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一兆年の夜 第七十一話 優央の記憶 躯央からの提示(七)

 午後零時二分零秒。
 用意された望遠砲は僅か僅か十五基。当然ながら万の銀河連合を近付ける事なく止めるのは可能ではない。当然ながら生き残った九千八百七十四体は急降下突撃を敢行。僅か二千四百十五名しか居ない連合軍ではどうする事も出来ない。当然、躯央は撤退命令を出すしかない。
「僕が気絶している時に……わああ!」
「やらせる科亜!」躯央を庇うと同時に一瞬で二体纏めて金棒と左手刀で仕留めるは齢二十七にして一の月と二十三日目に成る神武鬼族の青年ヤマビコノシレンデン。「やっと出番牙回ったぞ!」
「流石ダ、シレンデン!」カンガルー族専用の鉄製の足甲を両前足に装着して得意のカンガルー拳法で優央を庇いつつ一体仕留めるマンメリー。「このまま二名ヲ庇イツツ撤退するぞ!」
「誰似、命令於」シレンデンは撤退する気は毛頭なく、更に三体ほど一瞬で仕留める。「聞く科亜!」
「でも勢い多きに対する勢い無きと呼ぶじゃないか、シレンデン!」
「だが俺様牙居ればこの程度乃数なぞ……な、やる那!」シレンデンは左脇腹に突きの一撃を貰い、銀河連合も頭の回るモノの集まりだと認識。「どうやら優央様乃命似従うしかありません那亜!」
 折角の防護網も我々の戦力の大幅な削減を考えると捨てるしか道はない--躯央は取捨選択を見極めながら残りの連絡員にそれを全体に伝えるよう命じる!
 どれだけ優れた武器を持とうとも一度攻略されれば後は脆い。躯央はそれを理解してるからこそ最終的には真古式神武の名が残る為の提示を考案してゆく。そして優央に何かを頼む。
「何でしょう、叔父さん?」
「比較的安全な場所に着いたら制限時間内に伝えないといけない事がある」
 これについて当時の優央は次のように述懐。
『--比較的安全な場所は純友洞窟以外に有り得なかった。いや、それ以外は完全に
銀河連合の領域。余計な犠牲を出さない為にも其処で身を隠す必要がある。そうして三
の時を掛けてここまで逃げ込んだ訳だよ。
 さて、叔父さんの最後の提示を記す前に前置きを先に紹介する。余りにも時間がない
上に僕以外の生命はこれを聞く事もない。マンメリーは何度も外から来る銀河連合を追い
払う為にその場に居ない。シレンデンは元々そうゆう役目は苦い手とする。それから
シュトラスもサンショウ二十もカモ斗もこの場には居ない。つまり当時の僕の記憶だけが
頼り。それは次の通り。
 先ずは日が経つ寸前で兵を挙げて防護網に向けて一気に攻め込む。これについては既に
防護網を捨ておくのは今後の為に成らない。当然、やるしかない。但し、攻めるのは勢い
がある時だけ。勢いが落ちる度に後退し、容易じゃない追撃をするモノだけを迎撃する。
そう、緩急を理解して前進する訳だ。こちらは今でも覚えている事。実際に行われ、見事
に防護網を食われるという最も良くない事態を阻みとめる事に成功した。
 次からは実際に実行されなかった事柄。それが前に叔父さんが突然話し出した首都を
中心に地下施設の建設。三つ目が望遠砲の小型化及び量産化の実現。四つ目が弟が
行方を晦ましたあの地下道を我が物にして大陸藤原前線基地化。最後が全建物の
要塞化。
 二つ目から最後まで全て予算度外視の計画の数々。叔父さんはそうまでして真古式神武
の名を残すのに必死である事が明白。そこまでして伯母さんや父さんの様に
全生命体の希望を目指していたか。
 そろそろこの話の終わりでも記すとしよう。それはね--』
 余りにも夢物語に近い数々の提示を聞かされた優央。当然、最初以外は全て聞き入れない模様。
「国だって資源は限りないんですよ、叔父さん!」
「時間がない。お前が言いたい事は後で聞く。そろそろ防護網の奪還に向かうぞ!」
「って話は今から聞く物--」
 二言も口にさせるのではない、優央--そろそろ躯央は残り時間の少なさに最早、何も届きはしない様子。
(叔父さんは馬か鹿かだ。頭脳労働者にしては考える事が全て感情優先主義者のそれじゃないか。それら全てを実現出来る筈がないよ!)
「躯央様、自ら指揮スルノハオ止メ下さい!」
「躯央様端俺様達乃真後ろ出黙って頭脳出模働かせながら命令出しとけば--」
 僕を誰だと思っておられるか……天同躯央、全生命体の希望としてお前達の遥か前を突き進む生命成り--たったそれだけでマンメリーやシレンデンを始めとした声の大きい者達を黙認させた!
 躯央は彼らに背ではなく、正面を向けてそう言ってのけた!
(言い返せない。もう叔父さんは--)
 その時、躯央の胸から物部刃のような何かが顔を出す……そうではない--銀河連合が躯央が背を向けた事を好機と見て狙撃した!
「ガフ、ウ……」躯央は前のめりに倒れ、こう呟く。「ハハ、格好、着かな、い、ぁ……」
 それが躯央最後の言葉と成った--優央の祖父駆央が儲けた三名の中でこれほど静かにそして空しい死があるのだろうか?
「躯央様、ガ」
「言葉似成らねえ」
「……」
 優央は無言で躯央の亡骸を抱えて次のように述懐。
『--伯母さんや父さんの死を直接見た事はない。聞いた話に依ると伯母さんは防波堤に
於ける戦いで名もなき軍者達を庇うように両手両足を切り取られ、大量出血したまま
果てた。その余りにも苦痛に満ちた事実とは裏腹にその死に顔は微笑みで満たされた。
彼女はみんなの懸け橋として死んだ事を誇りにしながら想念の海に旅立った。
 父さんの場合は死に様を誰も目撃していない。真古式神武に残る資料及び新天神武に
記された資料に依ると父さんはたった一名だけで鳳凰堂山を支配する拠点型中枢に辿り
着いてあらゆる角度の死に様が描かれるだけ。勿論、それらを示す証拠は何処にもない。
 故に二名の死は異なる。けれども共通点はある。それが劇的その物。けれども叔父さん
こと天同躯央の死は二名とは真逆。正に頭脳労働者のそれに相応しく静かにそして冷める
ように果てた。僕はそう印象付く。
 さて、叔父さんの死後--』
 優央は涙を流さなかった。勿論、我慢してる事も事実。それ以上にこんな考えあってである。
(叔父さんは死んでしまった。叔父さんは生前、言ったよな。今更出来ない事で足を止めても仕方がない。これを糧に僕は--)
「みんな……前線の指揮は僕が引き継ぐ。だからこそ--」
「危ナイデス、優央様!」マンメリーは優央の胸を貫きかねない物部刃のようなモノを左前脚で掴み取ると彼の全身を包むように立つ。「躯央様の御言葉通リニ俺達ハ……ソレヲ糧ニ奪還を図るぞおお!」
「俺様端情牙薄い生命な、の出」そう言いつつも号泣しながら金棒を高く掲げて宣言。「躯央様乃死於理由似戦意高揚於、戦意高揚於おおおおおおおおおう!」
「そうね。やるしか、ウウウウ、やるしかないねええ!」
「うううう、涙が溢れる? 涙が、なみ、なみ、ウオオオオオ?」
「みんな、みんな」我慢してきた優央も彼らの勢いの激しさにとうとう右眼から酸っぱい水分を一筋流す事に。「有難う、お陰で僕は、僕は涙を流して叔父さんの今やろうとする事が、果たせるよ」
 そして涙の号令を出す優央。涙の軍団として彼らは三の年より前に建設が始まった防護提の早急なる奪還に向けて躯央が提示した通りの進撃を開始し、僅か一の日までにそれを実現させる事に成功した!
『--こうして叔父さんの死と共に行われた奪還作戦は見事成功に収める。当然、奪還を
果たした防護網は生前、準備の早い叔父さんの援軍によって維持が図られた。その余裕を
活かして僕は更に援軍を送る事で一の年より後に防護網は完成を果たした。現場指揮官
であるサンショウ二十の言う進捗状況の芳しくない原因である地下道の攻略も同時並行で
進める事で進んだ。
 只、それだけで今後も銀河連合に依る恐るべき展開が止まった訳じゃない。このように
僕が記すように新古式神武は食われてしまった。今回の叔父さんこと天同躯央に依る様々
な提示を綴るお話
はここで幕を閉じる。まだまだ銀河連合に依る恐るべき展開も僕が
やってしまった取り返しの付かない悲劇の再現真古式神武の終焉を綴ったお話はまた
後で。
 次は確か銀河連合が始める恐るべき展開、それらを始めとした終焉へと転がるお話を別
の日記に記してゆくよ。
                              躯央からの提示 完』

 ICイマジナリーセンチュリー二百十年五月五十日午後十一時五十八分五十七秒。

 第七十一話 優央の記憶 躯央からの提示 完

 第七十二話 優央の記憶 銀河連合に依る恐るべき展開 に続く……

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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