FC2ブログ

一兆年の夜 第七十三話 優央の記憶 悲劇の再現(五)

 六月十日午前七時四十八分十一秒。
 場所は真古式神武首都六影中央地区。
 その中で真ん中に三番目に大きな建物。そこは六影総合病院と呼ばれる施設。水の惑星で初めてと成る病院。全長成人体型は縦に五十、横幅三十、高さ二十にも成る。初めてである為に施設としては他に比べてやや小さい。だが、通常の診察所に比べて遥かに大きい為に要職に就く者を入院させるのに問題はない。
 その病院と呼ばれた建物の二階で最も広く、そして一番奥の病室に優央は入れられる。遠すぎる過去もそうだが、より清潔感を出す為に日毎に掃除を欠かせない。故にこの病室は病院の中で最も清潔に整えられる。
 その四脚でしかも寒くなる時期に備えて三枚もの白い布団で敷き詰められた寝台。そこで優央は眠る。彼は一の月も眠り続ける。それからやっと目が覚めた時、彼は何を思うのか?
(何だ? ここは何処だ? さっきまで桃色の空間にて遥か明日まで跳んで行った気がする。それは躯伝の輝かしくも険しい明日も描かれ、更には躯伝が興した……あれ?)
 目覚め始めると一の月もの間見続けた未来は徐々に記憶から消えてゆき、残るのは--ここは何処なのか--それに尽きる。
「ようやく目が覚めたね、優央」彼を見つめるのは齢四十にして三の月と十八日目に成る史烈と齢七にして一の月と一日目に成る躯伝。「良かったわ……このまま一生寝台で過ごすんかと思ったわ!」
「よかった、親父」躯伝は優央に抱き付く。「いちじはどうなるかと思った」
「イデデ……それに手足が、痺れ、いや、上手く」一の月もずっと寝台でしかも分厚い毛布を三枚も被せられているのだから全身に血液と電気信号を流すのは容易じゃない。「いけない、このまま、動かない、方、が、良いかな、あ?」
「そーその方が良いでしょうバアル」サーバ十二世は助言をした後、こう挨拶する。「おーお早う御座いますバアル、やー優央様バアアル」
「あ、史烈に躯伝にそれからサーバ十二世か……それよりも状況は如何成ってる?」
「ぜー全国民の約一割はもう新天神武への移住は完了しましたバアル。そーそれと内部の銀河連合の巣とやらをほぼ全て特定する事に成功しましたバアル。こーこれで来る年までには国内に潜伏する銀河連合の掃討は完了するでしょうバアル」
 それを聞いて素直に笑みを浮かべないのが優央。それは次の通り。
(国内をここまで荒らされたんだから既に奴らの戦略はほぼ達成した。後六の年も猶予があるというのに……このままじゃあ国を維持出来ない。これだけやられて更なる対策が採れるのは叔父さんだけ……いや、おじさんにばっかり考えても意味がないな)
 ふう--優央は一旦溜息を吐く。
「どー如何かされましたかバアル?」
「サーバ十二世……多分、優央は考えてるの」
「え、そうなの?」
「あ、サーバ十二世……躯伝と一緒に遊んで来て?」
「えええ、親父は?」
 良いからさっさと遊んで来なさいって--史烈は躯伝をサーバの背中に放り投げると目で合図を送る--二名だけで話したいから--と!
 サーバも史烈の言葉にこう--わかりました。では躯伝様にイロハを教えて来ますので--と返事をして躯伝を背負って病室から急いで去った!
「さて……僕もわかるわ。既に銀河連合に依る布石は完了するのは」
「だよね。銀河連合に依る予言の日より先に攻め込む手筈ってのは……大間違いね」
「如何してだ、史烈?」
「そもそも銀河連合はこの国を喰らう為なら徹底的にやるのよ。その為の残り六の年と今まで繰り出して来た戦略。予言の日が来る前に喰らうならそれで良い。もしも僕達はその年まで生き延びたら今までの布石を併せて一名残らず腹の中に収めに掛かる……それだけだから」
「相変わらずのキレだな、史烈。そう言えば何十の年より前かな?」
 ちょうど二十の年より前の話よ、優央--と史烈は突然、ICイマジナリーセンチュリーにして五年前に展開した反論を語り出した。
