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一兆年の夜 第六十七話 テンタウ 前篇(四)

 九十一日午前三時七分四十八秒。
 場所は鳳凰堂山高度成人体型六百七十六南南西側。そこでもやはり拠点型の巨大な根っこは五名の進路を阻む。
「この音はアアアア、風えええが!」
「うワアあ……ウググウ」四名を弾き飛ばして指揮官型の一撃を左眼に受けるクマント。「左側が良く視えねえ……失明とはこの事カア!」
「クマントおおおだ!」
「指揮官型……オイオっイ、詰んでるじゃねッカ!」
「クマントの左眼を抉られた今と成っては最早打ち勝つ可能性が低過ぎる」
「ちゃんと計算に入れてるナア。そうゆう訳で……話の途中ダア、指揮官型あ!」クマントは左脇腹に切り傷を受けながらも指揮官型の第一右腕を肩の所から噛み千切って見せた。「ウググ……命を懸けてお前を止めてやるゾオ!」
「クマントさん……あんたは死ぬ気っか!」
「そうダア。だから最後のリーダー命令ダア……話の途中だと言っただろうガアア!」更に第一左腕も噛み千切ったクマントはその勢いで指揮官型の甲羅のように頑丈な……「この間回しが押し切れる気もしないガア、それでも命を掛ける者の灯火はそう簡単には」首に右前足刀に依る一打を突く。「ウオウウウ、このまま貫いてヤアルううう!」
 死ぬつもりがそのまま指揮官型を仕留めたクマント。その出鱈目な強さに四名は改めて熊族は侮れないと悟る。
「ハアハアア、生き残ってしまっタア」
「時々、頭脳労働者でも算出出来ない物がある……それが感情の力」
「そんなのおおうは見なくとも明白だろうがああ」
「直ぐにだ足当てをだ!」
 染みまっせ--コケ造は安全で良薬にも成れる葉でクマントの左眼跡及び左脇腹に当てる。
「ウオオオオオオア、生きてるっテエ……感動スルウ!」
「叫ぶのは良いでっせど、吹っ飛ぶほどの動きは要らないって」
「済まない済まナアイ」
 ほほえましい状況は五名にとって一時的な心の拠所に成る。この先に待つ悲しき劇に比べるとそれは何と幸せを約束される事か。
(クマントがだ生きてるだけでもだ奇跡だ。もっと奇跡なのはだやはりあの方がだ生還してる事実をだ本当の意味でだわかってからだ。そうだ、まだ俺達のだ長い旅はだ終わらないだ。終わらないだ)
 そう考えるバッ戸。だが、拠点型の根っこは予想以上に五名の進路を止める。
 五名はそれを跨いで進むべきと主張するレイデル、コケ造と別の道を進むべきだと主張するバッ戸及びフク五郎で意見が分断。そこでクマントは双方の意見を戦わせて結論を急がせる。しかもあらゆる方向から議論を進めて無理矢理でも結論付けさせる事さえやってまで。
 その結果、バッ戸及びフク五郎の主張に説得力が増した。即ち、多数決に依り二名の主張が正しい事が証明された!
「あんまっり、長引かせると折角入手した茸だって寿命が尽きまっせ」
「その時はまた現地調達すれば良い……が安全で警戒心の薄い茸がまた発見できる可能性は低いけどな」
「まだ反論しいいいいようと企むか、レえええイデル!」
「まあまあだそこでだ終わりにだしようだ、フク五郎だ」
「でハア、遠回りするゾオ!」

 九十三日午後一時七分三十二秒。
 場所は高度成人体型九百十九八南西西側。そこには拠点型の出入り口と思われる穴がある。
「覚悟は出来たカア?」
「俺は空腹で何も考えが浮かばない」
「何と情けなあああいかあ!」
「実はおらも同じッさ」
「俺だもそうだ。何もだ考えがだ--」
「ではしばし最後の晩餐と行コオウ」
 最後の晩餐とは人生の終わりに行う食事。クマントがそれを口にする時、それは五名西の覚悟が完了する報せ。勿論、食事も摂る。だが、この先も食事が摂れる日は訪れない。そう思わないと命懸けの任務を達成出来ない。
(しっかりだ噛み締めようだ。この先もだこんなにだ美味しい御馳走をだ神様からだ戴かれる日はだ訪れないだ。しっかりだ……でもだこうゆう時にだ限ってだかなりだ噛み締めてもだ直ぐにだ終わってしまうだ。『御馳走様』だと口にだするしかだなくなるじゃないかあだ!)
 御馳走様だ--バッ戸は速めに終わらせた事を悔いながらもそう言わざるおえない。
「御馳走様っち」
「御馳走さんさ、神様」
「御おおおお馳走様だあああぞ」
「御馳走様ア……さあ」クマントの号令と共に最後の晩餐は幕を閉じた。「烈闘様と優希様の遺児を掬う任務はここから始まるゾオ!」
「「「「オオオオオオオ!」」」」
 クマントの言う通り、この物語はまだ始まる前でしかない……

『--最後の晩餐とはクマントは口にする。だが、それは俺だけは当て嵌まらない。
 いやいや、まだその話をする必要はない。だが、この文章を記し始める時は既に俺は
無事に生還し、この救出劇の真相を克明に記す。
 問題はこの余白。あんまり余白がない。どうやら俺は死ぬと思って前篇と中篇の間に
全然余白を空けてない。なので簡素簡単に汁知る記しておくぞ。えっとええっとそれは
だなまだこの物語は始まってすらない。さっきの最後の晩さん最後の晩餐を終えて
初めて物語は始まった。
 ぞろそろそそろろそろそろ余白がなくなって来ちゃあた。前篇はここまで。次から中篇が
始まる』

 ICイマジナリーセンチュリー二百五年七月九十三日午後二時零分一秒。

 第六十七話 テンタウ 前篇 完

 第六十八話 テンタウ 中篇 に続く……

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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