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格付けの旅 青年デュアンの死闘 怒りのデュアン

 感情論……それは計算にも成らない押し付けがましい理論の事。根拠もなければ保障出来る物でもない。なのに世の中に於いて感情論が広く受け要られて来たのはどうしてなのか? 俺がそれを知ってる気がする。
 俺と対戦するのはナロウ・スペースと呼ばれる謎の男。奴が繰り出す魔法は『ワイズマン』と呼ばれる謎の男曰く天使術との事。その術には謎が多い。しかもナロウ曰く立派な魔法だと主張して憚らない。だが、審判団はナロウの失格を勧める。あれは魔法ではない。依ってナロウを魔法使いとして正式に認めれば魔導学園を根本から覆される……と。それが俺が戦うナロウの評価さ。
 ところがそんなナロウ失格の流れを鶴の一声は掻き消してしまう。その張本人こそガガープ・アイスマンその人。奴は失格にするのではなく、敢えて魔法使いの獣達の檻に放り込んでそれで優勝でもすれば魔導学園を廃校にするという条件付きで出場を許可した。どうゆう意味かは直ぐに察する。アイスマンは認めたんだよ、ナロウの術が魔法だと……だからこそそれを否定するのなら実力で否定しろとあの老人は主張する訳だ。
 そろそろ試合が始まるな。そんなナロウのルール違反を止める役をよもや俺みたいなタブーの塊が担うとはな。仕方ないか、そうゆうのは。
「覚悟してるようだな、デュアン」
「何が、ダインズ?」
「ナロウの目を見ろ……あれは事故と見せ掛けてお前を殺そうと企む目だ。覚悟しとけよ、今回は制限なしで行く」
「ルールの制限なし……つまり超級魔法も使って良いと?」
「固有魔法もだ。何せアイスマン様は望んでおられる……お前が本気を出してあの男を仕留めてくれる事をな」
 上等だ--と俺は言ってみる。
 戦いは始まった。ナロウが見せるのは良くわからない数式を展開し、それを背中に集める……背中に?
「おっと試合開始の合図はまだだよな?」
「ルール制限なしと言ったが、試合開始まで手を出さないように。試合台の上でこそ『試合』は成り立つ事を理解しろ」
 試合……別に説明不要だが、俺の考えからするとどんなに実戦に近いルールを設けようともそこが試合台の上だと判明すれば試合が成立する。例え審判が機能不全に陥ろうとも試合台の上だと証明すれば試合で片付けられる。まあ、こんな物で良いな。
「という訳でそろそろ始めてくれ、ダインズ」
「では両者開始線まで下がれ」
 俺達は開始線の上まで足を運んでゆく。
「オイ、ナロウ……術を使うんじゃないぞ。俺が審判である以上は試合開始まで目を光らせる」
「ったく厳しい餓鬼だな」
 開始線に立ってから俺は思う。試合開始まで……つまり開始したらどんな反則行為もお咎めなし? 俺にはそう聞こえるようだが……そこまで相手に神輿を担ぎたいか、アイスマンのジジイは。だったら勝ってやるぞ!
 そして、ダインズの右腕が天高く掲げられる。俺は準備を始める。最初はどんな魔法を使うかを頭の中で浮かべながらな……術合戦で駆け引きをするのはこれが初めてじゃあないしな。昨日の内にロマンツェことクライツェ・ロロリアーナとの戦いで駆け引きを覚えた。あの時はリフレクトブレイカーによるカウンターを狙ったが……奴のバトルクロスを考察してゆく内にその戦法は危険だと判断。逆に下級拡散魔法に依る一点集中に決め、それが功を奏してバトルクロスに一カ所穴を開けるだけで勝負を制した。たった一カ所……心臓を守る部位だけ開けさせて俺だけは左腕を持って行かれる形でな。つまり今の俺は左腕がまともに動かない。クライツェが繰り出した形成魔法は相手の攻撃が大きければ大きい程効力を発揮するからな。まさかあそこまで身に付けていたなんて予想外だな。まあ下級魔法に依る拡散一点集中という応用法をあいつは予想しなかったのが敗因ではあるがな。おっと一秒間に長々と考えてると奴の腕は試合台の方に下ろされた--試合開始の合図さ。
「--はああああ受けるが良い!」
「それはお前がな」俺は右手に炎系拡散魔法ファイアーボールワイドレンジシュートを放つ。「ルールの制限がない以上は加減は利かないぜ」
「--ギョああああああ……何つって」煙幕の中心部に黄金色の光が。「--出でよ、エンジェルフェザー!」
 奴は繰り出してゆく--幸い、天使術というのは『捕捉』がないのか、少し右に躱すだけでそのまま通り越したぞ!
 捕捉……それはマギに通ずる物なら必ずある必中の極意。まあ魔法では相手の位置を目或はそれ以外の五感で確認したら基本的な詠唱を済ませるだけでマナの一部は必ず相手に当たるよう追尾してくれる。魔法が躱す事が不可能な理由はそこにある。良くてキャンセラーするか或は打ち消すかのどちらかしか対処法はない。
 『天使術』ってのは少しだけわかった。だったら奴を……いや、俺が作った煙幕が却って奴の捕捉を難くしてるそうだな。全くこうゆう所でズルをするのは良くないぞ、ナロウ。
 ここだ、デュアン--な、背後に……野郎、暗器で俺の心臓を貫く気だったか!
「バアカ、俺がそんなトロイ動きで不意を喰らう訳--」
「--それは……エンジェルフェザーの定石よ!」
 ウグウウウ--至近距離より無数の光系の天使の羽を浴びた為に、内臓の数ヶ所に出血が生じ……吐血!
「如何した、デュアン・マイッダー。これで神を圧倒する気か? ワイズマンの言葉も全く以って過剰評価ではないか」
「--だな……ギガフレア!」
 な--これ以上面倒なので早々に決着を付けに掛かる俺。
 とは言っても流石は全生命体の敵なのか、ギガフレアを受けて原形を留めてやがるとはな。もっと観客を無視して魔力を乗せておくべきだったかな?
「--俺は殺せんぞ。デュアン・マイッダー。その程度で俺は--」
「--ごちゃごちゃ五月蠅い、エクスプロージョン!」奴の口を永遠に塞がせる為に上級魔法を二連射する俺。「--それからタイダルウェイブ……火と水のコラボレーションだ」
「--掛かったドアホウめ……エンジェルソーサー・トゥインロウド!」
 うぐああああ--と俺は叫ぶ……野郎め、火と水を合わせる天使術でカウンターを仕掛けやがったな!
「--あ、序に……エンジェルソーサー・タイフーン!」
 何、今度は風土地を合わせた天使術も繰り出すだとおお。何て攻撃だ……思わず、こいつを使ってしまったなあ--
「右手……まさかお前は!」
「--俺が得意とする固有魔法……リフレクトブレイカアアア!」そのままナロウを向こう側の観客席に叩き付けた。「これが俺だ……ハアハア」
「しょ、勝負有りイイイイ!」
 間一髪で奴に勝った……だが、膝を付けたく成る程までマナを消耗したな。どうやら俺は全生命体の敵とやらをまだまだ過小評価してるらしいぞ。あいつも又、底辺に位置するかも知れない。底辺でこれだけだとしたら頂点に居るのはどれ程の奴らばかりだ? 想像以上にレベルが違い過ぎる!

 準決勝進出者は俺以外ではモリスンにマリック、そしてミスター・グローバリィか。少し俺はマリックを励ましに行く。するとあいつは事もあろうに怒鳴り散らすから洒落に成らない。
「俺は大丈夫だ。決勝戦でお前を倒すまで偉大なる才能と持って生まれた物を存分に発揮してあのミスターグローバリィを倒してやる。大丈夫だ、デュアン。俺が負ける未来なんて何処にもない」
「なら良いけど、それで」次に不用意な質問をぶつける俺。「どんな方法を使うんだ?」
「どんな方法って勿論ルールに従ってグローバリィを倒すんだよ」
「ンで何処まで買収が進んでる?」
 貴様……何て質問を--マリックの顔に青筋が立つ事から見てやはり審判団の買収を以てグローバリィに勝つ気だとわかった。
「質問に答えろ、マリック」
「い、言っておくけどグローバリィを過小評価してる訳じゃない。だが、ルールの穴を突いたり、更には魔導大会でこれ以上悲惨な事が起こらないよう俺は審判団に再三上告して公平かつ公正なる試合環境へと仕上げに掛かってる所だ。何、上手く行けば決勝でお前か或はモリスンと当たる際には最高に盛り上がる決勝戦へと演出が出来るぞ!」
「俺がモリスンに敗れるなんて有り得ないな」
「それは油断してる証拠だな……なら決勝進出はモリスンだ。何故ならあいつは俺とタメを張れる魔術師……いや、魔道士一歩手前に居る男な訳さ」
「偉い評価してるようだな。お前みたいな他人を見下す男がそこまで褒めるという事は……下手するとお前は奴より遥かに足下に及ばないと認めてるんじゃないか?」
「ば、馬鹿にするなよ。モリスンは確かに強いが……俺ほどじゃない。覚えておけよ。モリスンがやられる可能性はないが、やられた場合は俺が戦力でお前を叩き潰す……良いな!」
 とマリックは去ってゆく。成程成程。だとすると油断は出来ないな。そんな風に考えながら俺は準決勝が始まる十分前まで会場を適当に散歩する。すると会場の裏口より何かを目撃。直ぐ様走って駆け付けると……
「ハアハア、デュ、アン?」
 クライツェが右脇腹に俺の拳分の風穴を開けられている事。それから彼女の顔色の青さと息遣い、そして足下に流れ出た出血量からして今更白魔法で治癒しようとも……手遅れだと!
「ロマンツェ? 若しくはクライツェ・ロロリアーナと呼べば良いか?」
「どっちでも」クライツェは両膝を付け始める。「良い、わ」
「手を貸そうか、クライツェ?」
「その、前に、私の、ルーツ、を、伝え、るわ」
 クライツェは無理して一分以内に概要を言い遺す。それから……果てた!
「……そうゆう事か。それが本当なら魔導学園は……今までの前提は……そしてミスター・グローバリィの正体は……俺達の世界がそう成ったのも……『第三次魔導戦争』の真実も……全て魔導学園の秘部に隠れる」俺の中でバラバラに置かれたピースはゆっくりとゆっくりと繋がってゆく。「『大統一理論』の為すがままに!」
 大統一理論……それは万人誰もが求める万能理論の事。これが証明されるとあらゆる専門分野は瞬く間に終わりを迎え、一つの理論の身を学問として研究する事が可能と成る夢のまた夢のような理論。
 だが、その理論は未だ完成に至らず。だが、それに比べればディーを覆う絶望的な真実は解明するに容易かった。俺が求めていた真実はこうして繋がってゆく。この茶番も孤児院もクラリッサの豹変も魔導大会も全ては……いや、その全てを明らかにする為にも俺は後二戦を勝利しないといけない。俺がデュアン・マイッダーである為にも!

 準決勝は唐突に始まった。俺の相手はモリスン・ベンデッド。野心家且つマリックに引けを取らない才能の持ち主。陽魔法のスペシャリストにして俺の見立てでは既に超級魔法の一歩手前まで来てるかも知れない。だが、この試合でのルールは上級魔法より上の魔法の使用を禁じられる。
「良いか、デュアンにモリスン。お前達は膨大なマナを保有するが故に決して使用しては成らない決まりがある。それを私自ら説明するから……絶対頭に入れておけよ。私は一回しか言わん男だ!」
 そう断言するのは準決勝及び決勝戦で主審を務める『ゴア・ストリーミング=ショウ』。
 ゴア・ストリーミング=ショウ……それは審判の歴史に於いて公正明大な審査を行うとしてあらゆる意味で信頼に於ける審判。魔法の才能こそそれ程ではないのは自他共に明白。しかし、圧力に決して屈しない判定基準は時には彼に過酷な運命を強いる事もあれば時には絶対的な信頼を勝ち得るに十分な価値として評価される。事実、準決勝及び結晶という大事な場面で彼が登用された事を考えてもどれだけ彼が信頼足り得るかを如実に表すか!
「オイ、デュアン。茶番は終わったか?」
「ああ、さっさと始めろ」
「全く生意気な奴だ……私程ではないが」
 ゴアは説明し始める。それのルールは全部で十種類。
 ルールその一……超級魔法の使用を禁じる。使用すれば反則負け。
 ルールその二……打撃戦を無効とする。それに併せて形成魔法の使用も禁じる。もしも使用すれば上記と同じように判定。
 ルールその三……零詠唱の使用を禁じる。こちらもルール一の罰則と同じ。
 ルールその四……フライングはなし。罰則はルール一と同じ。
 ルールその五……動きながら詠唱する事は認められる。但し、場外での詠唱は禁じる。勿論、詠唱中たまたま場外に吹っ飛ばされた場合も厳しく罰せられる。
 ルールその六……飛び跳ねて詠唱する事は禁じられる。ルール一と同じく行えば罰が下る。
 ルールその七……攻撃を受けたまま詠唱する事は認められる。但し、場内に限る。場外ならば違反として処罰される。
 ルールその八……魔法防御は認められるが、カウンターは禁じる。破ればルール一と同じ罰則が下る。
 ルールその九……詠唱するのは一つまで。勿論、溜める事は禁じる。罰則はルール一と同じ。
 ルールその十……相手がルールを破ったからと言って自分まで破った場合は試合はノーコンテストと成り、即座に再試合が行われる。だが、三回以上両者がルールを破った場合は先に三回ルールを破った者を正式に反則負けとする。
「成程、考えましたね」
「何か意見があるか? 後二分で開始の合図を行う」
「ええ、反則を想定したルール作りですね」
「何を当たり前の事を尋ねるんだ、モリスン?」
「いえ、気に成るでしょう。ゴアさんともあろう御方がわざわざ反則しようとする魔法使いの肩を持つなんて」
「もう直ぐ一分経過する……その答えを言おう。反則された側の反則があるとも限らないが?」
「成程、駆け引きって事で納得します」
「デュアンは……後五十五秒しかないが」
「ルールが少な過ぎる。穴を突くぜ!」
「要するに質問がないのだな……それで良いんだな?」
 ったく頭の固い野郎だ--俺はそう悪態を吐いたが、ゴアは無視する。
「時間切れだ……二人共開始線に立て!」
 俺達は開始線に立つと直ぐ様、ゴアは天井に挙げていた右手を試合台に向けて振り下ろした--試合開始の合図だ!
 先ず動き出すのはモリスン。動きながら詠唱するのが認められるこの試合。動き回るのを得意とするモリスンは必ずこちらに反則を促しに掛かる。あのルールは一聞すると反則する方が不利なように聞こえる。わざわざ反則の出し合いなんぞ先出しじゃんけんした方が遥かに不利だ。
 だが、俺はそうは思わない。
「--喰らえ……エクストリームストーム!」早速上級魔法で俺を攻撃したか……傷口に響くなあ。「その涼しい顔はやはり……マリックの言う通り並じゃないのがわかる」
「--それじゃあ俺の番だ……エクスプロージョン!」敢えて上級魔法を放って奴の魔法防御力を調査する。「フウウウ……硬い」 
 これがモリスンに抱く印象。炎系上級魔法を浴びても衣服の傷みと顔中の火傷の後から換算してモリスンは陽属性は完全に対処済みだと判明。幾ら陽属性で攻撃してもモリスンを倒すのにあと百発以上上級魔法を撃ち込まないと倒せない、と。
「--こちらの番だね……アクアドラフト!」水系中級魔法に依る緩急を入れたな。「これでもダメージは届かないか?」
「--そうゆう事だ……アイスフィールド!」陽属性には陰属性……と言う訳で俺は氷系中級魔法を放つ。「どうだい、魔術回路の組み込み一つで不利に成る……おや?」
「--忘れたか……フリーズドライ!」意趣返しか、モリスン。「私は総合部門を目指してる事を……属性体系の欠点くらい承知さ」
「--咄嗟に陰属性に切り替えたな……ライトニング!」俺は駆け引きを始める。「--防戦一方にさせる……ロックボール!」
「--全くデュアンは--」