 その反論は史烈の遅い朝食の時でも食べ物一つで止まるような事はなく、寧ろ食べ終わってから更に加速。実に三の時と十一の分も掛けて展開。そう、ICイマジナリーセンチュリーにして五年前に展開した反論に肉付けをし、より広大にして確固たる思想へと強調された。
 中身は次の通り。
(史烈は今でも変わらない。彼女は進化主義の名の下に懐古主義及び原点主義に真っ向からぶつかる。彼女は何を思ってそこまで生命の可能性を信じるのか? 彼女はどうしてそこまで明日にそこまでの可能性を信じるのか? 彼女は従来通りからの脱却を図ろうとしてる。キンデヅが前にICイマジナリーセンチュリーの脱却を図る為にACアウターセンチュリー)を作ったように彼女も又、従来では遠回りな事を危惧して生命の次なる段階を起こして可能性の翼を広げようと試みる。しかもその思想は決して机上の空論ではない。
 彼女自身は先に伝統主義に基づく僕達万世一系に依る男系継続の先にある一段階上の天同について既に歴史の表舞台に出てると主張。その証拠に彼女は真古式神武初代象徴である天同十五と彼の十四名の姉と彼の子供達は皆、仙者ではないのに仙者並みに寿命が延びた事を指摘。彼らは史烈からすればその前段階であり、やがて男系を維持し続ければ何れは新仙者が産まれる事を主張。それは何時に成るのかを彼女は示さない。けれどももしかすると出現してるかも知れないと彼女は主張するが……次行くか。
 次は彼女自身が信じて已まない進化主義。それは万世一系という名の男系維持を経ずに突然変異で一段階上へと至った革仙者の事を表す。この存在は決して天道の生命と交わり、産まれて来る子供達に限らない。熾烈な銀河連合との戦いで適応化し続け、やがて自力で仙者化し、しかも従来の仙者よりも高い能力を有した生命の事を指す。それは人族以外でも可能であり、その芽は徐々に出始めると史烈は主張。
 そして革仙者新仙者よりも高い能力を有し、たった一名だけで指揮官型数体が相手でも戦いに成らない程……と。全く史烈はさっきまで納得のゆく論理展開だったのに肝心の最後だけは夢物語だよな)
「--フウウウ、少し水を……あ、空っぽ」
「そろそろサーバが帰って来る頃だ」
 なー何か呼びましたかバアル--遊び疲れて居眠りする躯伝を背中に抱えてサーバは病室に入った。
「有難う、サーバ」優央はようやく上体を起こせるまで回復。「躯伝も満足してる顔だよ」
「はーハハハ、あー有難き幸せですバアル。まーマンメリーさんがあのような状態になりバアル、かー代わりに優央様の月ものと成っては矢四の年が過ぎようとしておりますバアル。じー自分は」サーバは突然、自分語りを始める。「じー自分は産まれた時に親の顔も知らずに各地を転々として生きて来ましたバアル」
「そうだな。それを拾ったのが僕とマンメリーだ。だからこそお前は--」
「はーはい、だーだからこそ」突然、優央の両手に躯伝を転がすサーバ。「だーだからこそ自分はマンメリーさんの為にも、マンメリーさんの為にも、マン、マン、メリーさ、ン--」
 ど、如何したの……サーバ十二世--席から立ち上がる史烈。
「ウグむぐむ、ぐ、ふ、うう、あ、あ、お、おに、逃げええええバアアアアアアル--」
 ど、如何シタンダアアア--病室に駆け込む者は優央にとって忘れられない雄!
『--四の年ぶりにあいつとの再会は僕達にとってはそれまで世話に成った物とのお別れ
も兼ねてで、あった。サーバは気が付かぬ内に銀河連合に依って体を乗っ取られていた
なんて。どうして僕は気付けなかった。気付いていたら、気付いていたら--』
「サ、サーバ?」
「優央に躯伝んんん!」史烈は咄嗟に寝台の裏側で液状サーバル型の攻撃を受け止める。「クウ、貫通は、少し、だったね」
 --イマ、スグ、ニ、デ、モ、ジ、ブ、ン、ノイノ、チ、デ--
「サーバガ……サーバヲ返セエエエエ!」齢三十九にして三の月と十八日目に成るマンメリーは液状サーバル型の懐まで踏み込む。「それはあいつの身体ダア、銀河連合ウウウウ!」

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR