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一兆年の夜 第六十五話 烈の闘い 明かされる星の系図篇(五)

 四月二十八日午前十一時十四分四十一秒。
 場所は清麻呂の森第六の霧通称強欲の霧。そこでは冷静な感情は維持されず、常に暴れ続ける生命が後を絶たない。故に余計な行動を繰り返し、戦えば戦う程意欲を失う。
 烈闘と彼の付き者マンマロートもこの霧が発生する高濃度の酸素には一苦労。一旦深呼吸しようと何度も考えると別の何か考えが浮かび、やはり熱しやすくなる。二名はこの症状の過熱を抑えようと何度も水を浴びたり、より密集して濃度を減らすように試す。だが、酸素の供給量が膨大な場所では何の効果も得られない。
 結果としては死者の数は少なくする物のそれは最後の霧通称高慢の霧と呼ばれる場所にて二名の優秀な軍者の犠牲を生み出す事に繋がる。
『--最後の霧は最も長く、そして回り道一つ許されない最大の難所と呼ばれる。そこは
強欲の霧を越えて直ぐ傍にあり、中間地点一つもない情なき霧。尚且つ移動する為、碌
でもない。俺にとってこの難所は二度とここに立ち寄りたくないと思わせるに十分な程の
霧でもあり、出来れば清麻呂の森以外の通り道を考えさせられた霧でもある。どんな霧
なのかをこれから紹介しよう。
 それはな--』