「--俺の詠唱速度を甘く見るな、サンダーアックス!」次の魔法を放ち続けて詠唱中断を狙う俺。「--続いて……ファイアーダガー!」
「--ウグ……既に読んでいるぞ、ファイアーストーム!」読み合いでモリスンは一癖も二癖もあるな。「中々だな、四連続で下級魔法を連射するとはな」
「--其方こそ……さて、溜められんのだよな。だから--」
「--詠唱は中断させて貰う……デルタレイ!」既に結属性対応は完了してるのか。「--それと……グラビティウォール!」
「ウグ……いかん、中断しちまった」いや、敢えて中断させてやったぜ……右手を試合台に乗せて。「--仕方ない……グラビティガン」
「--地味だ……故に読みは全てに於いて重要」
「--上級魔法を仕掛けたな……アクアドラフト!」チイ、これも既に切り替えた後なのか。「--だが……ロックボール!」
「--ウグウ……間に合ったぞ、タイダルウェイブ!」
 その一撃は正に強力且つ相性の差で肉体に響くなあ。俺はついつい、場外手前まで下がらざる負えなかった。
「--ふう」余裕のモリスンは俺との間合いを詰め出す。「--次で終わらせたいが……別に動かないだけが魔法使いの仕事じゃないだろう?」
「--ああ、そうだな」敢えて詠唱をする俺。「--俺だって詠唱する、しかも背には場外の海を背負って」
「--背水の陣か……いや、誘き寄せてるのか?」気付かれたな、突然前進する足を止めたな。「--何の仕掛けか知らんが、ルールの穴を突くのは止めろ……エクスプロージョン!」
 炎系上級魔法は炸裂し、俺は激しく焼かれる……が仕込みは完了した--出でよ、アースゲイザー!
 突然、モリスンは重系上級魔法を受ける。その一撃にモリスンどころかゴアも俺が反則を犯してるのではないかと疑いの目で掛かる。だが、ゴアはその証拠を捕える事が出来ない。何せ俺は既に魔法を放った後何だから……なあ。
「ウググ……反則の芽を見つける事、叶わ、無い!」
 モリスンは俯せに倒れて……試合終了。
「不本意ながらも反則を見抜けない私の敗北だ、クソ!」
「これで残るは決勝戦のみ、かあ。何時までもルールで実力を縛られるのは我慢出来ないな」
 そう愚痴を呟いて俺は試合台から降りてゆく……

 そして俺を待つのはマリック。擦れ違い様に四言いや、五言ほど会話したかな?
「待ってろよ、デュアン。モリスン達の仇を討ちに俺は戻って来るぞ。戻って来るぞおおお!」
「気を付けろよ、マリック。ロマンツェが死んだ。グローバリィに依って殺された」
「それはどうゆう意味だ、デュアン?」
 そうゆう意味だ--奴の右肩に右手をやる俺。
「触るな、気持ち悪い。誰がてめえとスキンシップしてやる物かよ!」
「だろうな。じゃあご健闘を祈るぜ」
 待ってろよ、デュアン……俺がお手本を見せ付けてやる--何て捨て台詞を吐いてマリックは試合台へと向かってゆく。

 さて、結果だけ語ると試合が始まって僅か一分の内に決着。マリックは胸に風穴を開けて仰向けに倒れた。その様子をラキと一緒に観戦する俺。
「酷いわ。胸に風穴なんて……始めからマリックを殺す気だったのね」
「やっぱりそうか……クライツェの言った事は本当だったんだな」
 え、どうゆう事--ラキは尋ねる。
 だからこそ俺は話した。この大会の真の意図と魔導学園は何をやろうとしてるのか。そして--
「いえ、ここじゃ危険だわ。場所を変えましょ!」
 そうだな--ラキの要望に応えて俺はデュアンロールを開発してる場所まで移動する。

 決勝戦は後一時間後に始まる……その前に俺はデュアンロールの最終的な仕上げに取り掛かる。そうしてる間にラキには様々な話をした。残りはグルービィ・マクスウェルの正体、ガガープ・アイスマンの悍ましき野望、孤児院を潰した本当の狙い、それからミスター・グローバリィは何の為にクライツェを殺害し、マリックを殺そうとしたのか。そしてクラリッサがどうして死ななくちゃいけなかったのか?
「そんな……魔導学園が第三次魔導大戦を引き起こしたの?」
「『陰謀論』で片付けられそうな話だが、これは陰謀ではない。全ては魔導学園の真の支配者である--がディーを我が物にせんと仕掛けた悍ましき悪意の為せる業。この星をマギの実験場にしたんだよ!」
 陰謀論……それは頭の悪い人間が最後に頼る証拠にも成らない理論。これこれとそれそれは全てコメントランの仕業だとかユミル人の仕業とかそうゆう類は聞いた事がある筈だ。聞かないとしてもそれに似た話は聞くだろう。つまりそうゆう事だ。頭の悪い奴らは証拠やらを提示する事が出来ずに直ぐ陰謀論に飛びつく。特にイデオロギーやら宗教に嵌る奴ら程、自らの限界を示して陰謀論に呑まれてゆく。要はそうゆう事だ。だがな、どんなに陰謀が巡らそうとも世を動かすのは陰謀ではない。結局は民主主義の理論に従って大多数の無能者が結局、世の中を動かすんだよ。なので陰謀論で片付けるのははっきり言って世の中を信じられない事を自分で証明してるような物だ……止めておけよ。
「だからデュアンは昔から変な蘊蓄ばっかり口にする。それに長いのよ、話が」
「だな。でもお前だけにはこれを話した。その意味する事は一つ……魔導学園を任せたぞ、ラキ・ベルフェル!」
「デュ、デュアン。まさか本気で--を潰すの?」
「それはグローバリィを倒した後だよ。グローバリィを倒せなければ--を倒すだなんて難しい。なのでそろそろ……行くか」
「あ、待ってよ!」
「何だよ。俺はもう止まらんぞ--」
「そうじゃなくて、それここに置いて行きなさい!」
 あ--ついつい、俺は『デュアンロール』を纏う所だった。

 ラキとマリックに申し入れた後はいよいよ決勝戦の舞台に上がる。審判を務めるのはゴア。さっき説明した通り。そして対戦相手はミスター・グローバリィ。
「やあ、死ぬ覚悟は出来たかな?」
「何故クライツェを殺すんだ?」
「彼女は我々の同志に相応しくない。だからこそマクスウェル様は命じた」
「クラリッサもそしてクライツェもあいつの本当の娘達なんだぞ!」
「何、それは初耳だぞ!」
「いや、その話は知らなくて結構ですよ」
「待て、グローバリィ……私を殺すのは結果としてお前達の利に適わない事だぞ。それで良いのか?」
「冗談ですよ。それに」とうとう包帯を全て開けて……やはり。「ここはミズター・グローバリィではなく父の名である『グルービィ・マクスウェルJr』としてここに魔導学園を今日を以って終わりを告げさせますよ!」
 会場は驚きと困惑……様々な声で騒ぎ始める。それもその筈だろうな。目の前にクライツェ、およびクラリッサの異母兄である『グルービィ・マクスウェルJr』が姿を現したんだから。主審を務めるゴアだって驚きを隠せる筈がない。
「ではルールを説明する……が、お前達は本気を出したいんだろう。だからここは観客及び私を殺せば反則負けとする。それから試合台より外に出る事も反則負けに記す。但し、相手に吹っ飛ばされて外に出された場合は戦闘続行出来るまで制限時間五分以内に試合台に戻ってくれば反則負けにしないとする。他には……そうだな。場外に飛ばされた後は相手が試合台に戻るまで攻撃を禁じる。攻撃したら反則負けだ……良いな?」
「中々良いルールじゃねえか、有難うよ……ゴア」
「お前に褒められても嬉しくないぞ、デュアン」
「さあ、楽しもうじゃないか。デュアン・マイッダー」
「俺は楽しまん。母違いとはいえ、実の妹を手に掛けたお前だけはあいつの無念を背負って……必ず殺す!」
 俺は怒りの為すがままに戦い……マクスウェルJrを仕留めた!


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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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