FC2ブログ

一兆年の夜 第六十一話 前門の虎、後門の狼(四)

 午前五時二十一分四十七秒。
 場所は食堂。
 ザリスは同じく雑用係の齢十九にして九日目に成るエピクロ蟹族の蟹江ニカ土、齢二十五にして八の月と二日目に成るルケラオス河馬族のカバオル・ドドンドと共に命数分手作りおにぎりを用意すると直ぐ様、食堂から出る。
「は代々の蟹族は柱か壁にさもたれないと方向を変えられないなみ。はだから先にさ行ってくれみ!」
「蟹族の困った所グバア。まあそうゆう訳だからザリスはおいら達よりも先に行ってくグバア! この通りグバア、重たく成るがおいらたちは後でやって来るからグバア」
 うわざ、重--とザリスはカバオルが右耳に引っ掛けて持つ十名分の籠を両鋏で持った時にそう呟く。
「んグバア、辛いなら半分だけおいらの所に寄越してさっさと行くのグバア! 銀河連合はそう甘い相手じゃないグバア!」
「わかった。済みません、カバオルさん」
「はなさあにみ、は困った時はさお互い様だなみ」
 お前がしゃしゃり出るグバア--と左後ろ足でニカドの第一触覚を擦るカバオル。
「は止めてさよみ。は匂いを感知出来なく成ったらさどうするんだってみ」
「おグバア、済まないなグバア」
「そ、それじゃあざ行きますよん」
 ザリスは二名よりも速く展望台へと向かう。その時、船が振動を起こす。
「なグバア、何だこの振動はグバア?」
「は何だか八本足がさそれぞれ変な感触を--」
「それはまさかグバア!」カバオルは下を見る。「何て事だ……この船は--」

 午前五時二十五分零秒。
 展望台に入ろうとしたその時、扉から大量の海水が襲い掛かる!
(な、何だざああああ!)
 ザリスは外で何が起こったのかがわからない。わかるとしたらカバオルに託されたおにぎりも含めて食堂で丹精込めて作り上げたおにぎりは一瞬の内に離れ離れと成った! その米粒一つ一つを見つめながらザリスは混乱する状況をどうにかして確認しようと試みる。
(米がざ一瞬でに……そうがじゃなくてに僕はざどうしてに海水をん浴びて全身がざ無事なんだざ? 確かざ津波ってにのんはざ先祖のん話じゃあざ……そうじゃないだろん! 僕が考えるべきは……先ずが僕のん安全をん確認する事)
 ザリスは己が安全なのかどうかを確かめる……幸いにも彼は流されてゆく破壊された木の板にもぶつかる事のない俯瞰的な場所に流されていた。それだけではなく、付近に柱を発見。しかも自力で泳いでも凭れ掛かる場所にそれがあった。それに両鋏でしっかり掴まるザリス。彼は流される柱に掴まって辺りを眺める。だが、幾ら眺めても生命一名たりとも見掛ける事はない。
(いや、分かたれた米粒をん辿ればざ希望はざある。僕はざ信じないぞん。みんなやられたなんてに!)
 ザリスは流される柱の上に立つと引っ繰り返らないように重心を調整する。重心の調整が完了すると次にやるのは米粒一つ一つを特徴的な両眼で追い掛ける。蜊蛄族は蟹族や海老族と同じように目玉が飛び出るような構造に成り、尚且つ触覚代わりにも成る。そう言った部分では触覚と視覚の両面を活用可能。故に触覚で捉え切れない誤差を視覚で補う事も視覚で捉え切れない何かを触覚で素早く補う事も可能とする。
 さて、それで器用に確認するザリスであったが。わかったのは……鯨型銀河連合が後十の秒も経たない内に顔を出し、自分を食べに掛かるという悲観的な事実。
(生き残ったのんはざ僕一名だけに。いや、そんなのん認めない! 僕はざ、僕はざ……うわああざ!)
 恐怖心の余り、重心の調整を狂わせて柱を右回りさせて放り出されてしまった。ザリスはまた両鋏で掴もうとするも……己と柱は急速に離れ離れになってゆく。慣性の法則は流れの早い海でも適用される。特にザリスの右鋏は掴もうとして逆に柱をぶつけてしまう。その反動に依り、ザリスと柱は離れてゆく。特に複数集まった米粒に絡まったザリスの鶏量は柱のそれに比べて軽く、流れは米粒と彼の総量に委ねられる形と成った。
(出た……銀河連合のん口だあざ!)
 ザリスは死を感じ取る……がその時、肉体が急速に大きく左回りするのを感じる!
(まさかざこれはざ……鯨型のん肉体でに発生した波とんこのん海域でに発生した渦がざちょうどん合わさって僕がざ食べられないようがにり流され--)
 そしてザリスの意識は飛ぶ。自然界の起こす奇跡に依って--


 未明。
 ザリスは瞳を開ける。
(ここはざ?)
 ザリスは僅かな米粒の吸着力に依ってある崖に引っ付いていた。
(うわあざ、動かすとそのままざ落っこちて--)
 おおっとグアバ、危ないグアバ--カバオルは右前脚で器用にザリスを拾い上げた!
「カバオルさん!」
「は僕もさ忘れずにみ」
 三名は無事生還していた。
(そうが、こここんそん僕達のん終着点。僕のん先祖ザリオ・ガニーダがざ発見したテオディダクトス大陸)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR