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一兆年の夜 第六十八話 テンタウ 中篇(二)

 午後五時五十分四十九秒。
 場所は拠点型第二関門。そこには百体もの百獣型が五名を招待する。
(何なんだよだ、何なんだよだ。俺達にだどうしろとだ言うんだ!)
 バッ戸だけじゃなく、他の四名も圧倒的な数の差と一体当たりの質に顔色を青くするしかない。いや、生き残る可能性が既に一分を遥かに下回ると感じていた。
「ここは俺が交渉して少しでも足止めを期待するべきだろうな」
「いいいや、言葉もない銀河連合に会話が通じる訳があああない。ここは我が世の終わああああいりを受け入れて捕食されよう」
「捕食何か笑い事言ってる場合じゃっな!」
「それは定かとは異なるのかあ?」
 そうっだ--人族以外の生命は訛りの影響もあって相手に上手く伝えるのが難しいのがコケ造の訛りから良くわかる。
 さて、何時までも百獣型が待つとは考えられない。五名はそんな事は百も承知。そんな奴らが何故今にも五名に襲い掛からないのか。それは五名にはわかる筈もない。
 慢心? 都合が支配し切れていない? 全体体調不良? 等々……考えられる可能性を五名は挙げる。
 だが、答えが出る前に計百体は襲い掛かる!
(ここはだ一かだ八かだの脱出だあああだ!)
 バッ戸のみならず他の三名も同じく命懸けの突破を図る……他の三名も?
「どうやらわしはここマアデだあアアア!」クマントは自らに噛み付いた一体を持ち上げる。「ウググ……お前達はわしの分マアデえええ!」
「クマントおおおおおお!」
「後ろを向くなあああよ、レえええいイデルうう!」
「クマントさんはここまで良く頑張りましったあああ!」
 済まないだ、済まないいいいだ--他の三名と同じくバッ戸も涙を流して激進する!
「ウオオオオオオ、流石ニイ、流石ニィ」クマントは既に前足全て食われ、骨を晒す。「壁に凭れてる状態なら一度に相手出来る数が四体まで減らせる……それは誠じゃないナア」
 クマントは本来、外に出て来た指揮官型の前に呆気なく死ぬ筈だった。ところが奇跡が起こり、生還した。だが、それはあくまでシの運命を少しだけ先伸ばしたに過ぎない。けれどもその先延ばしが結果として四名を生かす事に成った。
 うおおおおおオウ、イザア--そう叫んでクマントは駆け抜けた!

 午後七時零分一秒。
 第二関門と第三関門の間にて。
 四名は足と翼と羽を止めて寝転ぶ。クマントに背中を預けられた四名は頭脳労働者でありながらも走り続けた。肺が何度も悲鳴を上げても心臓が何度も鼓動を遅めようと脳に働きかけて更には脳自体が四名に苦しみの信号を送り続けても自らの精神で走り続けた。だが、止めずに走れるのは精々約一の時……既に四名は走る事も出来ない。
(寝たいだ。寝てやりたいだ。でもクマントがだ背中をだ預けたんだ。寝るのはだ余計にだクマントにだ礼をだ失するだ。このままだ体をだ起こしたいだ……がだ、思うようにだ体がだ動かないだ。まるでだ全身にだ縄だで繋がれだ、縄のだ先にだ何重だにも繋がるだ岩をだ持ち上げるようにだ重たいだ。他のだ三名もだ俺とだ同じくだ石のようにだ重たい体にだ苦戦してるだ)
 バッ戸の考察通り、レイデルもフク五郎もそれからコケ造も凡そ一の時も走った影響ですっかり肉体は固まっていた。
「会話、出来る、か?」
「うううううぐ」
「おらは、出来っな」
「俺はだ、息がだ、苦しいだ」
 後少し、休もう、か--と気を紛らす気遣いを諦めるレイデル。
 後少し……レイデルにすれば会話出来るまで一の分も経たない。
 早ければ三十の秒程。ところが、クマントが逃がした内の一体がレイデルの目に飛び込む。
「オイ、俺の視線の先を見ろ」レイデルの視線は他の三名からすれば真後ろ或は左横。「銀河連合はどうしてこんなに俺達を逃がして、くれないのか?」
「ハアハアだ、本当、だ」
「疲れの、せいかああ、全んんん然、恐怖ううううあが、感じなあああいぞ」
「やっと、喋るまっで、回復したっち」
 これが極限の疲労から身に着く……明の鏡に映る水の一滴が止まるように見える瞬間--明鏡止水の極意を見つけたと思い込むレイデル。
(レイデルだの奴はだ簡単にだ心のだ静寂をだ断言するけどだ、こんな状態でだどうやってだ百獣型からだ生き延びるんだよだ!)
 それはバッ戸だけじゃなく、コケ造も考える。だが、不思議な事にフク五郎もレイデルと考えを一致させる。それは次のような一言に集約される。
「体力の限界はああああ心を澄ませる」
「そんなこと言ってると飛んで来たっぞ!」
 百獣型の最速は凡そチーター族よりも少し遅い程度。それでも全生命にとっては恐るべき速さである事に変わりはない。下手すると瞬きする暇もなく食われるであろう。
 しかし、四名の肉体は反応が早い。肉体の神秘が齎すように紙一重で回避して見せた……先程の明鏡止水発言をしたレイデルやフク五郎だけではない。
(どう成ってるだ? 俺だの身体がだ軽いだ。どうしてだこのようにだ百獣型のだ攻撃をだ回避出来るだ?)
 バッ戸も己の反応の速さに思考が付いていけない。何故このような事が起こるのか? 世界観補正の為せる業? それとも肉体の神秘?
 と、取り押さえたぞ……速くしろ--レイデルは肉体の神秘が何時までも続かない事を察知して止めを刺すよう促す。
 それに応えるように三名の肉体は一斉に百獣型の急所を的確に突いた。彼らは何も持たない。戦闘は全てクマントが担当する以上は持つ筈もない。なので生命最大の切り札である噛み付きでそれぞれの急所を噛み千切った。バッ戸は百獣型の右前脚首を、コケ造は左前脚首を、そしてフク五郎は頸動脈を!
「ハアハアハアハア、もう体が動かない」
「奇跡ではなあああい。これは決して奇跡ではなあああい」
「心の安寧化の齎す作用っす」
「心の安寧だ……そうかだ、これはだ!」バッ戸は次のように断言。「脳内にあるだ薬物作用だ!」
 きっとそれだああああぞ--フク五郎だけじゃなく、他の二名もそう断言した。
 百獣型による危機は一旦回避する事に成功。しかし、脳内の薬物作用は一度発生すると次が訪れるまで来ない。四名はそれを知る為に五の分ほど休息を摂ると直ぐにその場を後にしてゆく。
 四名は気付かない……四名が倒した筈の百獣型の瞳から銀色の気味を感じさせない光が放たれた事を!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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