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一兆年の夜 第六十七話 テンタウ 前篇(二)

 午前九時四十一分十八秒。
 場所は純友洞窟見えずの迷路。そこは反対側より行くと足下が明白。だがこちらから行くと天井部はちょうど鏡のように映り、行く足を遮る迷図を作り上げる。
(厄介極まりない洞窟だなだ、いつだ来てもだ。最初にだ来ただのが遠征部隊のだ主力のだ僅かだ少ない数がだここだへ一斉にだ押し寄せるだのとすれ違った時だ。そんな所だに……って上からだ何かだ見えるだ?)
 これはバッ戸だけが見える幻の想像ではない。クマントもコケ造もフク五郎もレイデルも目撃する。それは銀河連合蝙蝠型。それは道長地方より通ると死角の関係上、危険が大きいこの洞窟の特性を活かして五名を喰らわんと急降下を開始。当然、種族の性質と元々頭脳労働専門の四名はそれがはっきりするまで体を動かすという事も出来ない。それでも四名は助かった……クマントに依る熊族特有の怪力を以て小柄で死角から滑空して襲い掛かる蝙蝠型を右前脚による迎撃一つで!
「ハアハアだ、危なかった」
「俺達はこの先もクマントの身体能力頼りだよな。大丈夫か、こんな引き籠り軍団で」
「引き籠おおおうりとは礼を失すううううるぞ、レイデえええル」
「実際そうだろうよ、フク五郎さんよお」
「馬か鹿と勘違あああいしてえええると思うなよ、レえええイデル。俺は梟族の特性でああああある夜目を活かしてお前達を助けええええられるぞおおう」
 それでも頭脳労働者特有の知識系統の弊れは起こるべくして起こるのさ--とレイデルは事実を語るが故に少々他者に苛立ちを溜める良くない性格を持つ。
 他四名はレイデルの卓越した知識と相手の頭脳がそれに及ばない場合に見せられる態度に多少なりとも苛立ちを覚えるのも無理はない。例を挙げるならバッ戸は次のように考える。
(レイデルだは人族がだ最も優れているかのようなだ言い方をだするからだ好かんだ。人族のだ何がだ優れてるんだ。天同家だがもしも飛蝗族だったらどうするだ!)
 バッ戸の場合はこのようにレイデルの人族こそ思考だと主張するかのような態度をしてると捉えて水の惑星における歴史上誰かが必ず考えているであろう種族間の劣り等しい感情を心の中で炙り出す。但し、気を付けて欲しいのはあくまで心の中ではバッ戸はこう考える。だが、口では直接出さない。そう、一名である時も必ず。
「レイデルだ。はっきり言おうだ」
「何だ、バッ戸?」
「ここでだ喧嘩してるだ場合じゃないだ。そんなのだ銀河連合のだ思う壺だ」
「その通りダアナ。はっきり言っテエ、フク五郎もレイデルも若さで先を急ぎ過ぎる所がアアル。依っテエ、ここカアラ先はわしとバッ戸、それトオコケ造だけが話す。お前達は暫くお口を塞いでオレエ!」
「そうそっう、年長者の言う事は良くお聞っき!」
 仕方ないなああああ--とやや満足しない様子ではあるフク五郎は己の訛りを利用して納得したように返事する。
 フク五郎とは対照的にレイデルは無言で会釈する事で返事の代わりを務める。
(こんな状況でだ本当にだ大丈夫かなだ? いや大丈夫だである筈がないだ。これだからだ頭でっかち同士でだ救出部隊だを組むのはだいけないだ……今更だ)
 という風にバッ戸は頭を痛める。
『--突如の蝙蝠型による襲撃以降は何の問題もなく洞窟を通る事に成功した。
 いや、礼を失した。実はこの後も問題は発生した。何と纏め役のクマントが後ろ足を
滑らせて真っ逆さまに落っこちた。あのクマントが足を滑らせたんだぞ。そんな事が
あってたまるかって俺は思ったさ。だが、落ちた先に偶然か或は奇跡的にも左前脚の小指
の爪がつっかけに引っ掛かる事で墜落死は避けられた。そのお蔭でクマントを見つけた
フク五郎の指示の下で俺達は引き揚げる事に成功する。そこまで深刻な怪我こそしてない
が、治療に時間を掛けたせいで予定よりも一の日と三の時掛けて洞窟を抜ける羽目に
成った。全く困った話だよな。
 さて、純友洞窟を抜けたのは遅延分を合わせて三の日と十一の時の後。それは時間帯に
して有り得ない事を目の当たりにしてさ』

 八十一日午後五時十九分二十三秒。
 場所は大中臣地方純友洞窟東北側出入り口。
「何なんダア、これハア!」
「もう喋って良いか?」
「良いだロオウ」
「何故お日様が真上にああああうる!」
「きっとここでの時刻はまっだ昼なっで!」
 いやだ、そんな筈だあるかだ--とバッ戸はある地点とある地点が遠過ぎる場合は夜の時刻でも朝或は昼に成るという事例を持ち出したコケ造の言葉を一瞬で反論。
「バッ戸の言う通りだ」それを補強するかのようにレイデルは語る。「大陸藤原はそれほど距離は遠くない以上は純友洞窟の西側と東北側で一気に時間帯が変わる理屈何か通るか!」
「ですよっな」
「これはきっと……やっぱりイイイイ!」フク五郎は夜目の応用を使う事でお日様に隠れて降下する複数の何かを目撃。「恐らく八体以いいいい上の銀河連合が来るぞおおおう!」
 五名は己の相応を弁えるが故にフク五郎の言葉に従って走り出す。生きる為に何処か物陰に隠れる為に走り出す。走って走って走って走って……
(やべえだ。一旦足をだ止めてだ真後ろをだ見るとだ爆発するだ地面をだ何個もだ目撃してしまうだ。依ってここはだ飛蝗族秘伝のだ飛行能力だで逃げ抜くしかないだ……ウワアアだ、引っ掛かってだ正体のだわからぬ穴だにいだ!)
 それはバッ戸だけじゃない。同じく飛行能力を持つコケ造と飛行には万全を期する筈のフク五郎もその穴に落下してゆくのであった!
「俺達は良いが」
「いヤア、良くはナアイ!」
「どうしておらまっで!」
「雑草にだ変態しただ銀河連合だの仕業かだ?」
「いいいいいあや、銀河連合なあああらば引っ掛けえええるよりも先ずは食べるのが先じゃああ!」
 五名は銀河連合の仕業であるのかそうでないのかを議論しながら奈落へと一直線に……

 午後十時二十一分四十三秒。
 場所は不明。わかるとしたら緑色の世界だという事。そこは空腹で頭が回らない筈のバッ戸達に何かを考えさせるに十分な材料。
 さて、五名は気を失ったかそうでないか? 答えはそうではない。奈落へと落下中に引っ掛けを見つけたフク五郎はそこに食料を乗せてから四名を捜索。幸い、四名共何かにしがみ付く事で墜落死を免れた。だが、落下してきた穴は既に封鎖される。もう一度穴を開ける事も考案したが、銀河連合が襲撃する危険性を考えて断念。探索に時間を費やそうという事で全会一致で決定。
 五の時も掛けて捜索活動に当たる。だが、謎の解明に至らない。それどころか問題も発生する。それが食糧の入れた袋がフク五郎の注意散漫もあって全部何処かに流してしまった。その結果が空腹。洞窟を抜ける前に食事をしていればこのような一大事は怒らなかったと誰もが頭を痛くする。
 現在はどう成るのか? 五名はここで緑溢れる世界が判明してあらゆる考えが展開される。バッ戸の場合は次の通り。
(生還者だの話ではだ大中臣地方はだ銀河連合のだ支配がだ絶対的であるがだ為にだ全面真っ赤でだ皮膚に熱がだ浸透するようなだ大地がだ形成されていたともだ聞くだ。だとすればだやっぱりだここはだ銀河連合だの展開するだ世界なのかもだ知れないだ!)
 だが、他の四名は次のような会話を繰り出す。それはバッ戸の主張する事とは異なる見解ばかり。
「もしかしたらこれはギッジェ・キシェールが生前残した自伝の通りかも知れない。まだまだ俺達は知らない種族がたくさんあるさ。その一つに粘液種族ってのが居るじゃないか」
「いやああ、それは地質学的に認める訳にはゆきませんねええ。これはきっと地下で植物が活性化してるお陰でしょうなあああ」
「ひょっとしテエ、神様がわしらを守る為にここにかくまってくれたのカア?」
「きっと銀河連合も都合が一切及ばない世界がここ何だっせ」
「いやだ、ここがだ銀河連合だの住処だじゃないのかだ?」
 それは少し異なるぞ、バッ戸--とレイデルはその主張を真っ向から切る。
「どうしてだ?」
「いや、まだ結論を急ぐ成って俺は言ってるんだよ」
「そうやって火にいいいいい油を注ぐ様な言い方をおおう!」
 お前達はまた……しばらく口を塞いでいロオ--と年長者であるクマントはレイデルとフク五郎を黙らせる!
(銀河連合じゃないだ? 四名だはそう断言するにはだ根拠がだ薄いだ……いやだ、俺もだ同じかだ。今はだ根拠とだ成りそうなだ何かをだ発見するまでだ空腹とだ格闘してみるかだ)
 この考えはバッ戸だけの物ではない。他の四名も同様に考え、そして無言で探索を進める。そうして八十二日午前零時一分三十二秒にて事態は一変する!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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