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一兆年の夜 第六十六話 烈の闘い 烈闘の最後篇(終)

 午後七時零分零秒。
 場所は真古式神武大陸藤原大中臣地方鳳凰堂山標高成人体型八百六十七。拠点型銀河連合中心部。
(ヘ、左腕の感覚はもうねえな。さっきまで激しい痛みで意識を失いそうに成ったのに……俺が変に成ったかな?)
 烈闘が失ったのは左腕だけじゃない。視力も失う。彼は真っ暗な世界で残りの五感のみで銀河連合の群れと今も戦闘を続ける。既に限界を越えた体力、骨だけで支える全身。何よりも参謀型の放つ音波に依って聴力もまともに働かない上に調子が大きく狂わされる。そんな中でも並み居る指揮官型を三体も倒すという荒行をやってのけるだけあって既に烈闘の戦闘能力は天から与えられし物とみて間違いないだろう。
 それでもここでもう限界が訪れる。自他共にそれを認める。特に烈闘は始まる前から既に死を覚悟していた上で僅かな可能性に懸けて生きる覚悟も示してきた。だが、もうここで幕を引くしかない。烈闘はそう考え始める--もうすぐ右腕も切断されようとしてる中で烈闘は長い思考を始める。
(思えば俺はここまで良く頑張った。ねーねの遺志を受け継ぐ為に力以外の術も頑張って身に付けて来た。結局誇れるほどの知識も頭の使い方も出来なかったな。出来たらこんな場所でも参謀型への対処法も思い付くのになあ。でも後悔はしないな。
 但し、心残りがある。死ぬ前に優希と優央、それに--を。三名の顔を見ずに死んでゆく事だろう。俺はあいつらの顔を見ずに死んでゆくとはな。おっと躯央も居たな。まあ躯央なら問題ないだろう、見慣れてるから今更だ。
 後はもしも俺達真古式神武が大変な事に成ったら……今更そこで考えてしまうなんてな。良くないな、これは。新天神武にせめて俺の子供達が流れ着くのを願うなんて俺は……はあ、どうかしてるぞ。今更二つが合わさった国の遺伝子がななの作り上げた新天神武に辿り着いて三つ全てが一つに集約される日を望みなんてよお。
 ……望み? そうだ、まだ俺は生きてる。生きてる限り俺はこのまま銀河連合に食われる訳にはゆくまい。五感を集中させろ。視力は残念な事に使い物に成らないのはわかる。だったら聴力を。幾ら狂わされた耳の力でも拠点型の心臓部が何処にあるかを知らせてくれる筈だ。それでもずれが生じるなら嗅覚を頼れ。銀河連合の匂いを嗅ぎ分けろ。匂いでも自信がないならば肌で感じ取れ、そして味わって識別しろ!
 五感全てを手繰り寄せて視えたその先には……死を与えし鼓動が凡そ成人体型にして俺の身長三百個分より少し先まである。分厚いなあ、五感で視た感じだとそれは。でも俺なら出来る。俺の肉体だって使ってやる。今の俺を動かすのはこの命だ!
 それじゃあ最後の仕上げと行こうか……全生命体の希望としてな!)
 烈闘の動きは加速を始める。最初の一秒間に風の速さを超え、それからコンマ二で音の速さを超えた。そして、全身をすり減らしてでも烈闘が繰り出すのは亜光速の領域。彼は肉体を捨ててまで亜光速に到達。己の思う通りの位置に突入--拠点型の心臓を突き破って見せた!
(どうだあああ--)
























 未明。
『ここは何処だ? 俺は誰なんだ?』
『--気付いたか、烈闘。ここは想念の海……君はもう直ぐ想念と一体化し、生前の記憶を全て失う』
『そうか。俺は死んだのか。じゃあ俺は、俺のやって来た事は意味ない物じゃなかったんだな』
『--残念ながら君が命を賭して敢行した物は……拠点型を全て滅ぼす事が出来なかった。奴らの中には医者型も存在した』
『そうか。治す事を専門とする銀河連合も確かに居たんだな。益々あいつらはやりにくく成るな。ところで俺の名前は何て言うんだ? 俺の記憶が全て失うって聞いたけど、その前に大切な者達と再会したい。声を聞きたい。どうだい、出来るか?』
『--無理だ、烈闘。君は彼らの声を聴いても思い出す事が不可能さ。何故なら君は既に脳も存在しない。魂だけの存在では個が記録されても生前の記憶は全て意味を為さない。それに』
『それに?』
『--後少しで君は想念の海に溶け込んでしまう。もう僕の力ではどうしようもない。御免よ、天同烈闘。僕は君達の時代に干渉出来るのはここまでだ』
『そう、か--』
 やがて天同烈闘の個は溶けてゆき、二度と現世に戻る事はない……
