 午後二時十一分四十三秒。
 場所は第七の霧通称高慢の霧
(高慢の意味は幻惑で正しいのか? どうして俺達は見えない銀河連合と戦うんだ!)
「来るな来ルナ、指揮官型!」
「どれ牙銀河連合出どれ牙幻なのだ?」
 これハア、何ダア--とベア造は複数の獅子型及び熊猫型に包囲され、しかも真贋の区別付く事なく雄略包丁を振る舞うしかない。
「フムフム、全生命体にい持つどうしいようもないい自信を表しいた霧の正体は果たしいて何であるかを……ウグ、まだまだ」とソフェラは左後ろ足を土竜型に深く噛まれても百の獣の頂点を自称する獅子族の誇りに掛けて素早く襟首噛み返してやる。「アグアぐうウウウウ、ダブルううだああああ!」
「ソフェラの所に本物の百獣型が一体向ってるわね!」
「足を止めて……今でエエス!」
 はいよおお--と優希は望遠刀を放ち、首に命中させる!
 ところが首に一撃受けてもソフェラに向かう足に停止という二文字がない。その百獣型はまるで使命であるかのように振り向いたばかりのソフェラの首に向けて巨大な口を開いた--
「若い者にやらせはしないとおおお!」と齢三十二にして七の月と二日目に成る藤原隼族の中年藤原ハヤッ太はソフェラを庇うように突進する。「間に合えええええでろおおう!」
 鶏量の大きな差ではそれほど突き飛ばされない獅子型。それでもよろけさせるに十分な突進力……即ち、それはハヤッ太の死を決定付ける物。ソフェラの頭部が食べられる筈が彼を庇うようにハヤッ太は丸呑みにされた!
「アアアアアア、アアアアアアアア!」ソフェラは自らの理性に歯止めがかからないとわかりつつも尚も頭脳労働者の意地を以ってハヤッ太の期待に応えるように傷口が広がるように首を噛み砕いた。「良くも良くもオオオオ!」
 ハヤッ太の命を懸けた突進に依って若き命は助かった。だが、それでもソフェラにとってはどうしようもなく悲しかった!
「御免、御免なさい」
「優希様。謝る必要はありいませんありいません」
「それでも--」
「良いいも良いいも良くないいもありいませんません。ハヤッ太さんは優先すべき事柄を行いい、そしいて私達にい道を開いいてくれましいたましいた。そこそこにい対しいてその謝罪は礼を失すると思いいませんません?」
「ソフェラの言う通りでありまああす、優希様ああん。ハヤッ太は隼の突進力ではそれほど下がってくれないとわかってもソフェラを守ったんだあああよう。だからこそここは謝罪の必要はありまああせん」
「わかっても無理だよ」
 優希--と刃を収め、既に素手で銀河連合に対応する烈闘はどうしようもない事柄で悩む優希を心配する。
「他所見せずに自分ノ事モ考えて下さい、烈闘様」
「わかってるさ。わかってても……わかってても!」次から次へと真贋の区別が付かずに奇襲で死んでゆく兵士達を見て烈闘の中で揺らぎが起こる。「涙で景色が揺らいでるんだよ!」
「全くそんな物で仙者が務まる物ですカア、烈闘様!」
「言ったな、ベア道。お前だって……ってオイ--」
 エエィ--とベア道は一撃で仕留める筈が刃毀れの激しさで真っ二つに折れた雄略包丁を見て唖然とする声を出す!
 唖然とする時、隙を見つけたと判断した相手の犬型は右前脚に仕込んであった鋭棒のような物を足の平より剥き出してベア道の喉元目掛けて仕掛ける!
「ベア道はヤラセナイゾオオオ!」間一髪の所で左肩で庇ったマンマロート。「ウググ、大丈夫カ?」
「マンマロートめ、どうして--」
「反対側の足にも仕込みがあああ!」と烈闘自ら飛んでゆき、右垂直蹴りで犬型の後ろ首を打ち込む。「フウウ、助かったな」
「ああ、全くこれくらいで……エエア」ところがベア造の腹部に予定調和の如く別の犬型に依る仕込み鋭棒のような何かが突き刺さる。「俺が、これヲオ!」
「ベア道イイイイ!」と従兄弟のベア造が駆け付けて、背後に居た犬型の首を刎ねた。「ワイが来たゾオ、喜ベエヨ!」
「ウググ、これは致命傷ダナア。来るのガア……いや、いいヤア」と左前脚で腹部の出血を抑えながら死期が近い事を悟るベア道。「どうやら俺も命を掛ける時が来たナア!」
(命を……お前も全生命体の希望に成る気だな。その傷の具合を直下してそんな……でも俺にはこいつが助かる方法が思い付く程の閃きがない。クソウ、クソオオオウ!)
 と考えるのは烈闘だけではない。左肩に傷を負ったマンマロートも従兄弟のベア造も一部始終を目撃する他の兵士達も同じである。その様子を見て勝ち誇る顔を見せるベア道。その理由は次の通り。
「勝ったナア。ここで俺がたくさんの銀河連合を倒せば誰も俺の功績を低く見る事は出来ないあああナアあ!」と叫んで彼は徒足空脚の身で真っ直ぐ銀河連合の巣へと向かう。「ウオオオオオオ、熊族こそ全種族最強である事をここに示すゾオウ!」
 ベア造は命を懸けて道を切り開いてゆく様子を見て烈闘は右手をお日様に向け、それからベア道を越えるように下す!
「別の論は言わせん。何も考えずに真っ直ぐ走れ!」それを別の言葉に変えながらも同様のように号令する烈闘。「振り返らず只、あいつと同じように突き進めえええ!」
 それでも納得がいかないと思ったら烈闘は自ら見本を示すように十数体に食われながらも最後まで抵抗するベア道の頭上を越えて突き進んで見せた!
「烈闘様が示シタンダ。だからお前達もベア道の様に振り返ラズニ進ンデ行けええええ!」
「わいだっテエ、わいだっテエ!」
 烈闘に奮起した者達に依って全軍振り返らずにベア道の頭上を越えてゆく……それを見て安心しきったように「やれば、で、き、る、ぁ、ぁ、ぃ、ァァ……」という最後の言葉を言い放ってベア道は命の灯火を消してゆく……

(ハヤッ太、そしてベア道に依って俺達はようやく清麻呂の森を越える事が出来た。ようやくもう後少しという所までやって来た。やって来たんだよ……なのにその先に待つのは--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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