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一兆年の夜 第十話 天同生子 始動篇(序)

 ICイマジナリーセンチュリー三十七年十月五十八日午後十時一分二秒。

 場所は秘境神武中央空間四門の間。
 一名の雄はもうすぐ死ぬ。一の時か、それに満たない時が経てば……
 一名の雄は齢四十七にして二の月になろうとした神武人族の天同四門。彼は
仰向けのまま布団の中で息絶え絶えの状態。彼の下半身より右隣には三名の雌雄
が正座していた。
 左から一名は齢十三になったばかりの少女。髪は肩まで届く長さ。顔は精確に
整い、鼻は兎族のような可愛さを持つ。口は大きく、上下唇は小指の横幅くらい
大きい。両眼は共に中庸な大きさだが、力強い光がある。両眉毛、両睫毛は均等な
配分。ただ言えることは--
「生子よ。そ、なたは、美し、い」
「ええ、美しいです!」
 生子と呼ばれる少女は自他共にどの種族が見ても美しかった!
「姉上! 自分で言うものではありませぬ」
「よい、のだ、よ読四よみし。そ、れが、その、子、のつよ、さな、の、ぐぅ」
「親父! もう喋んじゃねーぞ!」
ぜろ! いい加減に口の利き方を覚えたら--」
「注意してもそやつは覚えぬ。諦めるのも道だぞ、読四」
「はは、そうじゃ、な」
 生子、読四、零。天同四門の子供達である。残り二名も紹介する。
 生子の双子の弟である読四は髪の方は生子よりも長く、腰まで届く。
 だが、顔つきは一般の人族なら探せば見つかるくらい特徴が無く、他の部分も同様
に特徴がない。その為、常識をわきまえた少年だ。
 そして四門の末子にあたるのが、齢十にして三の月と五日目になる零だ。髪は
三名の中で最も短く、後ろ髪が顔と首の間までしかない。顔つきは年相応に幼く、
それでいて精確に整う。鼻は獅子族のように太く、力強い。唇は生子と読四の間の
大きさ。両眼は親指の横幅より一とコンマ一倍大きい。両眉毛、両睫毛は鼠族のよう
に軟弱だ。ただ言えるのは天同家の問題児だと言うことだ。
「気苦労、が、た、えん、な。わし、も、お、ま、えたちも。そし、てこの、ほ、し、も」
 四門は星全体の将来を憂いでいた。
おぞましきモノ達……ですか父上!」
「そ、うじゃせい、こ。あのも、のた、ちが、きて、も、う、ひゃく、ご、じゅう、のぐぐ」
「親父! だからもう喋るなって言ってるだろうが!」
「わし、ら、せい、めい、は、こ、れからも、くる、し、むのか?」
「生きる限り苦しみからは解放されない。
 それが神武人族として生きる私達の命運び! 命を宿められし私達!
 父上は外の世界を見たからこそ余計に苦しむのですか?」
 生子の問いに四門は--
「そう、じ、ぁ。わ、しぃ、は、もは、や、ぁ、せ、か、ぐふう」
「だからもう喋るんじゃねーよ!
 世界のことも! 生命体の未来のことも! これからの神武も! 
 俺達が何とかすりゃあいいだろ!
 たとえ再び、おぞましきモノがここに来たら俺と姉ちゃんで--」
「それじゃあおぞましきモノ達と同じだ! これ以上姉上を穢れ深くさせるべきでは
ないぞ、零!」
「結構だ、読四! 道を決めるのは結局は己自身の定め。止めても命運びまで変え
られぬ」
 生子の言葉に読四は黙すしかなかった。
「それで親父! そんなに苦しんでまで何を言いたいんだ!
 苦しいのなら無理せずに--」
「い、や、ぁ。ふふ、いいのう。すこ、ししゃ、べれる、な。
 さいごに、おま、えたち、につげ、る。こ、の、ちはお、まえ、たちの、だ。だい、で。
おえ、よ……」
 それが遺言となった。天同四門の死に三名はそれぞれの悲しみを見せた。
 天同読四は泣くのを必死で堪えはした。しかし、眉間にしわを寄せ、右唇を噛み
切った。そのせいで唇から血が垂れる。それでも彼はその行為を直そうと出来ない。
悲しみで静けて冷ややかに出来ない状態だった。
 零の方は年相応らしく、泣くじゃくった。両穴から鼻水を垂れ流し、両眼から大粒の
涙を流し続けた。
 そんな中で生子の方は。彼女は表情を変えることが出来なかった。悲しみを表現
出来なかった。だが内面は--悲しみに包まれた!
(秘境神武を、終わら……せる? どうし、て父は? 父は死に瀕してそんなのを?
 勝手すぎる! 私はどうゆう顔で父の死を悲しむ?
 いやよ! 死は、死は私を穢れさせる! 私は父にもっと長く! 長く生きて欲し
かった! 欲しかった!)
 生子は無表情のまま左眼から大粒の涙を垂れ流す。それが彼女の精一杯の
悲しみだった。
「私達はまだ悠久の夜にいる……
 朝を目指しても目指しても。
 気がついたら夜を迎えるわ。
 昼に戻ればいいのに、朝を迎えればいいのに。
 でも夜だった。泥水すすっても夜だった。
 だけど私達はわかってるわ。
 私達のいる世界は。
 悠久の夜を約束された遠すぎる過去なのよ……」
 生子は涙を流しながら歌にも聞こえない歌を歌った!
 その歌は彼女の物語の開演歌であった……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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