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一兆年の夜 第六十話 犬猿の仲(六)

 午後五時三十九分四十一秒。
 四名共訛りのような全身を何とか柔軟させながら再始動しようと試みる。激しく動かした肉体を再び起動させるまでには十の分でも短過ぎる。既に休みを欲してる事を誰もが理解していた。それでも彼らは行ける限り行く事を決意する。それが記録に残らなくとも記憶に残りさえすればそれで良いと考えて!
 さて、前にピタゴラとゴーリデルルの二名が左右を巡って言い争いに成った理由を解説する。二名の言い分は次の通りである。ピタゴラの主張では左に何か入ってゆく気配を目撃。そこには必ず道があると彼は強く断言。そう、ピタゴラは直感を信じたのである。
 一方のゴーリデルルは左に入ってゆくのは銀河連合であり、そこに行けば必ず銀河連合の餌食に成る。そうすると走り終える前に命が尽きてしまう。それでは幾ら足を止めずに走り抜いても意味がない。故にそこに入った影は我々生命を誘き寄せる為に銀河連合が敢えて気配を示した物。故に右へ行く方が理性的……つまり経験則を以ってゴーリデルルは強く断言した。
 ではそれに対する双方の反論とは如何な物か? ピタゴラの場合は例え銀河連合による誘き寄せだとしても彼らもまた、道を行く。ゆかない道にわざわざ誘き寄せるのは楽なのか? 感覚に従うならやはり道がある所に誘き寄せるだろう。依って左に行くのは正しいと反論した。
 一方のゴーリデルルは道がなければ作ればいいではないか。何故、わざわざ銀河連合に都合の良い道を進む? それは誠に大切な命を捨てるようではないか。道があるとしても其処が銀河連合が我々生命を食べる為に用意したのならこれほど悲しい事はない。今は走りに集中するのが自然だろう。喰らい合う為に走りをやってない。そう考えるなら喩道の無い道を進もうともそこで我々が一生懸命作って自らの道にして進むのが生命のあるべき道であろう。そう強く反論した。
 これでも両者一歩も譲らない。互いに正しいが故にどちらも堂々巡りの議論を繰り返す。そう成ると最早走る事に何の意味があるのか誰だって呆れるだろう。無論、それは四名以外がこの場に居たならば……だが、ここには新記録を樹立した四名が立つ。例え止まってからの時間が少々長く、直ぐに体を動かせない己が居たとしても走る事に諦めを求めない四名が居る。ならばそれぞれが正しいと信じた道を進めば良いと四名は判断した。
「じゃーあ僕はー信じーた左を進むーね」
「俺は右っだ」
「俺端合理主義者那乃出右だ」
 俺は左に進むぞ、チーターだけに--とチーチェンジェは左を選択した。
 それぞれの道が正しいかどうかは誰にもわからない。それは矛盾山に於ける矛と盾のどちらが強いかを論じるように結果が決まるまでは誰にも答えは見えないのだ。そうするとピタゴラとゴーリデルルの喧嘩のように正しい答えがぶつかり合う現象に。それがやがて真古式神武で勢力を減らしていったメヒイスタと呼ばれる科学集団に火を点けることに成ろうとは四名だけでなく彼らを救助しに軍団を引き連れて向かってる主審副審連合所属の四十四名にだってわからない。そう、人生と同じく答えは後世の歴史家に委ねられるのだった……
 行くぞ、俺の信じたチーター最速の名に懸けて--思い四本足を無理矢理最速まで持って行くチーチェンジェ!

 午後九時零分二秒。
 第四関門名無しの鍾乳洞最奥である奇跡の彫像前。
 それはここを突破する事に成功した古式神武最高官である天同斬弥が神々の起こした奇跡と称するほどの物。そもそもこの彫像は何時掘られたのかも定かではない。それ以前に真正神武が喰われる前にここを訪れた旅者の記録にはそれらしい話は一つもない。では誰が彫ったのか? それは誰にもわからない。わかるとしたらこの彫像の前ではあらゆる言い争いも万事解決したからである。
 はあはあ、あんだけ言い合っていたことが全部これ一つで、で--チーチェンジェは全長成人体型六十七以上もある彫像の右足下にて転がるように横に成り、目を瞑った。
 もう走れない、もう無理だ--最早記録を報告する事すらも諦めて彼は眠りに就いた。
 凡そ十二の時に近いほど走ったチーチェンジェは穢れ払い走りで偉大なる功績を残しても良かった。だが、彼が報告する前に主審副審連合が駆け付けた為に向こう側を走っていたチーチェンジェを含む四名の記録は無しに。それでも彼らの頑張りを評価して主審副審連合は記録に残した。次の年のこの週の火の曜日に参加する生命の目標として!
 さて、今回の犬猿道で明らかに成ったのは銀河連合による襲撃。真古式神武はより一層、銀河連合への対策強化に乗り出してゆく……それでもピタゴラやゴーリデルルみたいに互いの意見が正しいのに言い争いに成る場面はこれからも訪れるだろう。
 俺は次の年も走ろうかな--尚、チーチェンジェはこれ以降走る事はなかった……

 ICイマジナリーセンチュリー百八十一年三月三十七日午後九時十分零秒。

 第六十話 犬猿の仲 完

 第六十一話 前門の虎、後門の狼 に続く……

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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