FC2ブログ

一兆年の夜 第六十二話天上天下唯我独尊(四)

 ICイマジナリーセンチュリー百九十年九月四十五日午後五時零分五十一秒。

 場所は新天神武テオディダクトス大陸サッカス地方西アンモ平野カバオルの泉。
 カバオラとザリアンは逃げる。だが、特殊蜘蛛型銀河連合が繰り出す緑の粘着糸は二名を放さない! 今でははっきりとわかった。それは蜘蛛の糸であると。では何故銀河連合は二名をここに運んだのか? その謎の解明こそがこの物語に於ける二名がこの時代に飛ばされた意味を知る為である。
「何て粘着力ですかざ!」
「わしが爺さんなばかりにザリアン君をこんな目に遭わせてしまっグバア!」
 その糸は相手を捕えるだけではない。締め付けて潰す事も可能な程に粘着力が高い。二名は徐々に泡を出して絞め壊されようとしていた。
(もう無理グバア! わしではこれが限界だグバア!)
 二名の心に諦めが来ようとする時、何かの影が二名を通り過ぎる。それは特殊蜘蛛型に糸で締め付ける事を止めて、対処に向かわせた。
「ゲホゲホグバア……ってあの巨体で動きの俊敏さはグバア!」
「はあはあ、クレッセ船長!」
 お前ら十の年ぶりダナア--齢三十四にして六の月と六日目に成るルケラオス熊族の中年は無精髭を見せ付けながら特殊蜘蛛型との力勝負を制し、両前足で首を掴むと百五十度以上捻った!
 その鈍くもそして砕け散るような音がカバオルの眠る地で響き渡る時、特殊蜘蛛型は絶命した。
「ああグバア、クレッセだグバア!」
「助けにり来てくれたんですねに!」
「やっぱりお前らは生きてたんダアナ。全くここまで帰って来るのにどれだけの生命が死んでいったと思ってんダア!」
 クレッセとの再会では互いに違和を感じ取る。
(何か変だグバア。わしらの中ではそんなに大袈裟じゃないのにクレッセの坊主にしてみたらまるで数の年が経ったような言い方だグバア)
「あのうが、船長。何か変なざ感じがざするのんですがざ」
「何が変カア! こうして俺はお前達を救出する為に十の年月を費やしてしまった。後はここに帰る途中でザリオ三号は銀河連合の襲撃を受けて沈み、多くの仲間達を産みに眠らせてしまったんダア!」
「あのう、船長。あの船のん名前はざザリオ二号ですよん」
「それハァお前達の乗った船の名称。難破した船ハァザリオ三号。そうカア、まだ知らないんダナア」
 いや、何言ってるのかわかりません--とザリアンはクレッセの言う事を理解出来ない。
 無論ザリアンだけではない。カバオラもクレッセの姿も言ってる事もまるで先の話のようにしか聞こえない。
(まるでわしらだけ別世界に跳んで行ってる気がするグバア。それともクレッセの坊主だけが別世界に跳んで行ってそんな風な事を口にするのグバア?)
 とカバオラは考える。だが、考えるよりも先にクレッセが声を掛ける。
「そうカア、整理出来ないんだっタアナ。わかっタア、一から整理するから良く聞いとケエ」
 クレッセは混乱する二名の気持ちも察しないままあるがままに情報を伝えた。それはここで失踪してから二の月ほど掛けて捜索に費やした事もその後、十の年もの間、誰もこの大陸の調査に乗り出さなかった事も更にはどうして調査に乗り出さなかった事も、そして再び調査に乗り出した時にザリオ三号が鯨型の襲撃に遭い、沈んでしまった事もありがままに伝えた。勿論、船の乗員にはザリアンが想いを寄せるザレナス・ガリノダも乗ってる事も全て。
「え、え、え? じゃあザレナスさんはざ船とん共にり?」
「いや心配ナアイ。彼女は君の為に生にしがみ付いたゾオ」
 そ、そうかざ……良かった--と嬉しいようなそうでないような声を出すザリアン。
「でグバア、でも本当とは思いたくないグバア。今が十の年経ってるなんて思いたくないグバア!」
「何かのん間違いじゃないですかざ! じゃあ僕達はざ--」
 その前に先ずは泉から出て来る銀河連合をどうにかする方が先ダア--クレッセの言葉通り銀河連合は泉より湧き出るように出現。
 クレッセは囲まれる前に北アンモ山に向かう事を二名に伝える。ザリアンは素直に従うもカバオラは未だ迷いの中……直ぐに応答しない。そんな下を向いてばかりの姿勢にクレッセはカバオラの左頬に左前脚で殴りつける。
「今は考えるナア! 下を向いてる暇があるなら体を動かすんダヨオ!」
「……わかったグバア。若造に蹴られて怒りが湧き出たグバア!」
 やられたらやり返す事だけは家訓として忠実に守るカバオラはクレッセの左頬に左前脚で思いっ切り蹴った。クレッセは後ろに跳ぶ事で威力を逃してはいたがこう言い放った。
「生き延びたら仕返ししてヤルウ」
「では逃げましょうグバア、坊主が案内者グバア!」
「全く大人げないなざあざ」
 三名は囲まれる前に突破し、北アンモ山に僅か三の時以内に辿り着いた。
「ああ、君はざザリアン!」そこには齢二十八にして四日目に成るルケラオス蜊蛄族の女性に成ったザレナスが右鋏を振った。「会いたかったわざ、ザリアン!」
 ああ、ザレナスさん--二名は同時に駆けてゆき、近付く成り熱い抱擁を交わし合った。
「あッケロ、申し訳ないがおいら達が眠ってる時にして下さいッケロ」
「君はケロッタグバア。生きていたんだねえグバア」
 ええッケロ、お陰様ッケロ--齢二十七にして十一の月に成ったばかりのルケラオス蛙族の青年ケロッタ・ジネンダは元気である証明をする為にみんなの前で飛び跳ね続ける。
(嬉しいけど他の仲間は死んだんだよなグバア。やっぱり永遠に会えない事を知るのは辛いグバア)
 カバオラはまだまだ迷いを抱えていた。彼がその迷いを断ち切る時にどれ程の悲劇が待つのか? それはまだわからない……

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR