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一兆年の夜 第六十二話 天上天下唯我独尊(九)

 午前六時七分四十八秒。
 場所はアンモ村中央地区村長邸。
 そこには齢四十六にして七日目に成るルケラオス蜊蛄族の老婆が淡水が入った石桶の中で眠っていた。彼女は村長で名をザレナス・ガニーダ……集落にずっと残り、そして十の年もの間、集落に移住する生命と五十八名もの子供達の面倒を見て来た老婆。彼女はその逞しい性格の下でテオディダクトス大陸という環境で活動し、クレッセですら降参する程の雌にまで上り詰める。そんな彼女にどうしてそこまでの原動力があったのか? それは夫ザリアンの存在が大きい。彼を待ち続ける心が彼女を強く逞しくしていったのだから。
 そして夫ザリアンは戻ってきた。それだけでも村長ザレナスは風邪という体調が芳しくない状況下でも笑顔を見せられるのだから。
「やっと帰って来たのんねに、ザリアン」と顔を出して話し掛けるザレナス。「今日はざ体調がざ芳しくないわざ」
「ただいま、ザレナス」
「話を聞いて驚いたグバア、ザレナスちゃん……いやグバア、もうわしよりも歳を上回ってさん付けするべきグバア?」
「普通に呼べば良いゾオ、爺さん」ちょうど帰って来て、甥のクレインから事情を聞いた齢四十四にして六の月と九日目に成るルケラオス熊族の老年クレッセ・グリーズは鳩尾まで伸ばした白髭を右前脚で弄りながらも気遣いの必要がないとカバオラに言ってみせる。「何せ当時の年齢こそが俺達の関係を表すのだからナア」
「クレッセ……の坊主で良いんだなグバア?」
「気遣うナアヨ。それが俺と爺さんの関係ダアロう?」
 全くお前さんは爺さんに成っても性質まで変わらんグバア--とクレッセが変わらない事に少しだけ涙を見せるカバオラ。
「あら、泣いてるのん? 生憎だけどん、私はざまだまだざ死ねないわざ。そんなのん感動話のん材料にりされたらざ困るわざ。私はざ私でに……ゴホゴホん、少しり無理してにしまったわざ」
「その調子だとん君はざまだまだざ死ねなさそうだね。だからってに無理はざ禁物だざ。しっかり寝るんだざ。村長のん仕事はざ早速僕がざ代わりにりやる」
 あら、頼もしいり--と言ってザレナスは淡水の中に潜って寝始める。
(本当に大丈夫グバア? もう随分歳を摂ったんだから明日に成って想念の海に旅立たないか心配だグバア)
 とカバオラや他の生命達は心配するが、事実ザリアンの言う通り彼女はザリアンと再会して二の年より後にこの世を去った……つまり彼女は四十八の年まで生き抜いたと断言される。
 さて、帰って来たザリアンは早速現村長の代わりに仕事を始める……が何から始めれば良いかわからない。そこで彼はザットネルとザッタに頼んで彼女が風邪で誰かに村長代理をしているかを尋ねる。すると判明したのは齢四十四にして十一の月と三日目に成るルケラオス蛙族の老年ケロッタがずっと代理として村を纏めていた事が判明。この十の年で彼の性格は変わらないが、子守りの経験が活かされ、代理正確には副村長として村の発展に貢献していた。
「--という訳ッケロ。わしはずっと苦労して来たんだッケロ。全くお前さんが二度も跳んでくれたお陰でどれだけザリスモやもう一つの名産品であるケロッタ茸生産に苦労した事かッケロ」
 何グバア、その茸はグバア--とカバオラはクレインに尋ねる。
「独特の香りを漂わせるテオディダクトス大陸で採れる茸ですヨオ。何なら保管庫に管理されてある今日食べる予定のそれを持って来ましょうカア?」
 お願いだグバア--と食べずにいられないカバオラだった。
 そしてカバオラはクレインから渡されたケロッタ茸を嗅いだだけで昏倒。
「オオイ、良いかおり過ぎて寝るのかよ……爺さんヨォ!」
(グバア、このまま人生に幕を閉じたいグバア。でもわしの生涯最後はみっともない方がいいグバア)
 さて、彼が昏倒したのは茸のせいではない。高温湯気の滝で激しい運動をした疲れが今に成って訪れたせいである。それはカバオラと共にこの時代に跳んで来たザリアンにも訪れる。
「御免、今日はざまともにり仕事出来ない、かざ、もん……」
 ザリアンもその場で昏倒してしまった。幸い、二名共命に係わる程の疲れではない為に晩中には目覚めるのだった。
 そして二名の物語は明日の夜に終わりの旅が始まる……それは未だ誰も近付けないあの石の森をカバオラとザリアン、そしてザットネルとザッタ、そしてクレッセ及びクレインらがエピクロ島から輸入された望遠刀と複数の物部刃を持参して攻めに入ったその時に!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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