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一兆年の夜 第六十九話 テンタウ 後篇(終)

 午後八時二十七分三十秒。
 周囲を黄金で埋め尽くされた部屋。そこである部分だけ黄金ではない事に気付いたのは--
「信じられないが、あの赤ん坊は誰よりも観察力が優れているぞ」
「各生命のだ目のだ構造だは微妙にだ違いあれどだ、少しのだ変化をだ見逃さないだという点だではだ隔たりはだなかった筈だがだ」
 何が黄金ではないのか。実は上に乗っても沈む事がない黄金の池。しかも普通なら見逃さない中央にほんの少しだけ穴が開いていた。わかりやすい箇所故に玄者は見逃しやすい。バッ戸もラディルもその穴に気付かなかった。だが、赤ん坊はそれに気付いていた。理由は恐らくバッ戸が乗った時に何かおかしな物が目に付いたのだろう。そして成者二名の目を盗んでそれを確認し、確証を得た。
(そしてだこの穴をだ今ではだ刃毀れがだ始まる鋭棒だで突き刺すとだ……開いただ下側の扉だ。まるで同じだ。迷宮の洞窟だと同じ個所にだ設置されてるだのはだ)
 そしてバッ戸は道具の入った若干糸毛が気に成る鞄を持って一番乗りで調査を始める。
「お、おい。ちょっと待ってくれよ」
「なだ、何だ?」
 その下を調査しようとするバッ戸を引き止めるのはラディル。彼は何か言いたい様子。
「早くしてくれだ。俺はだこの下にだ俺とだその方がだ元にだ戻れるだ何かがだある気がだするんだ」
「その赤ん坊は預かっておく」
「なだ、何をだ言い出すんだ。もしもの事がだあったらだその方はだ其方の時代にだ時間をだ合わせる事にだ成るんだぞだ!」
「それでもその先に銀河連合が奇襲を掛けたらどうするんだ? そうゆう訳で俺に任せろ……こいつはもしかしたら俺が面倒見れるかもしれないぞ」
「口をだ慎んでだ下さいだ、ラディルさんだ。その方はだ天同家のだ大事なだ跡取りのだ一名ですぞだ!」
「その証拠は何処にある?」
 うぬぬだ--片仮名でグー……その音も出ない一言にどうする事も出来ないバッ戸。
「わかりましただ。もしもだ俺だが俺だの時代にだ戻れる事をだ証明したらだ必ずだその方にだ対するだ口のだ利き方をだ少しだは考えて下さいだ!」
 わかったぞ、小僧--と右手だけで赤ん坊を抱えながらそれを期待して笑みを浮かべるラディルであった。
(見てろよだ。俺だがここでだ大発見してやったらだ絶対だにあの方へのだ口のだ利き方をだ是正してやるだ!)
 若さ故に少々熱く成ったバッ戸。彼はそのまま黄金の部屋とは対照的に銀が支配する階段の下へと潜ってゆく……二度と二名とは再会しない事もわからずに!

 下に潜って半の時が経とうとする中、三度の内の一つがバッ戸に襲い掛かった!
(何だ、頭がだ……耳がだ、それにだ眩暈やだ吐き気がだ!)
 まだ意識が保つ中でバッ戸は銀色に輝く階段の下より銀の波が押し寄せるのを目の当たりにする!
(この波だは、何としてもだ逃げて--)

 意識がはっきりした頃にバッ戸は気付く。階段の下を降りてゆくのはわかるが、背中越しに死の気配を感じる事を。
 うわあああだ--振り返るとそこに血の混ざった涎を垂らして見つめる兎型の姿を!
(ま、さかだ、その血はだ……うわああああだ!)
 ラディルとその赤子を食べた際に付着した物だと思考したバッ戸は階段を何弾も飛ばして降り逃げする。悔しい思い、悲しい思い、恐怖から逃れる思い、そして死んでいった者達の分まで生きる思いを混ぜ合わせながらバッ戸は何弾も飛ばしながら降りる。けれども飛ばし降りに関しては兎型の方に軍配が上がる。やがて一段崎まで距離を縮められたバッ戸はとうとう死を直感!
(このままだ……じゃあだ、あれ、あ、まだ、ただ、眩暈だ、にだ、吐き気だ、が--)
 二つ目がバッ戸に襲い掛かる--そして意識は深淵へと追いやられた!

 現実に引き戻されたバッ戸の意識は次に兎型の存在しないしかも熱が徐々に星全体を包み始めるような場所まで運んでゆく!
「アづづづづだ、死んでしまいそうだあああああだ!」
 その熱はバッ戸の体内さえ焼き尽くさんと星の力を最大限まで高め始める。
(もはやだ言葉にもだ、いやだ、この熱はだ、熱はだ、熱はだ、熱ハアアアアア--)
 やがて一瞬にして真っ白に燃え尽きる……そこでバッ戸は見た!
(何だ? 俺がだ見るだおかしな光景はだ!)
 奇しくもその光景はかつてザブリス・クロレットが見たという遥か明日の姿!

 七月九十六日午前五時七分四十三秒。
 場所は黄金で包まれた部屋。
(あれだ、ここはだ?)
 意識を取り戻したバッ戸は最初にある事に気付く。それは階段を下りていた筈の己は気付いたら隠し階段出入り口前に眠っていた事。
(そだ、そうだ。あの光景だが本当かだどうかをだ確かめる為にだラディルさんとだあの方にだ呼び掛けないとだ!)
 大声を張って呼んだ。只管に呼んだ。喉を痛めるかも知れないとわかっていても呼んだ。だが、二名は呼びかけに応えない……いや、二名はこの時代に居なかった。
(そんなだ。折角俺だがクマントだ、コケ造だ、フク五郎だ、そしてだレイデルだの命をだ使ってまでだ救出したのにだあの方だは、あの方はだ!)
 そして号泣。幾ら眠る間に水分を多く消費しようともその涙は止まらない。あらゆる悲しみがそこに詰まる。いや、それだけではない事はバッ戸に依る次の心の叫びで示される。
(あの銀河連合がだ口元にだ付着していたのはだ紛れもなくだあの方やだラディルさんのだ食べ粕だったんだ。どうして俺だは四名の命をだ使ってでもだ任務をだ果たす事さえだ出来なかったんだ。俺はだ、俺はだ!)
 悔しさ、憤り、あらゆる物が詰まった号泣。それだけに若いバッ戸は自らの熟さない部分を悔やんでも悔やみ切れない様子。
 だが、何時までも後ろ向きで居られない。帰らねば、帰って結果を報告せねば。そんな思いが次第にバットの胸中に溢れ出す。
(そうだ。もう一度だあの方がだ見つけた穴をだ……穴をだ、穴をだ。あれだ、おかしいぞだ。何処にもだその跡がだないだ!)
 一の時も確かめた。お腹の虫が叫んでも探した。だが、何処にもその穴は存在しない。
(もしやだ。ここはだ。そうだ。確かめようだ)
 バッ戸は一度来た道を辿って迷宮の洞窟の出入り口を目指してゆく。そしてここでバッ戸は気付いた。ここは紛れもない自分が居た時代。その証拠に雄略包丁による道案内は何処にも存在しない。故に一度は進む道が正しいかどうか自信を失いかける。だが、彼は諦めない。死んでいった者達の思いを背負って何処までも恐怖が迫る暗闇道を進み、一の時と四十四の分より後に出入り口へと至る階段を発見。銀河連合に食べられる覚悟の下で上ってゆき、見事にお日様が迎え入れる外へと出た!
(何て眩しいんだ。この眩しさがだ悔しいだ。この時代のだ自然豊かさがだ悔しいだ。俺だは何もだ出来ないだ俺がだ悔しいだ。この後だ、俺はだ何をだ誇りにだ学術研究にだ励んでいけばだ良いんだよだ。みんなだ死んだんだ。俺だけだ勝手にだ生きる事はだ罪深いだ。俺だけだ--)
 おおい、ここに飛蝗族の小僧が居るぞおおおう--何時までも戻って来ない救出隊を心配して送り込まれた別動隊が彼を発見した。

『--こうして俺の物語は幕を閉じた。別動隊も又、俺達と同じようにあの方を救出する
為に少数変声されたそうだ。数は俺達よりも二名多い七名。幸い、活動して三日目にして
ここまで辿り着いたらしい。
 だが、彼らの任務はそこで幕を閉じた。何故なら俺があの方の死を知らせた為。何度も
引っ叩かれたよ。それでも合理性を貫く学者らしく俺は己の意見を撤回しなかった。
それで彼らは納得したさ。
 俺は悔しかった。クマント、コケ造、フク五郎、そしてレイデルが命を懸けたのに結局
あの方を助ける事も出来なかった。もしも助ける事が出来たら俺達はあの方が本来何と
名付けられたのかを知る事が出来た。何故ならあの方は既に自分で話す事が出来る。
いや、俺の気のせいだとは思うさ。実際この耳で聞いたような気がする。あの方が
喋ってる所を。幻想話だって。じゃあ何故あの方は日記の中で信じられないような
運動神経を披露したのか理由が付くか?
 いや、止めておこう。取り返せない事を何時までも気にしていては死んでいった者達の
思いを背負う生命としては情けない。今はこの日記を読んでくれた方々に感謝の気持ちを
籠めて幕を引きたいんだ。この事実が広く知れ渡ればあの方や死んでいった仲間達の死が
少しでも報われると思ってるんだ。
 そうゆう訳で有難う、みんな。有難う、それだけしか言葉を述べられない。
 真古式神武の未来よ、永劫に!
                                  藤原バッ戸』

 ICイマジナリーセンチュリー二百六年七月九十六日午後十一時二十三分四十一秒。
















 さて、一体どれだけ明日なのか。誰にもわからない時代。
 場所は藤原大陸大中臣地方迷宮の洞窟付近。
 そこに齢十五にして七日目に成る謎の人族の少年が背中を向けて立つ。そんな彼に齢二十一にして六の月と八日目に成る菅原人族の青年は声を掛ける。
「よお、相変わらずそんな所で佇むなあ」
「気にするな、ライデン。俺様は楽しみにしてるんだ。今度こそ迷宮の謎を解いて俺様の居た時代に戻る為に」
「まだそんなこと言ってるのか? そんなにこの時代が受け入れんのか?」
「そりゃあそうだろう。だって俺様は確かに天同家の生命の筈なんだ。だが、本当に俺様はそうゆう名前だったのか?」
「死んだ爺ちゃんがそうゆう風に言ったらしいぞ。だからこそ今でもお前はそれを受け入れてるんだろう」
「そうだなあ、ライデン。俺様は受け入れてるんだな。じゃあ改めて自己紹介しようか……聞き飽きたか?」
「いや、お願いするぜ」
「ふ、そうだな。俺様の名前はレット・--」








 第六十九話 テンタウ 後篇 完

 第七十話 優央の記憶 終りの序章 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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