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一兆年の夜 第七十二話 優央の記憶 銀河連合に依る恐るべき展開(六)

 五月九十日午後三時十二分四十八秒。
 場所は旧タイガーフェスティ第三南西地区。そこは拠点型の植物の根が張る悍ましい地区と化す。
(ここまでに三万を超える軍者が命を落とした。だが、やっとです。やっとだよ、タイガードライバー。それにジンディーにベア豪、チーテル、そしてゴンヅルオ……奪還するぞ、お前達の誇りと共に!)
 望遠砲は残り二台、予備の雄略包丁九十二本、蘇我鋭棒百四本、物部刃大三百一本、小二十四本、金棒三本、円弾三十個。これだけでタイガーフェスティを攻略しないといけない。しかも一万を切ろうとしてる真古式神武軍のみで。故にそれがどのくらい無茶なのかを優央のみならず最高幹部達は承知の上。では何故奪還する事を決めたのか? それは優央の次の考えからである。
(決めた理由はシレンデンが説明した通り。それは……ウウウウグ、向こうも望遠砲と同じ代物を持ってるな!
 それよりもここ最近の銀河連合に依る戦略は明らかにタイガーフェスティの方角よりほぼ反対側に展開される事をシレンデンの説明からわかった。僕達はそれこそ銀河連合に依る囮ではないかと何度もシレンデンに答えたが、シレンデンは違う考えらしい。それは確かに十六の年より前にタイガーフェスティ目掛けて降って来た銀河連合ではあるがその分だけここは攻め込まれないという浮ついた雰囲気がタイガーフェスティ内で漂ってるのではないかと彼は主張する。僕を始めとした幹部達はそれこそ曲がりくねった性分の銀河連合に依る巧妙な作戦だと言ってシレンデンの案に賛同しかねてもいた。ところがシレンデンはここで今まで銀河連合が襲撃した点を全て戦で繋げた。そしたらそこは明白に反対側へと展開するのがわかる。しかもタイガーフェスティから首都六影府まで何も展開しない。他に理由があるかも知れない……が、それにしたって気味がなさ過ぎる。まるで……ウワア!
 今は自分語りしてる場合じゃないな)
 優央は神武包丁を抜き、自らも出陣しようとするも--
「優央様ハ下ガッテ下さい!」
「またか、マンメリー。僕が前に出る事で我が軍の勝利が--」
「優央様にはこれと言ッテ優レタ身体能力はありませんので」
 何気に傷付くな--言われた通り鞘に包丁を収める優央。
(確かにその通りだ。僕には相手の動きに反応する程の身体能力がないからな。どうしようもないぞ、こんなの)
 そうして優央は後ろの鎮座するしかなかった。頭脳に長ける訳じゃないので的確な指揮も大胆な作戦も採れない。かと言って前線に立って切り込んでいける程の身体能力も有さない。故に鎮座するだけで士気を高揚するお飾りとして存在。それがどうしようもなく優央にとっては無力感を引き立たせる!
(お、そろそろ拠点型の近場まで近付けるな。でも僕が不用意に前に出たら意もしない攻撃が来るかも知れないな。それだけは防がないとな。僕は唯一の天同の者として命を大切にして……そうだ。そろそろ史烈を迎えに行かないと)
 突然、史烈の事が大いに恋しく成る優央。これは死の前兆……いや、確実な生を約束された希望的観測!
「全軍」
「優央様?」
「言わせてくれ……全軍、全生命体の希望目指して突き進めえええ!」
 それなら皆モ安心シテ前のめり出来ますね--そう呟きながらマンメリーは優央の言葉を齢三十一にして一の月と九日目に成るゼノン燕族の中年にして連絡長を務めるシュトラス・ベンデルウムに伝達させるよう命じる!
「わかりましょう、マンメリー。しっかりとその思いを全軍者に伝えに参ろうぞ!」
 優央の言葉に依り一万を切ったにも拘らず真古式神武軍の士気は大いに高まる。その勢いに圧されるように銀河連合は防戦一方と成る。精神力は戦いに於いては二の次ないし三の次に位置する軽視されがちな部分。だが、ここぞという時にこそそれは大きな原動力と成って、いや勝因の一つと成って奮い立つ!
 そうして拠点型へと突入する主力軍。優央も突入しようかと考えたが、そこにはマンメリーが立ちはだかる。
「やはり無理なのか?」
「お父上で在らせられる烈闘様ノ死因ハ何ナノカ御存知ですか?」
 そうだな、僕の出番はここまでか--と優央は改めて無力感に苛まれるように俯く。
(僕がもっと力があったら……やっぱり僕には無理なんだ。全生命体の希望に成るなんて絶対に!)
『--拠点型の中に入るのは全島を指揮する軍務大臣のヤマビコノシレンデン含めて
計五千。彼らはその中で銀河連合の体内がどれだけ自分達の常識が通じないのかを
痛感。参謀型、指揮官型、百獣型、そしてあらゆる対策が取れる混合型が理由。いや、
医者型。医者型が叩き潰したモノ、斬り捨てたモノ、それから上手く頸動脈を断ち切った
モノを次々と僕達全生命体の中で神様の業を持つ医者と同等か或はそれを越えたかの
ように悍ましく尚且つ命を何とも思わないかのように蘇らせる。それがただの縫合や
手遅れだが、臓器はまだ無事な所から交換してならまだわかる。だが、医者型のやる事
はそれを越えた思わず吐しゃ物を口から出してしまう行為。それがやられたのを機に
無理矢理体をくっつけて新たな混合型を作り出す事。更には死んだ筈の軍者を無理矢理
蘇生させて銀河連合にくっつけさせて戦わせるんだ。まるで僕達の心を利用した戦法を
平然と遂行するんだ。こんなの命に対して礼儀が成ってないを越えてるだろう。医者は
生命を救っても生命を嘲笑うなんてしてはいけない。銀河連合のやる事は絶対に許しては
いけない。それを聞いた僕達は怒りで健康を落としてしまう所だった。
 でも、そんな銀河連合に依る命を嘲笑う行いと格闘してようやく彼らは拠点型を打倒
する事に成功した。そこから先はこうして語ろう。それは--』

 九十一日午前二時一分四秒。
 場所は旧タイガーフェスティ中央地区。
 優央とマンメリー達、拠点型を囲む一団は怪しい動きがあれば逐一、望遠刀で狙撃するよう迎撃態勢を取る。その為に誰一名として眠りに就く者は居なかった。その為、時折欠伸をしては欠伸をした己を悔いる軍者が後を絶たない。
(また欠伸をしてしまった。居た居どれだけやったのか……数える事はしないけど、僕は何とシレンデン達に礼儀がなってない生命なんだ!)
 優央も悔いる者の一名として欠伸した事を嘆く。そんな優央に対して……「気にする必要ハアリマセン……フワアアア、俺モ欠伸をしてしまいますので」と励ますマンメリー。
「有難う、マンメリー……うわ、何だ!」突然の轟音には優央だけではなく、さっきまで欠伸を悔いる軍者達を次々と驚かせる。「まさか……まさかこれは!」
 優央の考えは次の通り。
(もしかして拠点型が倒れるのか?)
 彼の疑問に対する答えは……正解--拠点型の隅々より血の飛沫が噴出し……形を崩してゆく!
 完全に崩れるまで凡そ一の分と十一秒……それは破裂するように崩れるのではなく、熱で溶かされるように崩れてゆく--そして崩れゆく拠点型の中から銀色の光が一瞬だけ優央達の視界を奪った!
(何だ……今の眩い銀色の光は!)
 視界が晴れ渡った時、拠点型後に立つのは……シレンデンを始めとした生き残った五名もの軍者の姿!
「帰って来た是、優央様」
「優希様をお守りした叔父さん自慢の甥っ子がこんな物じゃない筈だあああぞ」齢二十八にして八日目に成るエウク馬族の青年真島ギャスー太。「血は浴びたので暫くは戦いから身を引かないといけなあああい!」
「鎌鼬流は未だ健在っち」齢三十にして十一の月と二日目に成る応神鎌鼬族にして自称鎌鼬流徒手空拳最後の伝承者を主張する中年タケナカノイタトロウ。「にしても中々の強者だったっち」
「包丁の切れ味は健在だっよ!」二回しか刃毀れしない雄略包丁を右前足に持つのは齢三十二にして十五日目に成る雄略猿族の中年サルタビト十八代。「だが、この血は匂いが極めて死っにそうだ」
「蜂族だってやれば出来るッス」シレンデンの周りを飛び回るのは齢二十にして二十日目に成る雄略蜂族の青年ビーダ六世。「雄略族の名を知らしめる時ッテ」
 五名は後に最後の戦いにて生き残った真古式神武の記憶に刻み込まれ、日記が記す通り次のような異名を貰い賜れる事に!
『--シレンデン、ギャスー太、イタトロウ、サルタビト、そしてビーダの五名は僕が
生きてる時代ではこう呼ばれるように成った。真正なる五式と。
 それくらいここで生き残った事はまぐれと呼べる物ではない。彼らにはそれだけの戦闘力
をこの時から秘めていた。彼らの粉塵があるからこそ僕はこうして日記を記す事が
出来る。
 ではそろそろタイガーフェスティ奪還戦の話を終えてそろそろ僕と史烈の仲睦まじい話
でも紹介しよう。それは遠征から帰って来ての事だった。彼女は--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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