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一兆年の夜 第六十話 犬猿の仲(二)

 午前十時零分一秒。
 開始から二の時が迫ろうとしてる中で次々と脱落してゆく生命を尻越しより確認するチーチェンジェ。彼は脱落する生命が皆、自分の配分に合わそうとして無茶をしてる事に少しだけ罪深く思う。
 これも穢れ払い走りだよ--誰よりも速く走る為には相手の配分を乱す事が重要であると何としても割り切ろうとしていた。
 さて、走りはチーチェンジェが独走してるように語ったが、そうではない。実はチーチェンジェはまだ本気を見せていない。持久走故に最初から本気を出すのは脱落する生命のする事。故に通常の半分ほどの速度で尚且つ心拍数を抑えられる走りで先頭を走る十八名を追っていた。そう、最初から本気を出さずに先頭を駆け抜ける者達の様子を確認しながら力を出してゆく。決して離さず、そして無理までして近付かず……それが序盤でのチーチェンジェの戦法である。短距離最速のチーター族が長距離で後塵を拝すという現状を打破する為には先ず敗北する原因よりも勝つ者の戦法を研究。そこから集約し、仲間達との意見を交わしながら自分に合った走りを追及……そしてチーチェンジェはこの戦法を選んだ。
 それにしても向こう側を行く三名は恐ろしく速いな--この選択を以てしても向こう側を行く三名に勝てるかどうかに一抹の安心出来ない思いを抱くチーチェンジェ。
 その三名を語る前にチーチェンジェのすぐ前で走る六名を紹介しよう。先ずは齢二十五にして九の月と十五日目に成るゲネス猪族にして初出場の近藤イノ段。彼の走りは最初から全力を出すという物。それで序盤での結果は見事に首位を走っていたが、銃の分より後に向こう側を走る三名に追い抜かれ、更には後で紹介する九名にも追い抜かれる。今ではほぼ横ばいで走る五名に追い抜かれまいと余計な体力を使って食い下がる始末。何れは脱落するのが目に見える状態だった。
 続いては齢十八にして九の月と十四日目に成るエピクロ鹿族にして初出場のシカッテル・ムーシ。走りはほぼ普通だが、周りに左右されやすい。周りが配分を上げると勝手に配分を上げて余計な体力を使いやすいという青さだけが残る生命。但し、加速力が高い。故に最初の十の分までは首位争いを演じた模様。
 三名目は齢三十四にして九の月と十六日目に成るエウク鳩族の鳩山ポッ照。出場するのはこれで十一回目。十一回とも完走するほどの実績を持つ。但し、十一回とも褒められた成績ではない。その為、彼は十一回目に於いて優勝を狙う。万年下位という劣名を返上する為に。
 四名目は齢四十四にして九の月と十三日目に成る蘇我梟族の三十五代目蘇我フク兵衛の兄に当たる蘇我フク寿郎。出場するのはこれで五回目。高齢でありながらも常に上位を維持し続ける飛行を実現。但し、本命はそれでは満足しない。常に優勝を求める。が故に今回も優勝目指して飛行し続ける。
 五名目は齢十九にして八の月と十六日目に成るルケラオス虎族のタイガーダイバズ・佐々木。両親の反対を振り切って初出場を果たす。彼は虎族こそ最速だと証明する為に出場。勿論、狙うは優勝。その為に彼は初めて観戦した五の年より前から走りを研究。結果、チーチェンジェと同じように序盤は心拍数を出来る限り抑えた走りで向こう側の様子を確認する戦法を選択。
 最後は齢三十にして七の月と十七日目に成る神武猫族で初出場のニャルタラノニャギルネ。数少ない雌の出場者。彼女は雌でも首位を走れることを証明したいが為に出場。だが、現実は思うようにはいかない。向こう側を走る三名が余りにも速く、尚且つ本気を出して良いかどうかを迷っていた。
 さて、空中種族も紹介されたがここで疑問が浮かぶだろう。どうして空中種族が陸上種族に負けるのか? それはこの走りにはこんな決まりがある。それは成人体型五の高さで飛行を維持し続ける事。これを少しでも適わない場合は即脱落する。それくらい穢れ払い走りの決まりは厳格である。それ故に空中種族による独走は叶わない。
 六名を紹介した所で話の続きをしよう。序盤だけ上位だったイノ段は徐々に後ろへと下がってゆく。終いにはほぼ横ばいを走る六名に話し掛ける。
「なアア、少し配分を下げてくれないカカ?」
 このおっさんは話し掛けて来た--とチーチェンジェは迷惑そうな面持ちで無言を貫く。
「はアア、はアア、なアア、俺に勝たせテテ、くれエエ」
 イノ段の四本足の動きは重くなり、やがて吸う十本の錘で繋がれるように歩き出した。そう、彼は脱落したのであった。これでチーチェンジェの前方を走るのが十七目に成った。
 初出場だから持久走と短距離走の区別がつかなかったんだな--とチーチェンジェは憐みに思った。
 さて、イノ段が脱落して十四の分の後に周りの配分に左右されやすいシカッテルも徐々に四本足が重く圧し掛かり、そこから更に二の分より後……歩き出した。
 持久走で重要なのはいかに相手に左右されないかが鍵だね--とシカッテルの脱落を尻越しに感じ、そう思うチーチェンジェ。
 シカッテルが脱落して三の分の後に副審を任されたとある飛蝗族の生命が大声でこう宣言する!
「鳩山、ポッ照、選手、成人体型、六、以上、依って、凶星、脱落だ!」
「そーお、そんなあーあ!」
 勝負に焦る程、翼に受ける風の調整を誤ったか--空中種族が優勝し辛い現状には高さ制限に厳格であるとチーチェンジェは考える。
 ポッ照が脱落して十一の分の後に……事件が起こった!
 あ、あ、あれは銀河連合うううう--土を盛り返して姿を現すは獅子型銀河連合!
 チーチェンジェを含む四名は命の危機に陥る事に。果たして四名は無事、止まらずに行けるのか!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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