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一兆年の夜 第六十八話 テンタウ 中篇(四)

 七月九十三日午後十時五分零秒。
 場所は中枢。
 そこには参謀型と医者型が烈闘の遺児を盾にバッ戸とフク五郎を心臓型の口がある方角まで誘導しようとする。
「あいつらああああ。あいつらはあああああの方の命を盾にして俺達を食あああべる気だ。しかも直ううううぐに食べようとせずに余裕ぶってわざわああああざ床下に土竜型を数体も周りを動かしながらやああああろうとしてるのが腹立たしい!」
「だがだ、俺達はだもう後がだないだ。どの道だ俺達がだあの方だを救うにはだ俺かだフク五郎のだどちらかがだ隙をだ見てだあの方をだ救出しないとだいけないだ。ここは--」
 その役目は俺が担ああああう--レイデルが命を使ったのを知るが為にフク五郎は名乗り上げる!
「だと思っただ。この中でだ最もだ若いのはだ俺だ。だからこそだ、俺だはあんただを助けたかったんだ」
「だが、お前はまああああだ十代後半の坊ううううう主。その命をここで尽きいいいあ果てるのは将来の為に成あああらん!」
 わかってもだ納得がだ行くかだ--自己犠牲の精神を貫く席が一つしかない場合、必ず己の順番が来ない事に憤りを痛感するバッ戸であった。
(俺達全員がだ死んででもだ守るのはだ却ってだあの方をだ死なせてしまうだ。だからこそだ誰か一名はだ生きないといけないだ)
 バッ戸とフク五郎は互いの目を合わせて瞬間を読む。フク五郎が命を使って数体もの土竜型、そして医者型と参謀型に依る連携を少しでも崩して赤子を救出しないといけない。ここで作戦ばかりに時間を掛けるとより困難を呼び寄せる。何よりも銀河連合拠点型の体内なのだから二名にも赤子にとっても利が有るとは考えられない以上は誰か一名が命を使って合理的に任務を果たさなければいけない。その為には全員助けるという甘い考えは捨てないと救える物も救えない。果たせる物も果たせなく成る。
 運命の時間は徐々に迫る。二名の心拍数は更に高まる。命の危険に咥えて目的を果たせないという後ろ向きな可能性も彼らの脳裏に過ぎる。汗だってまだ出る。これだけ水分を使ってもやはり彼らの体内に水分は出る。その水分の量はより彼らに焦りを産ませる。焦りを産ませるという事はより後ろ向きな考えを強める。運命の時間まで後一の分……要するに現時刻は午後十時七分四十八秒。
(敗れる事をだ失うだなんてだ考えがだ支配するだ。俺はだ恐怖にだやられそうだ。恐いんだ。死にたくない感情がだ誰よりもだ大きいんだ。だからこそだ、だからこそだ……俺はだ敢えてだ恐怖をだ抱えたままだあの方をだ必ずだ救ってだ見せるだ!)
 頭脳労働者が戦士と同じように恐怖を克服して任務を達成する事は可能ではないと考えるバッ戸。そのような考えについて何かを察したのか、フク五郎はこう口にする。
「恐怖もおおおおおま又、己の武器だああああぞ!」
 有難うだ--感謝の言葉と共にバッ戸は肩後ろ足の力だけで跳躍!
 フク五郎も又、両足で跳躍。それから直ぐ様二名は羽を広げて加速し始める。しかし--
(何だ、この快くない気分にだする音はだ……参謀型のだ戦法をだ初めてだ味わったぞだ!)
 バッ戸のみならずフク五郎も参謀型の放つ音に依る攻撃に調子を狂わされる。即ち、土竜型の手が届く高さしか飛んでない証拠。その結果が、バッ戸の大事な右羽が掴まれる事に!
「えええええい、バットをおおおお放せえええええ!」
 フク五郎は自らの身体をぶつけてまでバッ戸を救出。その結果、彼は数体もの土竜型の腕に掴まれて床下に引き摺り込まれてゆく!
「うおおおおおおおう、そのまま飛んで行けえええええええい--」
 フク五郎うううううううだ--バッ戸はフク五郎に視線を向ける事なく彼の遺志を実行してゆく!
 一方のフク五郎を運ぶ土竜型は床下で彼を捕食し始めるも……予想以上に抵抗するフク五郎に依って捕食中に全身の筋肉を捩れさせてしまった。その結果、土竜型数体はバッ戸に向かうのが予定よりも遅れ、何と赤子を取り返されてしまった!
(後はだ厄介なだ指揮官型とだ……ウググだ、又だ。この音がだ俺のだ調子をだ狂わせるだ。だがだ、死ぬ気でだ飛んで行かないとだいけないだ。死んでいっただ四名だの為にもだ俺だはこの方をだ必ずだ六影府にだ運ぶんだああああだ!)
 既に限界は訪れる己の肉体。それでも命に代えても救出しないといけない任務が背中に乗せてある。限界を超えてでもバッ戸は任務を果たそうと羽を広げる。それから深さ成人体型二百ほどありそうな半径成人体型十の穴を越えようと更に風を浴びるバッ戸。ところが--
(右羽だの空気抵抗がだ……落ちるウウウウだ!)
 土竜型に掴まれた右羽はその影響で左よりも短い。それは飛行する上で大きな致命傷と化した。後成人体型八を越えるだけなのにバッ戸は赤子を背負ったままその穴に落下してゆく……











 九十四日午前九時四分五十三秒。
 場所は未定。そこは青白い光が照らす。滴りも落ちる。更には周囲を見渡しても何処にも赤黒いモノは見当たらない。
(ううううだ、俺だは死んだのかだ?)
 目を開かせて自らの生死を確認しようとするバッ戸。そこでバッ戸は己が生きてる事に気付く。それは次の通り。
(聞いた話だに依るとだ死のだ世界ではだ己自身もだわからないだ。死ぬ瞬間だの状況すらだ明確にだわからないだ。意識がだはっきりしないだせいでだ。ところがだ目の前にだあの方がだ泣いておられるだ。それからだ……左手首とだ右足首がだないだレイデルがだ居るだ。つまり--)
「念が残るようだが、ここは生者の世界だ。ハアハア、どうやら俺達はまだ死なないらしいな」
「えっとだ……お前のだ生死はだ後でだ聞くとしてだ」バッ戸は他二名の末路について伝える。「コケ造はだ勿論の事だ、フク五郎だは俺をだ庇ってだ土竜型数体にだ引き摺り込まれただ」
「俺が先なのにどいつもこいつも俺より先に想念の海に旅立ちやがって!」
「どうしてだレイデルだは生きてるだ?」
「あの時はまず左手首、そして右足首を銀河連合に食べられた。だが、その時……光が発生。それは俺以外の全てを消し飛ばした。ハアハア、予想以上に、出血は止まらん」
「俺もだ手伝うよだ。しっかりだ強くだ結ばないとだいけないだ」
 うぐぐ--激しい痛みに悶えながらもこの時も残りの余生を有効に使おうと考えるレイデル。
「ハアハアハア、後少しが、どれ程だろうかな?」
「俺だってわからんだ」
「さっきの話を信じない顔してるな?」
「いやだ、今はだこの方をだ泣き止ませる方をだ優先しようだ」
 死にかけ、なのに--どんな状況でも赤ん坊は常に己の調子を変えない……レイデルは子育ての厳しさを思い知った。
『--さて、幸い俺の持つ鞄も残ってあった。故に日記の続きを記す。御覧の通り
レイデルはこの後死んだ。どのくらい後なのかは後程。
 烈闘様と優希様の第二子であるあの方を泣き止ますのは大変だった。どれくらい大変
だったかは記さないが、兎に角こちらを休ませる事もおちおち水を飲む余裕さえ与えて
くれない程だ。それだけ子育てってのは大変だったんだな。故郷で静かに暮らす両親は
俺やバッ照、バッ藤斎達を育てるのに大変苦労した事をここで知った。それくらいに
あの方を泣き止ます事もあやす事もどれ程大変なのかを俺達は知った。
 さて、あの方を落ち着かせた後に俺達は何処に落ちたのかを議論し合った。勿論、俺は
レイデルに休むよう強く求めた。けれどもあいつは学者肌のバルケミン家の誇りを優先
して聞く耳も持たない。諦めた俺はレイデルと議論する羽目に。
 そこで判明したのが--』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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