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一兆年の夜 第七十話 優央の記憶 終わりの序章(四)

 午後七時十分八秒。
 場所は第五避難区。真正神武の領域より南南西から成人体型六十七の所に位置する。そこは躯央及びタイガードライバーの命じるがままに一大決戦所と化した。
 ここで真古式神武真正軍はたったの一万でその十の倍以上も向って来る銀河連合の大群を迎え撃つ。だが--
(幾ら何でもこんなの防戦一方で援軍頼りの戦略なんて勝ち目ないじゃないか)
「優央様」
「あ、マンメリーか。何か言いたそうだね。思った事を尋ねてくれ」
「イエ、俺も優央様ト同ジ考えです」
「いや質問してくれ、マンメリー」
「済ミマセン。優央様ガ考エル事はこうですよね? 確かに倍の数ニ対シテ防戦一方で勝てる訳がない。仰ル通りです。俺も同ジ考エデス」
 やっぱ考えは御見通しか--とマンメリーに読まれて若干苦い笑いを浮かべる優央。
「そりゃあソウですよ。だって俺は優央様が産まれた時カラズット遊び相手として付き従ってきましたよ。古式神武の恵弥めぐみ様の時代からレヴィルビー家ハ代々ノ象徴に仕えて来ましたので」
 だから斗手俺様たちより模古式神武乃天同於知ってる斗自慢するんじゃない--といきなり優央とマンメリーの横に立つのは齢十九にして二十八日目に成る神武鬼族の少年ヤマビコノシレンデン。
「またお前カ、シレンデン」
「俺様乃方牙年上だぞ、マンメリー。いい加減似敬意於示せよ」
 それはお断リダネ--と生意気坊主のマンメリーはやや丁寧に断りの言葉を送る。
「まあまあ、二名共。今はその喧嘩に対する意気込みを銀河連合にぶつける方が良いよ」
「全く優央様端甘い考え於持ってます那亜」
「どうゆう意味か教えてくれ、シレンデン」
「それ端自分出見つける事だね」
 また何時もの放り投げね--どうやらシレンデンは何時も何か意味の深い事を口にしながらも尋ねられると放り投げる癖がある模様。
「ここで何を油売りの真似をしてまああああうすか」とやって来るのは齢三十三にして三の月と二十九日目に成るエウク馬族の中年真島ポニー郎。「そろそろ銀河連合が攻めて来ますぜええい!」
 そうだった、持ち場に付かないと--ポニー郎に注意されるように優央を始めとした三名は自らの持ち場へと戻ってゆく。
(僕の持ち場は重要な生命故に叔父さんの所だよ。叔父さんの所まで急いで--)
「足に力ガ入リ過ぎておりますよ、優央様」
 あ、うわ……イデデ--マンメリーが言った傍から前のめりするように転ぶ優央。
「大丈夫デスカ?」
「ヘ、平気だよ」血が出る程の擦り傷じゃないと主張し、マンメリーの差し伸べた右前足を焦らず自らの右手で穏やかに掴みながらそれに助けられるように立ち上がる優央。「イデデデ、僕は情けない生命だよ」
「また始マリマシタネ、優央様ノ良クナイ所。確かに誰モガ前向キニ考える事は出来ません。それでも」そう言いながら優央の両肩を強く握るマンメリー。「少しは楽観的ニ考エテ下さい!」
「そんなの現実を見ない考えだよ!」
「楽観的な考エトハ意志を持った者が果たせる前進。悲観的な生命ハ何時だって気分がそうします。楽観的ノ何ガ良くない……寧ろ悲観的ニ考エル方ガ良くないのです。だから--」 わかったからもう掴んだ足を離してくれ--と強く握り過ぎるマンメリーについ、骨にひびの入りそうな音が響き出す優央。
「あ、済ミマセン。つい熱ク成りました」
「はあはあ、わかったからそろそろ僕達の持ち場に戻ろうよ。お前の気持ちは十分伝わったからさ」
 やっとの事で集合時間の僅か三の秒以内に到着した優央とマンメリー。余りにも絶妙な歩調に躯央は然るべきなのか或は褒めるべきなのかを一瞬だけ迷った模様。
(意外にも叔父さんが叱らなかったよ。本来だったら警鐘から僅か数の秒遅れただけで説教が始まるのにね)

 午後八時三十六分四十二秒。
 倍の数でありながらも真正軍は有利に事を運ばせる。どうして有利なのか? その訳は次の通り。
(凄い。これが叔父さん達が言ってた切り札なのか。僕の知らない所で既に望遠砲ぼうえんほうを完成させていたなんて)
 望遠砲とはいわば望遠刀、翼持刀に変わる対銀河連合用の射撃武器。丸い穴に円弾と呼ばれる鉄製の巨大な弾を装填して最大射程成人体型六十七から百三十四までの銀河連合に命中させる事が可能。全長は大体熊族に比肩する大きさ。その上で足が二つある。その足は水車の技術を応用した歯車式の代物。つまり、力がない生命でも押せば運んで行ける。更には歯車式故に一発射出する毎に後ろに転がりやすい問題を解決する為に望遠砲を固定する為の足が用意。その足は二本あり、それを柔らかい地面に突き刺す事で固定を可能にする。但し、連射した場合に於ける徐々にずれていって最終的には突き刺した足が外れて転がるという問題点は解決済み。それは躯央が次のように説明する。
「--つまり固定足二本には副固定足が付いてある。一本につき八つ。しかも突き刺した際にその反動で八本とも開いてくれる。これのお蔭で一発一発放つ毎に足がずれていくのを少しはマシにしてくれる」
「良くわかるようで良くわからない」
「まあな。この兵器のお蔭で少しは食い下がれる。まあ少しだけな」
「父さん達の頑張りは別に意味のない事じゃないんだね」
「でもこの望遠砲も問題があるんだな」
「え、問題?」
 それについては躯央自ら優央に聞かせる。それは巨大故に製造費用が高い事。それから連射性が望遠刀及び翼持刀に比べて遅い。再装填時間が掛かる。どれくらい掛かるかと説明すれば次のように成る。
 それは一発撃つ毎に一々中を点検しないといけない。点検もせず二連射すれば暴発事故の原因にも成る。実際、事故が発生して軍者が五名ほど命を落としたという事例まである。故に再装填する前に点検をしっかりしてからやらないといけない。それだけに手間足間及び翼間の掛かる代物。
 その再装填時間は何と最速で二の分と五の秒掛かるとの事--これではその隙を突いて銀河連合に攻め入られてあっという間に制圧されてしまう!
「じゃあ結局は何の解決にも成らないじゃないか!」
「ああ、解決策にも成らない……だが、その穴を埋める為に望遠刀及び翼持刀部隊は用意してある」
 それは少数の十五から三十名の十四部隊。だが、再装填までの橋渡し役として最適。物部刃が尽きる頃には再装填が完了し、陣地に逃げると共に脱出--と同時に円弾の嵐が銀河連合の群れに押し寄せる!
「凄いよ。流石は叔父さんだ!」
「だが、これも一時的に過ぎないのだ。こうゆう戦法はやがて銀河連合に依って真似られ、対策も採られ、我々は制圧される。メラリマ姉ちゃんも烈闘兄ちゃんも同じ考えだろう」
「伯母さんと父さんがそんな事を!」
 いや、考え過ぎだな--と躯央は思い込みを撤回する。
 さて、撤回する頃合にポニー郎が報告しに駆け付ける!
「躯央様……銀河連合の群れは数の千も余力を残したまま古式神武方面に撤退していきまあああうす!」
「そうか……まずまずの勝利だ!」
 勝利……薄氷の上であろうともこんなに嬉しい事はない。これは躯央だけでなく優央も次のように喜びを示してゆく。
(やったよ、タイガードライバー、ジンディー、チーテル、それにクマ豪にゴンヅルオ……そして逃げ遅れたタイガーフェスティを始めとした古式神武各地で静かに暮らして居た国民よ。お前達の無念は少しではあるけど、晴らせたぞ。こんなに嬉しい事は何処にあるんだよ!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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