FC2ブログ

一兆年の夜 第六十八話 テンタウ 中篇(五)

 午前十一時零分二十三秒。
 場所は未定。
 赤子を抱えたバッ戸とレイデルは行動開始。先ず始めるのが何処に通ずるかを叩いて確認する。
「近いな。ハアハア、なあバッ戸?」
「今はだ有効活用するのがだ先だろだ?」
「お前は五月蠅いな。ハアハア、だが間違いない」
 そこから先はほぼバッ戸の発言だけで占められる。二名は目と目を合わせる会話法を駆使して意思表示を伝えてゆく。但し、瞬きが発生する事を事前に知らせる事で誤った意思表示を出さないよう細心の注意も払った。
(レイデルはだここままだ進めばだ拠点型からだ大分離れるとだ計測しただ。どれくらいだ離れるかをだ明白にだしないのはだ自己完結ばかりするだバルケミン家のだ良くない所だがだ。それでもだ代々のだバルケミンのだ生命はだ言った事のだ根拠はだ示さないけどだ、何かとだ説得されやすいだ。そこもだ又だ、藤原マス太だの一族やだ蘇我フク兵衛だの一族とだ並んでだ知能派とだ謳われる所だ)
 レイデルの言葉を信じてバッ戸は赤子を抱えて進む。後ろ足が一本ない状態でも進む事に関しては問題はない。少々重心がそれやすい状態でも飛蝗族由来の持ち前の体幹力を以て突き進む。

 午後三時七分四十四秒。
 その時刻を以って外に出る事に成功するバッ戸とレイデル。彼らを温かく迎えるお日様の日差し。その日差しを以て二名は確信する。ここは間違いなく鳳凰堂山の外。場所は地方にして大中臣。方角はまだ定かではないが、間違いなく拠点型の腹の外。
「はあああ、はあああ……まだ保てよ、俺の命!」
「だから喋るなだ、レイデルだ!」
 レイデルは限界が近い肉体を駆使してお日様の方角と風の吹く向きを測定。そこから彼はここが新乙奈子平野にして清麻呂の森と純友洞窟東北側出入り口の中間点である事を計測した。
「そうかだ、信じられない話だ」
「ハアハアア……むむ?」レイデルは足元の土の柔らかさから右手だけで何かを探り始める。「地盤が緩い……今まで誰もこれを」
「だからだ無理するなだ、レイデルだ」
 ムム……バッ戸、お前の身体三個分前に隠し出入り口を発見した--レイデルはこんな時でも好奇心の為すがままに進んでゆく。
「何をだ……何だ!」レイデルの言葉を半信半疑で後ろ足以外の足で確かめたバッ戸はそこで自動的にせり上がる野原に声を荒げて驚いた。「ウワアアアアアだ……まだこんな物がだ藤原大陸にだ在ったのかだ!」
 はは、そう、らし、ぃ、な--そろそろ辞世の句を考え始めたレイデル……彼は既に仰向けに転がって後は遺言を残すだけの身と成った!
「レ、レイデルだ!」
「単刀直入……だ。必ず、任務、を、果た、せ、よ、ぉ……」
 最後まで合理主義を貫いたレイデル。
(ああだ。この方をだ必ずやだ六影府にだ送り届けるだ。だからだ、レイデルだ……クマントだ、コケ造だ、それからだフク五郎だの所にだ向かってくれよだ)
 レイデルの亡骸は一の時を掛けて埋葬された。バッ戸は己一名だけと成った事に涙しか流せない。黙祷しても彼は溢れる涙を制御出来ない。心は悲しみで満たされた。
(俺だは必ずだお前達のだ分までだこの方をだ……まただ泣いてらっしゃるだ。悲しいだ、張り裂けそうだ。両方のだ意味でだ俺はだ辛いだ!)

 午後五時零分十一秒。
 何とか落ち着かせたバッ戸。彼は純友洞窟の方角に向けてゆっくり進み始める。すると--
(何だ……レイデルがだ見つけただ不思議なだ開くだ野原のだ先にだ光がだ漏れ出してるだ!)
 バッ戸は既に気付いていた。興味本位で任務とは無関係な事柄に足を突っ込むのは任務の成功率を下げる行動だと。それだけではない。四名の命を懸けて達成された救出劇を頭脳労働者の勝手な行動で無かった事にするのは在っては成らない。故にバッ戸は純友洞窟目指して赤子を抱えて--
「何だってだ!」バッ戸にとって信じられない事が起こった。「なだ、潜り抜けただってだ!」
 潜り抜けたのは生後一の月ほどしか経たない名も知らない烈闘と優希の第二子。その赤子は生後一の月にも拘らず四足歩行で光が漏れ出す穴を目指して猛進。バッ戸は成者として生後一の月ほどしか経たない赤子に簡単に潜り抜けられた己を恥じる。だが、恥じた所で何も取り返せないと考える為に直ぐ様、その赤子より先回りして掬い上げようと試みたが--
「何だってだ!」その赤子は何とバッ戸の上を跳躍し、しかも信じられない何かを彼に見せ付ける。「両眼がだ……赤くだ光っただってだ!」
 赤子はそのまま穴の中へと姿を消した。バッ戸もまた、そこへ突き進んでゆく……

『--これが俺にとって最も驚いた事実だよ。こうして俺は後少しと言う時にその方の
赤ん坊とは思えない身体能力と行動力に一杯食わされました。それでも俺の手際の
良くなさが招いた結果さ。どんな弁解だって通用しないのは重々承知だ。俺は辛いさ。俺
がもっとあの方を縛り付けていたらあの方は。
 そうそう、ここで中篇は終わる。この続きは最後と成る後篇で詳細に記す。あの方に
ついてはみんなが知ってる結末通り。だが、俺の見解は大きく異なる。それだけを俺は
語りたいんだ。
 だからもう少しだけこの物語に付き合ってくれ、頼む』

 ICイマジナリーセンチュリー二百五年七月九十四日午後五時二分二秒。

 第六十八話 テンタウ 中篇 完

 第六十九話 テンタウ 後篇 に続く……

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR