FC2ブログ

一兆年の夜 第七十話 優央の記憶 終わりの序章(一)

 ICイマジナリーセンチュリー二百八年五月二十三日午前七時十一分四十三秒。

 場所は真古式神武首都タイガーフェスティ府中央地区斬弥きるみ聖堂駆央くおうの間。
 齢十四にして二十一日目に成る神武人族の少年天同優央やさおは座禅を組む。
(今、僕がみんなを支えなければいけないんだ。今、僕がみんなを支えていかなければ--)
 そこで何をしてますか、優央--そこへ齢二十八にして四の月と二十八日目に成る神武人族の青年天同躯央くおうが深刻な表情でやって来た。
「躯央叔父さんだね。来るという事はやはり銀河連合に依る宣告の日が来たんですね」
「ああ、予報士に依ると後二十一の時にここタイガーフェスティ府と更には真正神武と古式神武の境界線まで銀河連合は一斉攻撃を仕掛ける。本来ならば僕達がここに居る事自体が助かる見込みのない話。だが、この時を想定して祖父の十六とむの代より地下空洞は建設された。ならばそこから行けば少しは助かる見込みはある……が、そう成ると問題は空洞の耐久性だな」
「また叔父さんの良くない癖が始まった」優央だけじゃなく、語りたがりな癖はメラリマや烈闘だけじゃなく既に誰もが周知する話。「そこから先は現地で思う存分語って下さい」
 ここからが面白い所なのに--と躯央は言うが、そんな事はない。
 というのも躯央は話が長い割には山場も谷間もわからない困った生命。頭は学者並みに切れる物の肝心な面白さを引き出す才能が意外にもない。故に面白くなる話の骨という点では学者ではない芸者に十歩どころか百歩以上も遅れを取る。
(あ、そろそろマンメリーも史烈のれあも来る頃かな--)
 ここに居ラレマシタカ--優央の予想通り齢十五にして一日目に成るルギアスカンガルー族の少年が駆け付ける。
「マンメリーだけ?」
「申し訳アリマセン。春風史天のあ様が頑ナニ天同家ニ嫁がせる事を面白く感じておられなくて」
「余程好まないのですな。全くあのお方の頭の堅牢さには呆れて物が言えないな」
「でも仕方ない話だよ。僕達天同家はずっと他の人族とは違う点としては古くからの考えを固守する史天さんの気持ちもわからなくありませんから」
 それでも……もう良いか--躯央は何時までも足を止める場合ではないと考えた。
(そろそろ地下空洞に向かわないと。こうしてる間にも多くの生命の命が懸ってるんだ。僕達がやらなければ一体誰が全生命を助けられるというんだ!)

 午前十時零分九秒。
 場所は真古式神武地下空洞。そこは既に優央達が向かう前から最高官タイガードライバー・佐々木に依って一の週より前から既に避難は開始されていた。そしてその場所とは第四南地区にある三番目に大きな建物の地下にだけ着々と建設されていた。
「オオス、来ましたかアアス」齢四十一にして九の月と六日目に成るルケラオス虎族の老年タイガードライバー・佐々木とはこの白髭の濃い生命。「既に百七十六万の生命の避難は完了しておりまアアス」
「まだ足りんな、タイガードライバー。全国民の凡そ一分に満たないしか避難が完了出来ないなんて」
「それは仕方ノナイ事です、躯央様。何しろ真古式神武の全国民が全てここタイガーフェスティ府ニ暮ラス訳ではありません。遠方で暮らしたいと思う生命や今や活気溢レル六影府ニ暮ラシタイト考える生命だって居られます。生命の意志が簡単に統一サレテハソレコソ銀河連合ト何ら変わりはありません。一つじゃないからこそ我々生命ハ苦悩ヲ分かち合える物です」
 それでも納得がいかない--と躯央は表情を険しくする。
「まあまあ、叔父さん。確かに摂政として叔父さんは父さんや母さんみたいに成りたい気持ちはわからなくないさ。だからってそこまで頑張っては想念の海に旅立った二名が叱りつけますから」
「優央様の言う通りですなアアス。少しは肩に力を入れずに何事も鈍い方が生きる上で大切ですなアアス」
「だとしても……まあ、良い。そろそろ僕達も避難しましょうか」
「いやアアス、わしはまだまだここに残って作業を続けまアアス」
 タイガードライバーは最後まで作業を続行する覚悟でいた。それに対して躯央は次のように説得を始める。
「まさかお前は身代わりに成る気か!」
「叔父さん、落ち着いて--」
「止めないでくれ、優央。僕はタイガードライバーの無茶なお願いを止めに来た」
「わしももう十分長生きしたんだアアス、そろそろ息子の所に行かせてくれぬかアアス」
「それは良くない!」
「どうしてだアアス?」
「お前は最後の佐々木家の虎だ。なのに勝手に想念の海に旅立つ事を僕は許可致さない。僕が命じる……この場は僕が残るからお前は避難してゆけ!」
「それは……最高官としてその提案を退かせて頂きまアアス!」
 これは梃子デモ動キマセンネ--と諦観するマンメリー・レヴィルビー。
「そう言えばマンメリー」
「何デショウカ、優央様」
「マンメロは?」
「マンメロは一足早く六影県ヘ向カイマシタ」
 そうか、それなら良いや--と優し気な表情を浮かべる優央。
「いや、気を付けた方が良い」
「え、どうしてですか叔父さん?」
「前にも説明しただろう。ここを通っても何時銀河連合が襲撃するか定かではない。奴らはあらゆる方法で我々生命を苦しめる事に特化する。自分達の欲望の為なら如何なる事をしても許されると--」
「待て待てエエス。躯央様は何時も話が長いからそこで止めマアス」
 はあ、やっぱりお前が居ないと僕は--とタイガードライバーの自己犠牲精神にまだ納得がいかない躯央だった。
(そろそろ行こう。僕達はタイガードライバーの為にも、そして死んでいった生命に報いる為にも……でも、でも僕に出来るかな?)
 優央は何一つ自信を持てない生命。身体能力は烈闘や優希の物を一切受け継がず、頭脳面ではある程度は高い物の……躯央に比べると天と地の差が浮かばれる。そして話を面白くする才能も持たない。故にあらゆる面で秀でる所が一つもない為に優央は自分に胸を張れない。晴れないという事は前向きに考える事も自信を持つ事もまま成らない。
 そんな優央の苦悩と悲しみと喜び、そして怒りの物語はこうして始まる。
『--これは僕がやっと胸を張れるように成る物語。そしてその物語は余りにも悲劇の
上で成り立つ。まだほんの序章にしか過ぎないが、そのほんの序章でも僕は自分自身を
責める。
 地下空洞の問題点は叔父さんが指摘した通り。幾ら準備が為されていようとも梁の数や
仕掛けが甘いと脆く崩れやすい。そう、今回の物語ではそんな安定しない空洞にて
起こった数々の悲劇。これから新しく紹介される様々な個性豊かなる生命の出会いと別れ。
それから、彼らがどれだけ個性的なのかも存分に紹介出来れば良いけど。
 僕は昔から何一つ秀でた部分がない生命だからね。無理矢理な個性付で無理矢理
<ここが悲しみ所だぞ>なんて神様に叱られそうな表現をしてしまうかも知れない。
それだけは予め記しておくよ。
 それじゃあ--』

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR