FC2ブログ

一兆年の夜 第七十話 優央の記憶 終わりの序章(二)

 午後三時十五分四十三秒。
 場所は地下空洞。第五通路。そこは非常に狭く、平均的な成者人族の雄一名しか通れない幅で熊族や鹿族等は身体的な特徴や大柄故に苦労する。
「一列に並んで進むなんて銀河連合にしてみれば絶好の機会じゃないか」
「叔父さん、これはどうしてそう成ってるんですか?」
「地盤沈下の恐れがあるんだ、僕達人族が二名ほど通れる幅にすると……とそれについては休憩所まで進んでから簡潔に説明するから待て」
「簡潔ねえ」優央は蒸し暑い事を気にする。「只でさえ夏の時期なのに更には熱が籠りやすいこの洞窟を急いで通る苦痛は耐えられるかな?」
 耐エルシカアリマセン、優央様--とマンメリーは優しめな音量で励ます。
(確かにこの熱も叔父さんの言う通り銀河連合にとっては絶好の機会かもしれないね)

 午後五時二十四分十一秒。
 場所は第一休憩所。そこは縦成人体型十、横成人体型八、高さは成人体型五という極めて狭い場所。縦成人体型三、横成人体型コンマ五の長椅子は二つしかない。大変苦痛が伴う。
 おまけに酸素の濃度が薄いせいなのか、全員が倦怠感に襲われる。
「済まないス。こんな御持て成しでしかみんなの役に立てないス」そう語るのは齢二十九にして八の月と八日目に成るメデス蟷螂族の青年ジンディー・ムシャリーニ。「俺は何て情けない軍者ス。口だけで武の才能は先祖達のそれ以下ス」
「クヨクヨするな、ジンディー。お前は良くやってる。確かにお前の十五名の兄達に比べたら確かに……だが--」
 やっぱり俺は情けないんス--と直ぐ早とちりするのがジンディーの良くない部分。
「話を最後まで、聞いてくれ」若干、熱くなり過ぎて調子を変に上げてしまった躯央。「ハアハア、兎に角お前は良い嫁さんを貰って今では九十七名の親父じゃないか」
「えへへス、照れますなあス」
 ジンディー、黙ってろ--と更に早とちりなのは齢三十にして三の月と十日目に成るロディコチーター族の中年チーテル・バーバリッタ。
「何だとス、ハアハア……チーターの癖にス」
 おうおう……はあはあ--共に三の日以上も地下通路で作業していた為に若干息が荒い模様。
「兎ニ角、お前達ハ落チ着け」
「全くだよ。休憩が休憩に成らない」
「今、時間はわかるか……チーテル?」
 宣告時間まで凡そ十八の時が切ろうとしてる--と時計を確認して報告するチーテル。
「ジンディーもチーテルも急いで真正神武の所まで避難してよ」
「それは出来ない相談ス」
 俺達はここで一名でも多くの生命を通さないといけないんだ--とタイガードライバーと同じ事を口にするチーテル。
「摂政である僕の命令でも、か?」
 残念ですが--とジンディーよりも先に意志を通すチーテル。
「カミさんに言って下さいス。俺は俺なりに任務を全うしたス、とス!」
「全くお前達ラシイナ」
 生意気坊主に言われたくないな--と十五も年下で尚且つタメ口のマンメリーに苦言するチーテル。
「で、でも必ず生きてくれ。僕は生命が死ぬのは悲しいんだよ!」
 出来れば、ですが--と敢えて諦観するような口振りのチーテル。
 その声の高低を確認した躯央は何も口にしない。反対に優央は何度も説得を試みる。だが、地下通路の酸素濃度の薄さの前に僅か十の分で根尽き果てた。
(僕は結局誰も助けられないんだね)

 午後十時三十一分三十七秒。
 場所は第六通路。その道は長く、そして天井が低い。その高さは何と成人体型一。つまり、人族ならば屈んで進まなければいけない高さ。
「ここも地盤沈下の恐れがあってあんまり高く作る事が出来なかった」
「あ、そう言えば休憩所で叔父さんは説明してくれるんじゃありませんでしたか?」
 細かい事を思い出さないで貰おうか、優央--とすっかり忘れていた躯央。
(銀河連合が空より一斉に押し寄せるまで恐らく後十四の時? それにしても個々の狭さと言ったら。それに一々土をこすりながら進むと……うわ、えっと右肘の先、尋ねよう)
「何だ、優央?」
「右肘から手までのこいつは何て言うんだっけ?」
「それは上腕……成程、お前も擦り傷が増えて来たな」
「有難う、叔父さん」
「カンガルー族の場合ハ尻尾マデ擦り傷が増えて……イデデ」
「確かにカンガルーも屈める体勢じゃないから僕達と同じく匍匐前進するから辛いなあ」
「その際に尻尾が上向キニシカモ天井を擦ってしまいます」
「我慢するのだ、二名共。後少しで少しマシ第七通路に入る」
 と躯央はまるで地下通路の地図を頭に叩き込んでるかのような口振りで二名に語る。
(確か地下通路は合計十五の通路で構成されるんだったね。それから第七通路は確か--)

 二十四日午前一時一分四秒。
 場所は第七通路。真正神武行きは凡そ二の時も時間を掛けて下へと降りてゆく。古式神武行きなら凡そ一の時と四十二の分掛けて上に登ってゆく。その中間地点は実に狭く、馬族の生命はどうやっても通れない模様。
 優央、躯央、それからマンメリーはその中間地点を通ろうと苦労する。
「イデデデ、服も破ケテ更ニハ余計に傷が増す!」
「頑張れ、マンメリー。後少しで尻尾が通る!」
 ウググ……ヨッシ--ようやく体の大きいマンメリーは通り切った。
「だが、次は会談だ。後十の時経てば否が応でも銀河連合に依る質量攻撃が襲来する。そう成ればこの通路は地盤沈下を起こしてしまうだろう」
「その為にもジンディー達の意志ヲ背負ッテ我々は進まなければいけないんですね」
 じゃあ行こう、二名共--と優央は熱さや酸素濃度の低さと格闘しながらも大声を出して鼓舞した!
(眩暈が、気分が、色々あってそろそろ眠りたい。でも、まだこの階段がある。どうして階段を上らないといけないんだろうか?)
 道の険しさに思わず眠る所だった優央。そんな彼の眠気を覚ますのは付き者の役目。マンメリーは自らも限界に近いと感じながらも使命を果たしてゆく。

 午前四時五十七分四十二秒。
 場所は第二休憩所。そこは第一休憩所よりも平均して二倍も広い。おまけに形こそ同じでも長椅子は四つもある。休憩するには十分過ぎる。
 三名は疲労と格闘しながらようやく辿り着いた。
(それにここはまだ空気が良い。四隅に置かれてある活性炭のお蔭かな?)
 あ、やっぱり優央様だあ--優央の向かって走って来るのは齢十六にして二日目に成るプラトー人族の少女。
「うわっと!」少女に飛び付かれて思わず、尻餅する優央。「良い匂い……じゃなくてその声は史烈?」
「そうそう、プラトー人族の春風史烈とは僕の事だから」
 だから一名称を私かあたしにしてくれよ--と雌なのに雄の一名称を使う史烈に何時も通り注意する優央。
「それじゃあ僕の個性が消えるでしょ。優央様は相変わらず上から目線なんだからさあ」
「個性云々じゃなくて君は雌の子でしょ?」
「それ僕を馬か鹿かと見てるの?」
「そ、それは--」
 コラ、何時まで肌を触れ合っているかああ--怒鳴り散らすように二名の所まで近付くのは齢四十二にして五の月と十四日目に成るプラトー人族の髪の毛にやや白みが掛かった老年。
「これは史天」
「離れなさい、史烈!」
 いや、離さないから--と史天と呼ばれる雄に抵抗する史烈。
「まあまあ、史天。お前の気持ちも理解は出来ますが、今は落ち着いて下さい」
「落ち着けるか。天同だか何だか知らないが、人族が全部お前達の血で満たされてたまる物か!」
「だからって一名娘デアル史烈ノ気持チヲ踏みにじるのは少し勝手過ぎませんか?」
 黙れ、カンガルーの癖に--と人族絶対主義者の史天は人族以外にも厳しい模様。
「まあまあ、落ち着きましょうか?」間に入るのは齢二十七にして九の月と九日目に成るラエルティオ山椒魚族の青年山一サンショウ二十にと。「春風の旦那の気持ちはあっしは十分わかりますぜ?」
 疑問文で終わらせる訛りの山椒魚族の若造にわかってたまるか--と背を向けて五名の前から離れた頑固な春風史天。
「ようやく眠ろうとかと思ったらまた件の史天の老者ですか」
「たまに存在するんだよナア」と入れ替わるようにやって来たのは齢二十四にして二十四日目に成るテレス熊族の青年真鍋ベア豪。「所謂新天神武の新語で喩えると保守主義者トオ」
 そんな訳わからない言葉を僕達に聞かせるな、ベア豪--と新語に対して余り好まない躯央は止めるよう勧める。
『--と言う訳で第二休憩所でようやく叔父さんは地下通路の問題点を語ってくれた。
理由は次の通り。
 先ずは地下水脈にぶつかってより地盤が脆くなる危険性。常に物音を確認しながら掘り
進めないといけない。次に天井を支える事。これが幾ら梁を通しても難しい点だろう。
もう少し技術の革新があれば僕達はより高い天井が出来るのに。最後がやはり地震が
発生して一気に崩落する恐れ。自然災害一つで生命が作り上げた代物は簡単に崩れ
去ってしまう。故に地下通路の出来はあのような結果に成った。
 空の歪みさえなければ僕達は更に優れた地下通路を作れたのかも知れない。だが、
それは終わった話。終わった話を幾ら掘り返しても遅い。遅過ぎるんだよ--』

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR