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一兆年の夜 第六十四話 烈の闘い 藤原大陸の謎篇(序)

 ICイマジナリーセンチュリー二百一年四月十日午後十一時七分四十八秒。

 場所は真古式神武六影府第五南地区。
 そこには銀河連合に依る流れ星の対策として巨大な洞穴が作られる。中に入ると成人体型約千まで掘り進められており、しかも万が一に備えて住居が凡そ百まで作られている。そんな洞穴の最奥にて齢六十九にして十の月と八日目に成る神武人族の老年は右肩に担いでいた齢四に成ったばかりの神武人族の子供を地面に降ろす。
「ねえじーじぃ、ここになにがあるの?」
「ここはわしが発案し、現在は成人体型凡そ千まで掘り進めた避難壕じゃ」
「ひなんごう?」
「行けないな、難しい話をしてしまうのがわしの良く無い癖じゃ。それじゃあ先に想念の海に旅立ったマルンに叱られてしまう」
「えっとだれ?」
 わしの妻じゃよ--と老年は左睫から一筋の汗を流す。
 汗を一筋流す程にどうやら子供の物覚えは良くない模様。それでも老年には何としても伝えねば成らない事があった。それは何か?
「ねえねえ、じーじぃ?」
「わかってるぞ、烈闘れっとう。お前はわしの自慢の孫じゃ」
「そうじゃなくてどうしてここにきたの?」
「オホン、まだ物心も付かないのに自慢の息子もそして出来るお嫁さんも戦い続け、烈闘を残していきおって」
「え、そうなの?」
「いや、メラリーンは躯央くおうを産んで直ぐに駆央くおうの元に行った」
「えっとまーまはとうとのところでしょ?」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて……全くメラリーンはややこしい名前を付けていきおって。あれほどややこしくないよう名付けろと言ったのに!」
「あ、おれのおとうとのことだね」
「まだ覚えてないのか、烈闘。全くお前という子は……オホン」
「のどいたいの?」
「そうじゃなくてそろそろ伝えないといけないと思ってな。皆が五月蠅い訳だからな」
「つたえるってなに?」
 老年は深呼吸を始める。それから皺だらけの両瞼を出来る限り開いて烈闘を見つめる!
「良いか、烈闘よ。お前は全生命体の希望に成れ!」
「ぜんせいめいたいの、きぼう?」
「希望とは即ちお日様じゃ」
「おひさまってあさおきたらみられるあのぴかぴか?」
「そうじゃ。お日様は何時も生命を照らす光じゃ。お日様があるから生命は胸を張れる。お日様があるから喜びが満ちる」
「わあ、すごいねえ。それでむねがしたむきのせいめいはどうやってむねをはるの?」
「純粋な質問をぶつけられるとわしは答えに窮するのう」
「きゅうする?」
「まあ、難しい言葉は大きく成ったら直ぐ覚えられるわ。兎に角、お前は全生命体の希望に成れ!」
ぜんせいめいたいのきぼう……なんだね」
「この天同十六とむが宣言する。お前は絶対にお日様の様に全生命体の希望と成るのじゃ!」
「よくわからないけど、がんばってみるよ!」
 それはこの物語の主人公天同烈闘の物語の始まりを告げる物だった……

(そう、じーじぃはこの後一の年より後に想念の海に旅立った。幸い、ねーねのメラリマが俺と躯央の親代わりを務めてくれたから孤独ではなかった。彼女に依って俺は十二の年もの間、躯央と共に鍛え上げられたな。そんな自慢のねーねは……)

