれ、一段階目がICイマジナリーセンチュリー八百年から。それまでは太陽暦にして四掛けて閏日一回を足した方式。それ以降からICイマジナリーセンチュリー七十五万三千百四十二年から。それまでは計算方法は次の通り。先ず太陽暦は三百六十五。閏日は敢えて除外しよう。そこから十二掛けたら四千三百八十。太陰暦は三百五十四だが、そこに一の日を足して三百五十五にする。これは閏月を除外して太陽暦の計算と同様に十二掛けたら四千二百六十。差分は先程計算した太陽暦の答えから太陰暦の答えを引けば百二十。更に太陽暦で十二の年中閏日は三回なので三の日を足すと百二十三と成る。そこからさっきの太陰暦の答えに足せば合計四千三百八十三の日と成る。つまりICイマジナリーセンチュリー一年は太陰暦計算で十二の年を経る事に成る。中々複雑に成るなあ。それから最後の段階はICイマジナリーセンチュリー九十八億七千六百五十四万三千二百十年から。それまでは……余白がなかったみたいだな、そこからは。フウ、頭の痛くなる話だよ。
 つまり、キンデヅが主張したいのはその先以降は最早未知数であり、キンデヅもそれを閃いた為に余生を懸けてたった一名の息子キンヅロウに伝えたかったんだろうな。でも心意を語る前に彼は想念の海に旅立った。何とも悲しい話だな)
 生命体の寿命は長くて八十歳も生きられるか如何か。己は既に胸の病を患い、仙者としては短い寿命と成る。薬を服用する事で長く生きられるだろう。しかし、何時までも薬に頼れる日々は限りない。優央は左手で心臓のある個所に手をやる。その行動に……「優央、胸が痛むの?」と気遣う史烈。
「いや、大丈夫だ。胸の痛みは十の日に一回かそんくらいだよ」
「そう、じゃあ出来る限りは服用しないとね」
 そうだな--優央は笑顔でそう答える。
「キンデヅも死ぬの。生命の寿命は何と短いのでしょう」
「だからこそ長生きは良い物じゃない。短い時間しか生きられない生命にとってはそれこそ密度の低い話だと僕は思うよ」
「それは異なるわ、優央」
「如何してだ、史烈?」
「長生きってのはその分だけ楽しみを享受出来る素晴らしい事なのよ。長生きってのは半ばにしてこの世を去った生命の為に背負い、そして彼らの為に楽しみを享受するの。そこには生命の賛歌があるわ!」
 生命の賛歌か……君らしいな--四十四という何時旅立つかわからない年齢でありながらも、そして老いによりかつての美貌もまま成らない状態であっても生命の核心を忘れない史烈に優央は畏敬の念を覚える!
「ゲホゴホ……ハアハア、まだ血液の唾は出ないわね。父と同じく僕も長生きなのかも」
「無理するな、史烈。君は、君は!」
 何時か別れの日が訪れる。その重く圧し掛かるモノに心が裂けそうな優央は彼女の身体を強く抱きしめる!
(新古式神武が最後を迎えるまで君は……君は躯伝にとって強い母親であってくれ!
 そして僕にとっては何時までも見本と成る雌であってくれ!)
『--真古式神武は彼女の命と同じく予言の年を迎えるまでずっと悲観論者達にはその前
に喰われると信じられてきた。僕も実際にそう考えた。日に日に減る一方の軍者の数。
連戦連勝を続ける銀河連合。勝てなくとも維持出来る方法でしか抵抗出来ない弱り切った
真古式神武軍。寸前で訪れる新天神武からの借款。これらで何とか僕達は残りの国民の
移住を進めて来た。時には弱い腰を批判する歴戦の勇士ヤマビコノシレンデン。時には
そんな責任感のない発言に怒りをぶつける一場雄三。二名の対立は正に真古式神武が
徐々に終焉へと向かいつつあるようだ。
 とうとう我慢の限界を超えた雄三は晩節を名誉無きに飾る事を覚悟で戦う士族以外の
高級官僚を含めて移住を決意。それに判を押すのは僕。最早真古式神武は国民が住める
地ではない。今更終焉を迎えるこの愛する土地に如何して余生を懸けるのか?
 そうか、そうだな。じゃあ如何して僕はこうして愛する土地を離れる? いけない
な、最近は発作が激しい。いよいよ予言の日が近付くじゃないか。僕は何を記せば良い
のか?
 そうだ、あれは--』

 九月七日午前八時零分三秒。
 場所はタイガーフェスティ道。
 そこはもう古都タイガーフェスティではない。真古式神武と新天神武を繋ぐ道として一の年より前に開通。未だ臭いこそ気に成るが、関所として十二分に発揮される。
 そこで齢四十三にして四の月と九日目に成る優央は半の年より前に生やした髭を自慢しながら齢四十四にして三の月と十八日目に成るマンメリーに雄三について語り合う。
「雄三はそこで息を引き取った」
「全くアイツメ。喧嘩するだけして最後は新天神武の地で想念の海に旅立つ真似を……ところで?」
「オイ、雄三の話はまだ続いてるだろうが」
「いえ、ソノ髭……やっぱり優央様ニハ似合いませんね」
 傷付くな--首都に戻った優央はキュー軽に頼んで髭を剃ったとの事。
「話デシタネ。あんだけ喧嘩したシレンデンは未ダ衰エヲ知りませんね。片や我慢成ラズニ移住シタ雄三。片ヤ居残るシレンデン……何ダカ平等ジャありませんな」
「でも雄三の最後の言葉を忘れない」
「何か言イマシタ……アア、あれですね」
 雄三が別れ際に優央達に放った一言、それは--再三に亘って俺は言ったじゃありませんか。いい加減、一名当たりの保障を削ってくれと。国をここまでさせたのは正に清み良い場所にしようと試みた数々の保障。その結果、軍に回す事も財政政策に回すお金も全てが十分じゃない。新天神武にとってはこれ程参考に成る国が真古式神武でしょうね。ではさよなら。そこで運命を共にするのも構いません……けれども俺はそんなの生きた内に入らないと考えますがね--と。
「恐カッタンダロウナ、ずっと。文官として頭角を上げて来タダケニズット内部カラ喰ライニ掛カル銀河連合を恐れたんでしょうね」
「それでも羨ましいな。あいつにもああして決断する勇気があるんだから」
 優央様……ソロソロ自信ヲ付けて下さい--未だ己に自信を持てない優央に再三に亘ってそう進言するマンメリー。
(僕に力があれば……僕にもっと頭脳があれば。真古式神武をこんな風にしなかった!)
 運命の年まで後一の年……優央はまだ迷いの森で彷徨う!
『--悲劇の再現か。それは次の話にて訪れる。そこから先は暫く日記は躍動的に描く。
止めて感じた思いを述べるとしたら胸の発作が原因だろう。最近は胸の発作が激しく、
しかも間隔が短い。昔だったら先程述べたように十の日に一回の間隔だったのに今の場面
の年だと一の週に一回。こうして書いてる時は何と一の時に一回。しかも痛みが続く時間
は昔だと二の分で済んだ。二の分も十分痛いがこの場面の年では三の分程。そして、
今じゃあ十の分も続く。薬に手を出しかねない程の痛みで死んで楽に成りたいと
何千回以上思ったか。それくらいにこの胸の激痛は生きる事の苦しみを表現してくれる。
 おっとどんな話が待つのか? 別にお涙頂戴という話など僕に描くのは止めといた方が
良い。そうゆうのは好きじゃない。僕が描くのは淡々とした物。例えるなら
 ではそれを筆にせるし記記そうか--』

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR