FC2ブログ

一兆年の夜 第七十二話 優央の記憶 銀河連合に依る恐るべき展開(四)

 ICイマジナリーセンチュリー二百十二年五月八十日午前十一時十一分四十二秒。

 場所は新天神武首都ボルティーニ第三東西地区。そこには剛力党首都本部がある。それは第三西地区で三番目に大きな建物であり、表側から見れば獅子族の前足の平を思わせる形。偶然にもそうゆう構造に成った事から周辺住民からは剛力党首都本部は別名獅子の右前足と。
「優央様、一体どうゆう層ガソンナ理解ガ難しい別名を付けたのでしょう?」齢三十一にして一の月と二十七日目に成るマンメリーは周辺住民の意見と同じく出来ない様子。「もう少シマトモナ呼称もあっただろうに」
「それが民主主義の条理の無い所だと僕は思う」齢三十にして二の月と十九日目に成る優央は新天神武の制度ゆえ仕方ないと諦める。「それを僕達の常識で勝手に決め付けるのは如何かと思うけどね」
「優央様ハオ優しいのですね」
 止せよ、気にするんだから--優央にとって優しさとは己の弱さの裏返しとしか捉えられない様子。
 さて、二名が剛力党表門前に立つのは一重に彼らが次の政権を担う可能性が高い為。故に新天神武の借款が継続出来るように根回ししないといけない。その為に二名はちょうど会談を終えて真古式神武に帰ろうとする齢二十九にして十一の月に成ったばかりの六影人族の一場雄三が齢二十八にして九の月に成ったばかりの六影サーバル族と呼ばれる新興種族の青年サーバイル・一場と共に表門より出てゆくのを目にする。
「どうだった、雄三?」
「あれはそう簡単に崩せる雄じゃありませんな、優央様」
「あー、あーあれは恐ろしく信念の曲がらない象だったバアル!」
「サーバル訛リハ未ダ慣れない」
 うー五月蠅いバアル、おーおかしな発音のカンガルー訛りの癖にバアル--とカンガルー訛りも中間地点が片言に成る事を指摘するサーバイル。
「二名共静かに出来ないのか?」
「まあまあ、雄三。新興種族としてサーバイルの一族は武内族からわざわざ六影族に帰化したんだよ。これは有難い話でもあるし、サーバル族の動きは今後の銀河連合との戦いで活躍出来る潜在力があるやも知れないよ」
「それは買い被り過ぎだろう……では先に戻ります」
 すれ違うように雄三達と別れた二名。そして表門を叩く。すると中から齢三十五にして二十一日目に成る蘇我熊猫族の老婆が出て来る。
「またですかやわ」
「コラ、真古式神武象徴ニ向カッテソノ態度は--」
 まあ良いじゃないか、彼女は素直で宜しいし--と優央の言葉からして既に初対面ではない事が伺える。
「予約をお守りされるのは有難いけどよの、まあ結局は断られるのが話の落ちやわ」
「雄三も入レレバコレデ八度目ノ正直ですね、優央様」
 いや、今度は必ず納得させる--と自信満々の優央……その訳は次のように考える。
(ようやく交渉材料の一つが出来たんだ。あれを流せば間違いなく行ける筈……筈だけど)

 午後零時三十分二秒。
 場所は剛力党首都本部最上階党首室。そこは来客用にしては余りにも狭い。
 本来ならば来客者の為の部屋を用意され、そこで話し合われる。だが、当の党首本者が心理戦に長ける生命故に朝方から夕方に掛けては来客用で話し合えば根気が続かない恐れがあるとしてわざわざ自らの自室で会議するよう呼び掛けたのである。
「いやぜおう、遥々こんな一野党の首都本部まで御足労じゃったぞう」そこには齢二十九にして一日目に成るルケラオス象族の若き党首であるマモリモルナル・アダルネスがたった一名で出迎えるではないか。「どうぞどうぜおう、席に座りなさいぞう」
「党首は座らないのですか?」
「党首ではないな……おっと自己紹介だったぜおう。俺っちはマモリモルナル・アダルネスぞう、マモモナルと呼ぶといいぜおう。今年で前党首の跡を継いだ次期最高官であらせられるぜおう」
「随分と自信タップリナ象ダナ、党首様は」
 只ぞう、傍に居る事で満足するカンガルーとは異なるぜおう--とマモモナルは焚き付ける。
「ウグ、ここは……優央様の命ガ下ルマデ黙っておこう」
「賢明な判断ぜおう」
「ではマモモナルさん」
「呼び捨てで構わないぜおう。一応ぜおう、一野党党首の分際だぞう」
「それでも僕は誰に対しても平等に扱うつもりです。部下には部下の、お客様にはお客様の」
 成程ぞう、最高官蘇我シシ蔵が心を掴み取られるのもわかるぜおう--と優央の生命を惹き付ける礼儀の正しさを評価するマモモナル。
「ではマモモナルさん。こちらの要求を--」
「それとこれとは別だぞう」私は動かされようとも公は頑なであるマモモナル。「新天神武に返せないお金を払うのは些か納得のいかない話だぞう!」
「そこを何とかお願いします。真古式神武の国民全ての命を担保にこの通り僕達はお願いしてるのですよ」
 と優央は種族の都合上、椅子に座れないマモモナルの前で両膝に床を付けて腰を曲げ、更にはおでこを床に付けたまま両手を頭の前に付けるという謝罪の姿勢を取ろうとした。だが--
「待てだぞう、天同家が位が低い者に頭を下げては成らないぜおう!」
「ですが、マモモナルさんに納得させるにはもうこれしか--」
「馬か鹿ですかだぞう。最高の品位を持つ貴方様が下手に入る事こそ最も例に失する行為ぜおう!」それから大きく息を吸ってからやがて半端な鶏量の生命なら吹っ飛ばしかねない勢いで語り出す。「貴方はずっと我々の遥か遠くに居て貰わないといけないぜおう。それが天同家の宿命、それが全生命体の希望を宿命づけられた天同を継承する雄の務めだぞう!」
 そ、そうだった--優央は己のした事が先祖代々に対する例に失する行いだと気付く。
(僕とした事が駆け引きを求める余りに全生命にとって大事な誇りという物を軽く視てしまった。僕はなんて罪深いんだ!)
「ア、優央様。気を落とサズニ今話スベキ事柄について戻しましょう」
 流石だ、流石は僕の親友だよ--とマンメリーに感謝する優央。
 さて、剛力党党首マモモナルとの話し合いはそう上手くはゆかない。例え天同家の継承者であろうとも一歩も引かない。若くして党首に成るだけあって最初から交渉する上で朝から昼に掛けて気分が良い事を察知してなのか、相手の調子に合わせないように部屋選びの段階から場の空気を支配。そして交渉に於いては敢えて私では納得させて公の部分にて答えを出す。故に公私が中々混同しない。これには優央もそろそろ次のように考え始める。
(そろそろ例の件を出すべきか? でもそれはマモモナルが本当の意味で納得しないと効果がない。叔父さんはこうゆう事も教えてくれたんだ。『切り札は出し惜しみはするな。けれども効果のある場面が来るまで安易な使用は控えろ』と。なのでマモモナルが本当の意味で納得するまでこの事実は何としても口を閉じないといけない)
 彼が持つ有益な情報とはそれだけで新天神武が欲する物。これを出せばどれ程心が楽に成るのかを優央は理解する。しかし、優央はまだ出さない。マモモナルが隙を見せるまで出さない。
「--という訳だが……ところで優央様ぜおう」
「何でしょうか?」
 何か隠してるんだぞう--どれだけ隠し事をしようとも交渉を知るマモモナルには御見通しだった。
「気付かれたか。その通りだ……だが、僕達の要求を呑まないとこれは教える訳にはゆかない。それが大人としての義務だろう、マモモナルさん?」
「それでも真古式神武に金を貸すのは認めかねない。万が一にも新天神武の資金難が始まればその根幹は必ず其方に貸し付けた事とされて追求を受けるぜおう。或は仮に追求せずに一致団結しようともその心のしこりは必ず新天神武を死なせるきっかけと成るぞう!」
「だからこそ僕達は必死に成って貴方方に国民を担保にしてるでしょうが」
「その彼らがのうのうと新天神武の土地で暮らせるように成るのが問題だぞう。却って古くから住む国民との諍いが絶えず起こってそこを銀河連合が衝けばあっという間に瓦解するぜおう!」
「そこまでの……それが前身は力道党の、そして支援団体は力道会の……彼らの意見を汲んだ上で明確な意思を示すんですね」
「支援団体だとかそんな事ではないぜおう。俺っちの信念でもあるだぞう。俺っちは銀河連合が腹立たしい。奴らのせいでどれだけの生命が容易じゃなく命を落としたのかだぞう。だからこそ銀河連合を全て打倒する為ならばあらゆる喰いの芽を見つけて阻み止めないといけないぜおう!」
 そこまでの--優央が席を立つ程にマモモナルは頑なだった!
(もう無理だ。どうやってもマモモナルの意志を打ち崩すのは理なきだ。僕には叔父さんのような巧みな口なんて持ってなかったんだ。仕方ない。諦めて--)
「優央様だぞう。そもそもどうしてそこまで必死なのでぜおう?」
「それは……僕だって父さんや母さん、それに伯母さんや叔父さんみたいに全生命体の希望に成りたいんだよ!」
全生命体の希望に成る為にぜおう?」
「ああ、その為には己の命を懸けてでもみんなを救いたいんだよ。それの何が--」
「何と言う馬か鹿のような御方でしょうかぞう」
「何だって。言って良い事と良くない事が--」
 ワッハッハッハッハぞう、こりゃあ余りにも甘ちゃんなので一本取られてしまったぞう--と突然大笑いしたマモモナル。
「ど、如何した?」
「いやあぞう、優央様には全生命体の希望なんて可能じゃありませんぜおう」
「な、やってみなければわからない--」
「そうではありませんぜおう。優央様は前の象徴だった烈闘様やその弟躯央様、それに姉君であるメラリマ様のような凄みのある物は何処にもありませんぞう」
「傷付くなあ」
「話は最後まで聞こうかぞう。凄みがない事こそ最も凄みのある事だと俺っちは考えますな……俺っちが公私混同してしまって一本取られてしまう程にぜおう」
「一本……もしかして要求を受け入れてくれるんですか?」
「私でも公でも未だそれには応じかねますぞう。でもぞう」マモモナルは何と優央がやろうとしていた謝罪の姿勢を示してしまった。「魂が応じてしまっては最早どうしようもありませんぜおう」
 こうして交渉は成立。優央は約束として風車技術をマモモナルに提供。風車技術の導入こそ新天神武の更なる発展を約束する代物だった。
『--マモモナルことマモリモルナル・アダルネスとの舌戦は僕が交渉という場に於いて
人生最高の力を発揮した場だと今でも思うし、死ぬまでそう思う。僕は彼との舌戦を
制した。それは舌の力ではなく、僕自身の個性によって勝ち取った物。僕がもっと力が
あったら個性を使わずに制した筈。けれどももしもを幾ら筆に記したって仕方がない。
叔父さんの生前の言葉を忘れてはいけないな。悔いる暇があるならそれを糧に前に
進めってね。
 さて、剛力党本部から出た僕達を待つのは--』

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR