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一兆年の夜 第六十九話 テンタウ 後篇(二)

 午前五時四十一分十四秒。
 そこはまるで雲の上。そして物に重さを伝えるある要素が認定されない代わりに情報を繋げるある要素と光を伝える媒質である要素が認められた特殊な世界。
(何でだ俺のだ身体はだ浮かぶんだ。羽が原因か。片方がだ極端にだ短いせいでだ……いやだ、それだけにしてはだ浮かび過ぎだろだ。余りにもだ理解がだ追い付かないだ。ここはだ一体何なんだあああだ!)
 バッ戸が叫ぶのも無理はない。それだけでなく、バッ戸の均衡の宜しくない羽の広がりは余計に浮力を強める。彼は己の立つ雲の上から徐々に上昇してゆく。その速さは極めて緩い。だが、重力の世界で暮らして来たバッ戸にとっては脅威以外の何物でもない。何とかして長さの異なる羽で雲の上に立とうと高度を下げる試みをするも予想以上に強力な浮力の前に徐々に高まってゆく上昇速度。バッ戸は己の力ではどうする事も出来ない現状に憂いを感じる。
(夢ならだ醒めてくれだ。俺だはもうこんな--)

 午前六時一分十五秒。
 今度は重力が認めらる世界にバッ戸は居た。
(ここだは何処だ? 重みを感じる。けれどもだ何だかだ周りのだ雰囲気もだ吸うだ空気もだ何かだ異なるだ)
 この世界では重力が認めらると説明したのは訂正。正確には物に重さを与える要素が認められた世界。それから情報を繋げる要素が認められない世界。故にバッ戸が感じた雰囲気と吸う空気が微妙に異なるという考えは一片も誤りがない。そう、ここは光を媒介する要素が認められた世界。そして念じれば奇跡を起こす力が存在する世界。
(何だろうかだ。体内でだ何かだ凄い事がだ出来そうな気がだするだ。何となくだがだ、全身にだ何かだ変な筋がだ浮かんでくるようなだ……ひょっとするとだここはだ俺達のだ知らない何かのだ法則がだあるかも知れないだ)
 己の感じるままにバッ戸は全身を光り輝かせ、そして--

 午前七時二分十六秒。
 場所は未定。そこはバッ戸の居た世界。
 バッ戸は目を開け、現実に戻った。
「さっきまでのだ夢はだ何だ? 俺はだ一体どんな夢をだ見てたんだ?」
 余りにも実感のある二つの夢。その出来栄えは思わずバッ戸が独り言を口にする程。
 最初の夢は物に重みを与える要素が認められない世界。そこでは物は浮力に依って上に向かって浮かび、下へ向かう為には翼がないと難しい。しかも墜落すれば死ぬ条件は逆に成り、上昇で死ぬ条件に様変わりする重力の常識が存在しない世界。訂正、重力は浮力と言う名称に代わっただけ。世界の法則が違う以上はどうしても重力は一般的な下向きに掛かる力から上向きに掛かる力に変わっただけ。
 次の夢は重みを与える要素は認められる物の、今度はバッ戸達の世界では常識である情報を繋ぐ要素が認められない世界。バッ戸の世界では認められない光を媒介する要素は認められる為に奇跡と呼ばれる力を放つ事が可能。まるで体内で力が宿るその法則はどうして為せるのか? バッ戸はそれを考える事をしない。いや、考える頃には夢の内容は既に忘却の先へと跳ばされると気付くから。
(不可思議な力だなんぞだ科学的根拠をだ述べる上ではだ全くだ意味がだないだ。なのでだ今はだ光溢れるだこの場所のだ様子をだ確認する方がだあの方のだ捜索だも含めてだ何かだ実りがだあるだろうだ)
 周囲を確認して一の分も掛からない内に発見。直ぐ様、気付かれないように助走を付けて一気に飛んでみせる!
「捕まえましただ、さあだ大人しくして下さいだ!」
 捕まえたのは良いが、そこでバッ戸の目に飛び込んだのは……依りにも依って銀河連合指揮官型。喜びの表情から一転して恐怖で膠着した青く褪めた表情。後一歩と言う所で世の中の条理の無さを悔やみ始める!
(どうしてだ。どうしてだ俺はだこんな目にだ遭うんだ。別だに何だも落ち度がだあった訳だじゃないだ。ちゃんとだ任務をだ果たしてきただ。なのにだどうしてだ俺はだこんな目にだ遭うだ。神様にだちゃんとだ礼儀をだ尽くして来た筈だ。己のだ若さをだ自覚しながらもだ俺はだちゃんとだ熟してだ来た筈だ……やっぱり--)
 その時、指揮官型は何かに気付いてバットに背中を向けた。バッ戸は指揮官型が背中を向けた事に気付くのが数瞬遅かった。それがまさか気付いた時、既に背中まで槍が貫いて自分の触覚より手前まで仰向けに倒れるとは思わない事。
「なだ、なだ、なだ、なだ--」
 何だ、ここにはもう一名尋ねる生命が居たんかい--バッ戸の前に現れたのは齢三十八にして六の月と八日目に成る……人族の老年?
「えっとだ、お前はだ誰ですかだ?」
「お前とは礼を失する若造よ。まあ自己紹介するぞ。俺の名前は菅原ラデイルと言う。齢は三十八にして六の月と八日目……に成る菅原人族の生命だ」
菅原だ?」
 ああ、御存知ない顔だね--それはバッ戸にとっては聞いた事もない種族なのだからラディルという雄の話す事柄を理解する筈もない。
 いや、ラディルの話す事は菅原族だけじゃない。何とその話は本来有り得ない事だらけであった!
『--その話は何とも不可思議で一体全体が作り話の数々ではないかと疑いもした。
だが、俺があった菅原人族を自称する菅原ラディルと言う雄は空想話を口にするような
夢想家ではない。語る事全てが真実のそれに近い。真実のそれに近いからこそこれから
記す事柄は事実と食い繋がらない。
 何しろ、菅原人族と聞いて俺は彼の事を新天地で暮らす生命かと尋ねた。すると彼は
そうじゃないと返答。何と彼は藤原大陸にある天神峰にある道真県と呼ばれる場所で
暮らしてるそうな。そう、菅原族というのはそこから来てるそうだ。とてもじゃないが、
そんな土地は藤原大陸の何処にも存在しない。これは地理調査隊が自信を以って主張
出来る事だ。
 それだけじゃない。彼は自分達の土地を支配する国についてとんでもない事を
口走った。それは、な。止めよう。俺が日記に記した為に従来通りの歴史が変わって
しまったのならこれほど神々に申し訳のない事はない。依ってここから先はその
菅原ラディルとの短い付き合いの中で自分がやってしまった事についてこれから
語ろうか。それはな--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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