 ICイマジナリーセンチュリー二百四年四月十日午後十時十五分二十三秒。

 場所は真古式神武六影府第五南地区。
 成人体型二千まで掘り進められた避難壕。しかも二千の時点で地盤沈下など諸々の問題もあって作業は終了した。だが、作業は終えても梁を入れる作業だけは継続。掘り進められなくとも地盤強化の為の工事は継続する。
 そんな場所に齢二十一にして三の月と三日目に成る神武人族の女性は齢十六に成ったばかりの少年と齢十二にして十五日目に成る少年をここまで走らせた。
「ハアハア、ねーねよお。ここは工事が終了してもう掘り進められる事もない避難壕だぞ!」
「ゼエハアゼエハア……そうですよ、姉ちゃん。どうして僕達をここまで走らせるんですか!」
「全く筋肉鍛錬しか能のない烈闘に頭脳労働しか出来ない躯央は理解しないんだからさ!」
 いや、理解するのは難しいだろうが--と烈闘はつっこむ。
「ハアハア……何時も姉ちゃんは無茶苦茶ばっかりしてみんなに迷惑をかけるのですよ。その自覚があるのですか!」
「あのねえ、二名共。頭も良くて更には強くてそして美しいあたしメラリマは何故二名をここまで連れて来たのか?」
「それは碌に運動もしない躯央を鍛える為だろ?」
「フウフウウ……いや、何も考えずに鍛錬のみを行う兄ちゃんを思考させる為でしょう?」
 そう、二名合わせて大正解--とメラリマは敢えてそうゆう答えを口にした。
「え、二名共正解?」
「ハアハアア……どうしてそれが正解、なのですか?」
「教えるわよ、烈闘に躯央……良い、二名共」
「何時でも準備は万端だぞ、ねーね」
「ハアアハアア……まだ息が荒いけど、予想は付きます」
 フウウウウウ--とメラリマは烈闘の呼吸を模倣し始める。
(これは俺やじーじぃが普段からやってる呼吸法……ねーねは出来ない筈じゃあ?)
 烈闘だけでなく、頭脳明晰な躯央もどうしてそれを模倣出来たのかを考え始める。
「ホオオオオオオウ……良い、二名共。これからあたしは大軍を引き連れて藤原大陸を我が物にするのよ!」
「「ええ!」」
 二名共その答えには単純な驚き以外の行動は出来なかった!
「何よ、二名共?」
「そりゃあ驚くだろう。ねーねがまさかとうとでさえ為せなかった大陸藤原の全開拓を宣言するってのはさあ!」
「良くないよ、姉ちゃん!」
「何が良くないって?」
「何となく躯央の言いたい事はわかった。死ぬかも知れない……だろ?」
「そうです。幾ら何でも知らなさ過ぎます。あそこには百以上もの指揮官型、そして万以上の百獣型、更には想定されるであろう数十もの拠点型および大樹型の存在……正直言って死にますよ!」
「俺も躯央と同じ意見だよ。ねーねは死にに行くとわかってるのにどうして強気な宣言を告げるんだよ!」
「へえ、臆する病に二名共罹るんだ」
「「な!」」
 己の弱さを指摘されて、言葉を失う二名。
「弱いからこそ死ぬのを恐れる。弱いからこそ挑戦も出来ない。それも烈闘と躯央に答えさせる為にここまで走らせたのよ。なのに……その弱さを自覚出来てないのね」
「「……」」
 二名は返す言葉も出せない。
(ずっとねーねの後ろを走ってきた俺達が……その生き方を引っ繰り返すような事をねーねが!)
 それはメラリマの後ろを付いて行けばその後の人生は万事上手く運ぶと信じていた烈闘の考えを粉砕する一言でもあった。それは同じく言葉を出せない躯央も同様だった。
「特に烈闘!」
「……」
「君はお祖父様の御言葉を忘れたの?」
 あ--そこでようやく言葉が出せた烈闘。
(そうだ……俺が四歳の時に言われた物がある。思い出せ、天同烈闘。俺はじーじぃに何を言われたんだ? とても当たり前で重要な言葉だよ。俺なら思い出せる筈だ、烈闘!)
 だが、昔から物覚えの良くない烈闘は直ぐに思い出せない。無論、その場に居ない上に赤子も同然だった躯央にだって記憶してる筈もない。同じくメラリマもそうである。
「あたしは知らないけど、君は周囲に言い触らしていたじゃないの。あたしも烈闘と同じように物覚えが良い方じゃないのよ。だからこそ思い出してよ」
「後少しなんだけど……でも、思い出せないんだよな。済まねえ、ねーね」
「はあ、筋肉鍛錬だけに人生を培わせるんじゃ--」
 ハアハア……全生命体の希望よ、烈君--とそこに齢十五にして九の月と九日目に成るエピクロ人族の少女が息を切らしながら駆け付けて来た。
優希ゆき……どうしてここがわかった!」
「そんな事よりも……ハアヘハア。そんな事よりも烈君は言ってたじゃないの、全生命体の希望に成るって!」
「あ、思い出した。確かに兄ちゃんはそれ言ってたよ!」
「自慢の弟なのにお前も物覚えが良くないな」と呆れつつも烈闘はメラリマを見つめてこう返した。「済まねえ、ねーね。俺はすっかり失念したよ!」
「それ合ってるか忘れたけど、烈闘はそれを目指してずっと体を鍛えてたんでしょ?」
「メラリマお姉様の言う通り、烈君は全生命体の希望を体現する仙者に成る為に最高官の仕事を務めながらも鍛錬を怠らなかったのよね。そうだよね、烈君!」
「ああ……その通りだ。俺はそれを忘れ、臆する病に罹ってねーねの後ろばかり追ってしまったんだ」
「僕も思い出しました。僕が勉強を怠らない理由を……姉ちゃんとそして兄ちゃんを支える為に政を始めとしたあらゆる知識を学び、そして真古式神武の首相に成って陰から支える為に僕は頭脳労働で真古式神武の希望に成ろうとしていた事を。なのに僕はそれすら忘れて単純に勉強ばかりで実用に活かそうとする努力を怠るなんて……何が希望だよ。そんな僕に--」
 長い、お前の話は--と説明の長い躯央の話を途中で切った烈闘。
「わかるでしょ。あたしだって全生命体の希望と成るんだよ。大丈夫だって……しっかりと藤原大陸を我が物にしてから帰って来るからね!」
「それでも無茶よ、メラリマお姉様!」
「心配しないでよ、優希ちゃん。あたしってしぶとい事が自慢だからさ。だからちゃんと……お土産を持って帰って来るから期待してね!」
「ああ、期待するよ」
「必ず……帰って来るんだ、ねーね!」
 二名はそれでもメラリマが帰らない事を直観する。
「何、涙目に成ってるの? 大丈夫よ、あたしは死なない身だからさ」
(確かにねーねの言った事は正しい。今でもねーねは俺達の中で生きる……俺の生き甲斐としてねーねは生き続けるんだから)
 それから四の年が過ぎてゆく……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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