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一兆年の夜 第七十三話 優央の記憶 悲劇の再現(六)

 午前十一時一分零秒。
 場所は六影病院二階天同優央の病室。
 そこでマンメリーは己の代わりにおよそ四の年も掛けて優央の付き者を務めたサーバ十二世が銀河連合に成った事を受けて自ら覚悟を決め、今まで後ろ向きだった己との決別を……そしておよそ四の年も自らの使命を放り投げた罪を償う為にマンメリーはカンガルー拳法鶴翼の構えで挑む。
(あれは……鶴翼!
 まさかマンメリーは死ぬ気か!)
 優央は今にでもマンメリーの為に肉体を動かそうとする。けれども、一の月も寝込んだ肉体は未だ痺れの海に沈む。そこから這い上がって来るには時間が足りない。優央は体を動かせない己を悔いる。
(どうやっても間に合わない。全然言う事を聞いちゃくれない。どうしてなんだ、僕の身体!)
 鶴翼の構えを始めてから四十の秒より後……液状サーバル型は液状カンガルー型に変化。それは事もあろうに前羽の構えでマンメリーの防ぎ御する事を捨てた鶴翼の構えを迎え撃つ事を示唆。マンメリーは額から汗を流す。何故か? それは次のように彼の口から語られる。
「酒に溺レテバッカダカラ修行ヲ怠ったツケか。俺がもう少し悲シミカラ払拭出来タラコンナ事に、こんな事ニ!」
 どれだけ修行休みしようとも過剰な休みは却って技の練度を落とす。マンメリーは自らの肉体が引退して十の年も半端な修練だけに留まる生命と同じくらい衰えてる事に悔しい想いをする。そして、自らの力だけでは相打つ事も叶わないと考えるように成る。改めて修練とは絶えず沸騰し続ける為の火である事を理解……ならば最大火力で湯を全て気化させる事を決意--要するに構えを解き、最も善なる足段を以って相打つ事に懸けた!
「有難ウ、優央様。そしてお別レデス」
「ま、待て。待ってくれえええ--」
 ウオオオオオオ、死ナバアアア--マンメリーは右足を先に踏んで加速……窓目掛けて液状カンガルー型と一緒に落ちようと踏む!
 ところが……「ウグウう、蹴リダト!」カンガルー拳法にはない後ろ足業である後ろ左足前蹴りがマンメリーの腹部に直撃--扉の奥まで吹っ飛ばされた!
「畜生……修練ヲ怠ッタ生命じゃあここまでか!」立ち上がる事も叶わないマンメリー。「ゲホゴホ……何て蹴リダ。的確に内臓ニ打撃跡ヲ残した、ぞ」
「こう成ったら僕が--」
 その時、液状カンガルー型の首にしっかり絞められた--何と躯伝が小さな両腕を回して頸動脈が絞まるようにしてるではないか!
「ク、躯伝?」
「躯伝ちゃんが……それよりも!」
 ぜったいにたおす、ぜったいにたおす、ぜったいに--念仏の如くそう呟く躯伝の両眼は青く輝く!
「まさか躯伝様ハ……デモ!」
 ウワアア--マンメリーの言う通り、小さい体では余りにも液状カンガルー型の動きを止めるに至らず、それは急遽液状サーバル型に戻り、躯伝をマンメリーの所まで吹っ飛ばした!
「ウグ……躯伝様」
「イデイ、僕、じゃあ、いけないの?」
「ぼ、僕達の方に振り向いた!」
「優央をやらせは--」
 その時、四名の耳に声が響く!
 --イマ、ジブンガ、オサエ、マシタ--
 サーバの声だ。その声の通りに液状サーバル型の動きは震えるような機動をする。まるで一回の動作に十回以上も一時停止するかのように。そして、液状サーバル型の向かう先は--
 --デハ、オサキニ、ソウ、ネ、ン、ノ、ウ、ィ、ィ、ェ、ァ、ゥ--
 声が届かなくなった時、液状サーバル型の力は一気に解放--余りに勢いに窓を突き破り、一階外に植えてあった花壇へと向かってゆき、何とおでこを煉瓦の角にぶつけて……大量の血を噴き出しながら息絶える!
 肉体が動き始めたマンメリーは優央を抱えながら液状サーバル型が落ちた場所を覗く。そして次のように叫ぶ!
 お前は最高に格好良カッタゾオオオオオウ--と!
『--サーバ十二世が全精力を挙げて銀河連合を動かさなければ僕はこうして日記を
記す事もなかっただろう。彼のお蔭でこうして、こうして。済まないな、胸の発作を
訴えた。医者から貰い受けた薬を服用する事で抑えてはいるが、日に日にその発作は
強まるばかり。何れ、この日記全て書き終えたら薬の服用を止めてこの痛みを受け
入れねば成らない。これ以上、苦しんでまで生き抜くのは難しい。死ぬ間際に体調が良く
なる頃合を図るのも良いが、その見極めを僕自身で計算するのは無理だ。決めるのは
体全体だろうな。
 さて、退院は目覚めてから犯の年より後に成った。どうにも再適化まで時間を要する。
事実、歩くまで二の日も掛かった。更には走り出す走るまで一の週も掛かった。本格的な
徒歩まで二の週、本格的な走行まで一の月も。それから休み過ぎた肉体を従来の状態に
戻すまで三の月より後、そして退院とはもうこれ以上最適化の必要がないと秒者を一の秒
より長く留めたい碌でもない医者が居ない全生命体だからこそ可能にした。まあそんな
医者はこの世に存在しないだろうな。書く記すべきではないが、銀河連合はそうゆう医者
だろうな。一応、痛み止め薬を大量に渡されたな。
 退院の後は何時も以上に痛み止め薬を一の日の朝昼夕に何錠服用するかを考えながら
僕は退院の後も神経を擦り減らしたな。全くそこまでして僕の再入院を心待ちにするのか、
当時の院長は。これには僕も困ったな。
 そして退院の後は如何したかって? 退院の後は何時も以上に健康を気遣い、そして
新古式神武の為に尽力。それから入院から四の年より後--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百十五年六月十日午前三時十二分三十七秒。

 場所は真古式神武首都六影府中央地区神武聖堂天同優央の間。
 そこへ齢二十一にして二十一日目に成るアリスト鳩族の少年が齢十八にして二日目に成るアデス九官族の少年にして係りの者である臨兵キューかるに先導される間に羽提げ鞄から一枚を取り出してそれを渡す。何故そうしたか、理由は次の通り。
「実はまだ仕事がありますのーで」
「ナントセキニンカンヲオシツケテ!」
「最近は新天神武も発展してて忙しいんだーよ」
 彼は新天神武にある配達本部に配属。今日も忙しく手紙を渡し続ける。因みに名前は鳩山ポっしょう
 そんな手紙を一方的に任されたキュー草の遠い従弟であるキュー軽は齢四十二にして四の月と九日目に成る優央と齢四十四にして三の月と十八日目に成る史烈と齢十一にして一の月と一日目に成る躯伝を起こすよう呼び掛ける。
「ふわああ、お早う。豪く早過ぎる用事だね、キュー軽」
「ハイ、ヤサオウサマ。ジツハ」キュー軽は静かに戸を開けて更には両手羽先を延ばして渡された手紙を差し出す。「キンデヅ・キシェールノダイニシアテノテガミデス」
「ふうああああ、お早う……躯伝を起こさないでくれる?」
「如何したんだ、親父やお袋まで起きたてなのに表情が険しいのは--」
 寝て為さい--と史烈は躯伝の頭頂部を右拳で強く叩いて寝かせた!
「オイオイ、そんな寝かせ方じゃあ却って頭の良くない生命に成るぞ」
「大丈夫だって、躯伝はそんな軟な生命じゃないから」
 全くもう--呆れて何も言えない優央は渡された手紙に体ごと近付き、利き手でそれを手にする。
 それから彼はキュー軽からの気遣いを遠慮して自ら封を開け、それを読んだ。すると--
「やっぱり……宛先が変な記し方をしてるから良くない事を考えたけど……キンデヅは想念の海に旅立ったか」
『--実はその手紙には続きがある。第二子キンヅロウは父キンデヅがとんでもない
銀河連合に関する発見をした事まで記した。そこにはキンデヅ自身がもっと語りたかった事
まで記したかったが、念を残すようだがそれは永遠に叶わない。
 その代わり--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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