『--以上が大陸藤原を我が物にしようと試みた天同烈闘の冒険譚の全て。烈闘が命を
懸けて鳳凰堂山を支配する超拠点型銀河連合を倒す試みは更に厄介な医者型銀河連合
と言う存在に依って阻まれた。やはり情報を知る事は戦を制する一番の鍵であったな。
烈闘は姉である天同メラリマが遠征するまで耳に蛸が出来るくらい聞かされたのにも
拘らず、結果を早く求め過ぎたせいでそれを怠ってしまった。
 成程、七つの罪を自覚させる清麻呂の森とは銀河連合が作り上げた森ではないな。あれ
は神々自らがそれを我々全生命に籠めた報せだったんだな。どれだけの力を持とうとも
性急は時として生命を怠けさせる。時としてその罪を少しでも理解してさえいれば烈闘は
意地を張らずに済んだ。神々は全生命体が利が得られない可能性があったとしても
全生命体に知らせたかったんだな。
 何、この遠征で何が得られたのか? その前にこの遠征に依って真古式神武はどれ程の
損失を被ったのかを記さねば成らない。損を知らずして明日は作れない。私は合理的な
生命故に良い事ばかりを記していたら同じ失敗を繰り返して進歩しない者達と同じに
成ってしまう。故に今は何を得たかではなく何を失ったかを詳細に記さなければ
いけない。
 御免、詳細ってのは真実ではなかったわ。簡潔に纏めてあげるわ。えっと損失は次の
通りよ。先ずは者的資源。これはどの世界でも共通する財産だわ。ほら、物よりも生命。
生命の命ってのは大事じゃないの。誰だって身近な生命が死ぬのは好まないじゃない。
合理的な私だってそう。それが先ず大きな損失よ。実際、実働部隊の大半が失い、
救出活動に向かった五万もの補給部隊は生き残りを利用して待ち構えていた銀河連合の
大部隊にかなりやられ、戻って来たのはたったの五分の一。一応私も始め生き残りは殆ど
救出する事に成功はしたわ。でも真古式神武としては十万以上の軍者を失ったのは大きな
痛手よ。本当に明日を危惧される程のね。
 次が物的資源。あらかたの包丁、望遠刀、鋭棒、刃を使い果たしたわ。食糧だって
どれだけ消費したのかは詳しく載せない。でも経済の混乱を招いたのは事実ね。何しろ、
戦いにはお金が必要なのは誰もがわかる事ね。特に経済が好調の時にそれを行おうと
するんだからその損失は計り知れないわ。特に食糧事情は笑って済まされる話ではない
物ね。本当に明日をどうやって生きるというの。
 最後は意欲。どの世界でも敗れたら誰だって意気消沈するわ。これを取り返すのは
並大抵の時間を掛けてしまう物ね。誰もが烈闘に対して怒りの声をぶつけたく成るわね。
でも怒りをぶつける根性はもう何処にもない。今、こうして記しながらも外を見渡すと
表情が暗い生命が良く見えてしまう。彼らは生きる希望を失った。折角、天同烈闘が
全生命体の希望に成ろうと頑張っても結果が伴わなければ余計な努力として処理
されてゆく。敗れたら何も残らないとしたら努力なんて意味ない、合理的ではないと思う
でしょう。私だってそう考えるね。それくらいこの敗北は真古式神武国民の意欲を
根こそぎ失うに等しい。
 それでも私はこう結論付ける。例え今が、身近な明日でもこの戦いは何の意味もないと
断言されても大分離れた明日。その時に成ってみんなは改め直すね。この戦いは意味が
あったと。天同烈闘を始めとした武者達は大陸藤原を我が物にしようとして決死に生き、
決死の思いで果てた。決死の思いで戦い生き残ってしまった私は決して彼らの戦いに怒り
をぶつけない。寧ろ称賛に値する。私に合理を越えた何かの光を齎した事はこうして。
 いけない。執筆中に涙を流すなんてらしくない。兎に角、コウモレ・リックマンから頼まれた
白紙への執筆作業はもう直ぐ終わりが来る。これで最後にする。最後まで読んで下さって
有難う。きっとあの世で天同烈闘も喜んでいると思う。
                     代行執筆者 ソフェラ・レオルマンより』

 ICイマジナリーセンチュリー二百五年四月六十六日午前十一時零分十七秒。

 第六十六話 烈の闘い 烈闘の最後篇 完

 第六十七話 ???? 前篇 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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