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一兆年の夜 第七十一話 優央の記憶 躯央からの提示(五)

 五月四十九日午後十一時三十六分四十一秒。
 場所は大陸藤原大中臣地方純友洞窟東北側出入り口。
 防護提が作られるのはここではない。実は藤原バッ戸が天同烈闘の第二子である名無しを見失った場所。そこに防護提が作られてゆく。理由は躯央と一部の関係者達にしかわからない話。優央自身はどうしてそこに建設するのかを幾ら尋ねても帰ってくる答えは次の通り。
「朝は早い。それに理由を一々述べていたら考える力を養えない」
 と返答して躱されるだけ。どれだけしつこく尋ねようとも答えは返らない。
(行方知れずの弟が今でもそこで彷徨ってるかも知れない。そんな答えでも良かったのに)
 優央としては綺麗に済ませられる答えではない。自分自身で考えても行き詰まる為に躯央に尋ねたのにそれが無理だとすればどうすれば良いか迷う。
(仕方ない。もう遅過ぎるし、寝よう--)
 待ってくれ、優央--己の気持ちに応えるように躯央は呼び止める。
「え、でももう遅い事だし--」
「いや、疑問に答える為じゃない。お前にだけもう一つ言っておきたい事がある」
「何でしょう、叔父さん?」
「お前とお前の息子達は必ず生きるのだ。例えどんなに泥を被ろうとも五体が引き裂かれようとも必ずだ。その為ならばあらゆる考えが宿る。その為なら自らの限界を超えてでも食い下がれる
「な、何を言い出すんですか?」
「告白しよう。正直、僕は死が恐い。明日僕は死ぬだろう」
 躯央は胸の内を明かした。それは優央も既に気付いていた事。それを自ら口に出した躯央。それだけに追い詰められる事が明白。
「明日? そんなのは外れます!」
「強がれないんだ。日が迫る内に僕は震えが止まらない。恐いんだ。居たいのが恐い。苦しみが恐い。そして何よりも死を想像するのが恐い!」
「わかります。僕だって死ぬのが恐い!」
「……有難う。どうやら僕は姉さんや兄さんと同じじゃないんだと理解した」今まで意地を張っていた事を告白。「所詮頭でっかちな生命。どんなに頭を働かせても実際にはこんな物……脆いなあ、そう思うだろう?」
 ええ--正直に頷く優央。
「本当に言ってくれるとここまで傷付く事はない……けれども」それもまた優央だと躯央は納得する。「そうでなければ優しい者ではない」
「優しい? それは一体どうゆう意味で使ったんだ?」
「優しいとは優れる、優秀、優る……良い言葉だ」
「でも僕には優れる部分は一つもない」
「それで良いんだ。だからこそお前は誰よりも気持ちを推し量る事が出来るんだ。だからこそ僕はお前に身の内を告白した」更に躯央は死が迫る者の傾向も伝える。「船の上で無理難題を口にしただろう……あれは僕自身の意地っ張りだ。出来もしない事を口にして少しでもお前達に安心させたかったのだ」
「やはりそうだったか……ならばもう言わないで下さい」
「ああ……但し、お前にだけは言わない。それに……僕にだって想い者は居る」躯央は服胸に取り付けられてある入れ物から自画像の絵が入った螺子巻き時計を優央の右手に向けて投げる。「彼女は現在妊娠四のヶ月だ」
「隠し子ですか?」
「正式にはそう成る。但し、彼女の子は天同ではない。何故なら僕と彼女の総意に依ると雌の子……後継ぎに向かない」
「それは念が残りますね」
「もしかしたらその子はきっと……いや、これ以上又従弟を増やすのは御免だな」
 躯央は孫の世代の事が見えるようだが……彼の予言は奇しくも外れる。
「ええ、真古式神武自体が従兄弟同士の結婚によって成立した国家神武ですよ。又従弟の恋愛が続いたら最早どれだけ血が濃く成るのか……益々健康状態を維持するのは難しいですね」
「おっとそろそろ日が過ぎる。それじゃあお休み」
「おやすみなさい、叔父さん」
 二名はそれぞれの仮設民家へと戻ってゆく。
(仮設民家に戻ったらマンメリーと相談しようか)

 五十日午前零時一分零秒。
 天同優央とマンメリー・レヴィルビーの寝所がある仮設民家内にて。
「ソ、相談?」
「叔父さんを命懸けで守ってくれるか?」
「その命令ニハ従ウ事ハ出来ませんね、優央様」
「それでもこの通り」優央は土下座をする。「親友として義理の兄弟として頼む!」
「優央様……俺ハ優央様ノ忠実成る僕です。僕が親友或ハ義兄弟ノ間柄である事を認める訳にはゆきません!」
「それでもこうして僕である筈もお前に背筋を曲げてまで頭を下げるんだ!」
「頭をお上げください。それに体はなるべく俺を見下ろすようにして下さい。貴方様ノ土下座ハ気分ヲ下げてくれるのです!」
「いや、物心付く頃からお前の事を親友だとそれから義理の兄だと思ってる!」そうして一瞬だけおでこを上げると直ぐに叩き付けるように土に付ける優央。「だから頭どころか体だって下げない!」
「対等の立場を……そこまで俺ノ事ヲソウ思っていたのですか!」
「お前がどれだけ僕で居たいと願っても其処だけは譲らない、マンメリー!」
 ……馬か鹿と表現サレテモ知りませんよ、優央様--マンメリーは背を向けて、右前足で拳を形成する。
 それを右眼で覗いた優央は「有難う、マンメリー」と感謝を述べた!
(お前はやっぱり親友或は義兄弟以外を感じる事は出来ない。僕の事をそこまで理解してくれる生命は他には居ない。感謝してもしきれないよ。最早そこには理由なんて要らない!)
『--マンメリーの死期はまだ迫らない。まだ彼は死ぬには遠い。何しろ、彼は史烈と
同じように今のような己を好きに成れる僕にさせたんだ。まだそこで死ぬ筈がない。
 けれども、叔父さんはもう死ぬ。マンメリーも史烈も僕が自信を付ける頃にはもう骸と
化した。まあその話はまだまだ先に成る。
 今語るべきは僕に提案をしてくれた叔父さん。彼の提案いや提示はまだ出ていない。
今回の話で重要な提示はこの後、語られる。それは戦いの最中に突然、叔父さんが言い
出す。僕だけでなく、他の者だってどうしてそんな事を今から口にしたのかは誰にも理解
出来ない。当時の生命にとっては今しか見えず、後の事を一々気にするなんて出来る筈が
ない。それは戦いに於いて重要なのかと考えれば誰だって意味が見出せないと口にする
だろう。戦略的な話は戦いが始まる前に終わる物。戦闘中に戦略について語るなんて無理
な話だ。戦闘中は戦術の話を重視し、戦略の話は戦闘が終わってからすべき事柄。なので
それが提示であった事に誰も気付かなかった。
 今にして思えばあれこそが叔父さんが発案した銀河連合を食い止める手段だったのかも
知れない。例え銀河連合が襲来しようともあの方法ならば僅か少数でも生き延びて
真古式神武の再建を図れる
という。
 でも僕達はそれを忘れてしまった。忘れてしまった為に今と成ってはもう真古式神武は
ない。忘れてしまった為にこの世界にはもう新天神武以外の国は存在しない。新天地
除けばもうこの世界には新天神武以外の国は何処にもない。あの提示を忠実に果たして
居れば、或は思い出して居たら僕達は--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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