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一兆年の夜 第五十九話 最強の矛と最強の盾(六)

 午前四時零分四十三秒。
 サイ銅は何を選択すれば良いかに悩む。
(バルケミンの言う通り防塞型の正体はやはりこの山だったい……じゃなくて俺は進むべきか戻るべきかい! 迫って来る銀河連合共い。そもそも加工に向かって進むのは……ああい、もう止めだい!)
 サイ銅は巨大過ぎる相手よりも真っ先に数揃える相手を選んだ。そう、来た道を戻るように角を突き出しながら突進。進んでもし、退いても死、そして進んでは掠める相手と退いては少しだけ食い下がれる相手……そのどちらを選ぶとしたら無論後者の方を選ぶ。別に珍しい光景ではない。サイ銅は別段優れた生命ではないが為にこのような当たり前の選択が採れた。
「うおおおおおおい、俺は死なんぞおおおおい!」
 物部刃及び鋭棒に良く似た刃物が全身に突き刺さろうともサイ銅は己の生存を信じて捨て身の突進を決断--死だけじゃなく生きる覚悟も身に付ける命程の前進に迷いは一片もない!
(イデエエエイ、痛過ぎるうううい! 目に刺さると何度思うかあああい! それでも俺は己の生存を信じるぞおおい!)
 それから迷いなき突進は三十の秒掛けてようやく一体目に命中。一体目は二体目を押し上げるように飛ばされた。だが、二体飛ばすだけでサイ銅の最大限の力は減速。三体目である鹿型には鶏量の差が二以上突き放しても簡単に止められた!
(ウグウウイ、ここで終わりなのかあい! たったの二体しか食い下がれんとはあい!)
 そこでようやくサイ銅は走馬灯が走った。それは防塞型を倒すまでの己の人生を振り返るように。やがて現実に還ろうとする瞬間……火山灰はサイ銅を弾埋めとした第零区域全てを包み込んだ!
(噛み千切られる前にい、熱いい、熱いイイ! もう意識がい、意識がい--)
 何もわからないままサイ銅の意識は深淵に沈んでゆく……




















 気が付くとサイ銅は目に侵入する小石に依って叫び声を上げる。「イデエエエエエエイ!」と!
 それから彼は温くも更には身動き一つとらせない火山灰が急激に醒めた土に型を填められてもがく。幸い、呼吸できるほどの穴が彼の運命を左右する。そこには雨が流れて彼を窒息させる事もあった。誰かが通る事で塞がれる事もあった。だが、奇跡なのか或は都合がちょうど全生命体に傾いたのかはわからない。それでもサイ銅は数え切れない日を過ぎながらも尚生きていた。腹の虫は必死に泣き叫ぶ。それでも呼吸不全に陥る程の水が流れる事で空腹を満たす。喉の渇きは一つもない。但し、水だけで腹の虫は満足しない。だからこそ悲鳴は収まらない。何が説明したいのか? それはサイ銅は生き埋めに成って三回目の木の曜日を迎えても生き永らえていた。
 そして……三月三十日午前二時七分十一秒。
 サイ銅が生き埋めに成った第零区域周辺は掘り起こされた!
「オオイ、生いきてるうかあ」
「あい、えい、おい、はあい……何だい?」
「今あからあ僕があ引いき揚げえて--」
「俺がやった方が早い」
 右手を伸ばすはバルケミン青年。但し、彼の腕力では鶏量が二十五を超えるサイ銅を引き揚げる事は不可能。その為、支えはスポックが行う事で迅速かつ正確な引き揚げに成功する。
「うぐぐい、体が動かない」
「そりゃあ火山灰に二の週ほど埋まったんだから暫くは寝たきりだな」
「でもおどうしてエ火あ山灰はサイ銅をお灼かあなかったあ?」
「都合がちょうど細動を味方したんだろうな……いや、この場合は銀河連合に依る都合が却ってサイ銅を生かす選択を促したんだろうな」
「どうゆう意味だあい、バルケミンよい」そこでサイ銅は横に成りながら彼の素性を尋ねる。「その前にそろそろ明かしてくれないかい、お前さんの素性をい」
「気に成るなあ、それえはあ」
「仕方ないな。話してやろうか。俺の名前はユークルデス・バルケミン」
「ユークルデス……まさか矛盾山の頂上まで行くと告げて消息を絶ったい--」
「ああ、一の年より前にな。何故俺がこうして生きてお前らの前に居るのか? 俺もちょうどお前と似たような経験を味わったからさ。そう、この矛盾山の奇蹟をな」
「矛盾ん山の奇い蹟……でえも一の年いより前にそおんな噴火ああったあ?」
「ないさ。ないけど、俺は頂上に到達する前に大量の銀河連合に依って死の危機に立たされた。その時、地盤は崩落……銀河連合共々生き埋めに成って、それから命知らず野郎共が偶然俺を発見して今もこうして無事を証明出来るんだよ」
「地盤ん……まあさか第一い区域いで見いたああの湖いは--」
「ああ、それが俺の埋まっていた場所なのさ……まさかもう湖と化していたか」
「湖に成る程の速さで……そうかい、この雨はその為にあったかい!」
「ところで矛盾山あと前えに語あった矛おと盾えの証う明はどう関ん係するう?」
「それが今回の銀河連合を守り、攻めの材料だった都合に関する事柄だよ。世界観補正とは時として銀河連合でも辻褄の合わない現象を引き起こす事が判明した。それが先程の火山灰で灼かれる筈だったサイ銅が無事でいる事や俺のように脆い地盤に足を突っ込んで危ない高さから落ちたのに無事だった事もそうだ。世界観補正とはまだまだ俺達には理解し難い何かがあるんだろうな。勿論、銀河連合共もそれに関してはまだまだ何も知らない。全く何処までの神々は俺達をお守りしてるなあ」
「とおころでえ防塞い型銀河あ連合うとは何なんんだあ?」
 銀河連合が繰り出す世界観補正の矛と盾のことだい--と話の最後を締めくくったのは今回の主人公である藤原サイ銅だった!

 ICイマジナリーセンチュリー百八十年三月午前四時五分五秒。

 第五十九話 最強の矛と最強の盾 完

 第六十話  犬猿の仲 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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