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一兆年の夜 第七十話 優央の記憶 終わりの序章(五)

『--この戦いは薄氷の勝利に終わった。確かに勝利である事は大きい。しかし、勝利
とは最終的に銀河連合を全て倒してこそ完全なる勝利を意味する。だが、幾ら勝利する術
を持とうとも銀河連合を全て倒すという術を僕達は知らない。知らないという事は絶対に
銀河連合を全て倒せない事
を表す。なので今の時代に生きる僕達が果たすべきなのは
現時点である最良の倒し方を続けるしかない。
 その方法の一つが望遠砲と望遠刀、翼持刀に依る射撃武器の一斉斉射。どちらも組み
合わせれば現時点での銀河連合の掃討に向く。それでも穴を見つけて奴らは懐まで
近付く。そうゆう時にこそ近接戦を得意とするシレンデン達の出番が回る。
 唯、この戦いはまだ終わりの始まりでしかない。空からの攻撃はまだ終わってない。
猶予は後三十の年より後。それまでに僕達は空への迎撃の方法を模索しないといけない。
もっと望遠砲の飛距離を伸ばすべきなのか?
 いや、終わってしまった話を幾ら探っても意味がない。これは僕が死の間際に記録する
代物なのだから。今は防衛線を何とか勝利に収めた後に最愛の史烈と抱擁を交わす時の
事を綴らないといけない。そう、それは--』

 五月二十六日午前九時十四分二十三秒。
 場所は真古式神武六影府第四南地区出入り口前。
 あ、優央様だあ--史烈は真っ直ぐ優央の所まで走って来る!
 彼女の勢いを追仕留める足腰も踏ん張りも持たない優央はそのまま、後ろのめりに倒れてマンメリー達に依る支えがなければ硬い地面に後頭部をぶつける所だった。
「危ないな、史烈」
「良かったあ。優央様が前線で戦っていると聞いていても経っても居られなかったんだよ!」
「別に後方で叔父さんと一緒に眺めていただけだよ」
「僕はちゃんと指揮を執った。もしや見て学習してなかったな?」
 御免--落ち込むような表情で謝罪する優央。
「コラ、優央様。何でもかんでも謝るのは雄らしくありません。もう直ぐ成者なんですから一名前の雄として顔を上げなさい!」
「でも僕にはみんなみたいに優れた所は--」
 名前の通り優しい所が優れた所ですよ、優央様--と史烈は本者の気付かない長所を言った。
(優しい所? 僕が?)
 優央は初めて聞かれた事ではない。実は産まれた時にもある者にそう言われた事があった。次に叔父である躯央に。三番目に史烈に、四番目にマンメリーに、そして五つ目は同じく史烈に。つまりこれで五度目である。だが、優央はある事を考える。
(あれ、最初は誰に言われたんだ? もしかすると余りにも幼い頃に言われたから僕自身も覚えていないのかも知れないな)
 如何したんだ、優央--と何か考える躯央は尋ねる。
「いや、何でもない。それよりも」優央は思い出せない事柄を後にして熾烈を抱擁しながら立ち上がる。「さっさと臨時首都だったかな?」
「ああ、タイガーフェスティはもう銀河連合の住処と化してしまった。しかも今の戦力では取り返す事も出来はしない。なので僕達はここで雌伏の時を待ち、準備を進めて行かないといけない!」
「そう成リマスネ、躯央様」
「雌伏……まだ戦うの? どうしてまだ戦おうとするの?」
「こ、恐いのか?」
「うん、恐いなんて物じゃないから」史烈はどうしてなのかを短く語る。「何時か優央様と離れ離れに成る気がして!」
 史烈……まさか--優央は雌の勘である事を遠い記憶より思い出す。
 それは次の通り。優央が思い出したのは死ぬ間際に母天同優希が何度も何度も幼い優央に語った言葉。それは--私は雌として産まれて良かった。何故なら私は愛を通して明日を見据えられるの--と。それを己が死ぬ間際に七度も、そう七度も優央に聞かせた。
「その予言は強く受け止めよう」これらを理由に優央は史烈が口にした事を忘れないよう促す。「でも忘れてしまう……もう一度言ってくれないか?」
 うん、優央様と離れ離れに成る気がする--優央に応えるように史烈は同様の言葉を口にする。
「有難う、史烈」
「そろそろ中ヘ入りましょう、優央様。それに史烈モ」
「マンメリーの言う通りさ、優央に史烈よ。何時までも立ち話してると後続の更にはもんで必死に立つ彼らの気が休まりはしない」
 あ、そうだったね--と優央は俯く。
「もう、優央様に言ったのに直ぐ忘れちゃって」
「御免、反省するさ」
 それから躯央、優央達防衛軍は六影府へと入ってゆく……
(やっぱり僕には無理だよ。僕にはみんなを引っ張る勇気がない。何一つ秀でた部分もない僕に何が出来るっていうんだよ!)
『--こうして上向きに生きようと考えるまでに僕は何一つ自信もない。だが、仕方の
ない話さ。成者に成るまでの僕は実際には何もしなかった。只、真古式神武の跡取り
として最低限、国民を安心させ、癒しを与え、そして彼らに生きる希望を提供する
しかない。僕が何か出来るとしたらそれしかない。史烈や母さんみたいに雌ではないから
一生懸けても雌の勘を持つ事もない。叔父さんみたいに頭が優れていて肉体面で何も
出来ないけど頭脳面で様々な事を考案し、それを実行に移すだけの能力も持たない。
父さんみたいに前線で戦い続けられるだけの身体能力も備わってない。マンメリーみたい
に体を張れる程許された立場でもない。でもこれは今を思えば笑って過ごせる話だよな。
僕は何も持たないからこそ持たないという優れた部分を発揮出来たんだよ。でもまだ僕
はこの長所にまだ気付かない。いや、気付かなくて当たり前だな。
 さて、今回の話はここまで。けれどもこれはまだ準備段階及び終りに向けた動向で
しかない。叔父さんが望遠砲を用意して真正神武の領地に食い込まないように銀河連合を
追い払う準備をしたようにこの物語はこれから来る様々な提示、展開、再現、そして終焉
へと至るまでの動向と準備でしかないんだ。当時の僕は更に物わかりの知らない年齢
だった事もあって叔父さんがどうしてあんな提示をしたのかも気付かない。そして提示
通りに銀河連合は恐るべき展開を仕掛け、更には取り返しの付かない悲劇が目の前で
再現
され、最後に僕の代で真古式神武が終焉へと至った。
 さて、今回は終わりへと至る序章について短く纏めた。次回からは叔父さんが死ぬ間際
に出した提示
について紹介しよう。
                               終わりの序章 完』

 ICイマジナリーセンチュリー二百八年五月二十六日午前九時三十分三十秒。

 第七十話 優央の記憶 終わりの序章 完

 第七十一話 優央の記憶 躯央からの提示 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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