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一兆年の夜 第五十九話 最強の矛と最強の盾(二)

 三月十三日午前一時二分三秒。
 場所は新天神武東物部大陸ピタゴラス地方。タレス山の直ぐ西に出来た巨大な新山は名を矛盾山を呼ぶ。
 そこに藤原サイ銅は太ましい四本足で前に立つ。彼は何を思って木々が生い茂るには余りにも草の多い新山を前にしてこんな思索に耽る。
(もう直ぐ三十にも成りそうだからなあい。せめて雌を一名くらいは抱いておきたかったなあい。雌が好ましくない俺がこんな弱気に成る程だからなあい。鍛錬ばかりの毎日だけかと思ったら気が付けば部屋で横に成る生活もやっていたんだなあい。
 何が言いたいかあい? 恐がってるい。犀族の雄として筋肉を付けてきた俺がいざ実戦の場に立たされるとあっては恐くて当然だあい。この震えを止めるには雌を抱けば良いと誰かが言ってたあい。だが俺はそれをほとんど怠ったあい。震えが全然止められなあい)
 そんなサイ銅の背後に齢二十九にして八の月と二十九日目に成る鬼ヶ島亀族の青年がそこで立ち止まり、溜め込んでいた疲労の息を吐き出す。それを聞いて振り返るサイ銅。
「五月蠅い! 静かに……お前は出家した筈のスポック・スポデューンじゃないかい!」
「おうやあ、これえはあ藤原あ君んじゃなあいかあい」
「山で生活してる筈のお前がどうして二十七の年より前に出来た新山の前に現れたんだい!」
「そりゃあ、ああれだあ。防壁い型銀河あ連合うを倒おす為えに来たんだあ」
 ってよく見たら甲羅を覆う網目は何だあい--とそれを尋ねるサイ銅。
「これえは雄う略大陸うで新あたに作らあれたあ鉄縄だあよ」
「鉄縄い?」
「今かあら説明するねえ」
 亀訛りは余りにもゆっくりし過ぎる為に代わって説明するとこうゆう事である。鉄縄とは口の字の鉄をそれぞれ引っ掛けて幾重にもして縄のように作り上げた物。頑丈さでは通常の縄の比ではない。其れだけではない。これを網目のように何個も引っ掛け、服に仕上げる事で包丁や物部刃のような物の威力を分散する帷子にする事も可能。スポックが甲羅に覆うのは亀族専用の帷子。亀族特有の甲羅の頑丈さに加えてそれを後押しする鉄縄の帷子は正に盾と呼ぶに相応しい。
「要するに頑丈な銀河連合には頑丈で挑むのが良い、とおい?」
「その通りだあよ。おおや、君はあ角を鋭おくする事しいか頭にいなあいの?」
「防御だけで何も救えない!」
「攻う撃だあけじゃあ身いは守おれえない」
「言ったなあい、スポックい!」
「そおっちこそ」
 言い合いは一の時も続き、やがては両者ともそこで……寝た。何故か? 実は彼らは丸二の日も寝てなかった。
(ああい、寝てる場合じゃなあい。さっさとい、起きい、てい……)
 彼らはこのまま矛盾山に潜む防塞型に食べられるのか? 否、彼らの前に齢二十歳に成ったばかりの仁徳人族の青年が筋肉のついてない肉体で何とか鶏量にして四十を超す二名を運んでゆく。
「こいつらは銀河連合に挑む前に痩せろよ! 重すぎだろ、全体的に!」

 十四日午前零時三分二秒。
 場所は矛盾山南出入り口付近に位置する仮設民家。
 二名は同時に起き上がる。
「ここは……まさか想念の--」
「現実だ、お二名さん」
「おんやあ? とおころでえ君はあ?」
「自己紹介か、何で?」
「しないとわからんだろおい、人族なのはわかるがあい」
「俺はしないからな」
「俺の一名称を使うんじゃなあい」
「良いだろ、それくらいは--」
「まあまああ、そこまあでにして。ええ、とお。僕はあ鬼ヶ島亀族だあったあ、雄略大陸の白髪しらかみ山でえ修業をおするうスポック・スポデューンでえす」
「俺はエピクロ犀族の藤原サイ銅さい。苗字を説明すると元藤原犀族さい」
「俺はバルケミン……それだけだ」
「だから俺の一名称を使うなあい!」
「まあまああ、そこまあでにしてえ」
 バルケミンと呼ばれる青年はこんな場所に仮設民家を建てて何をするのか? それについては本名の口から告げられる。
「研究さ、牙と盾のどちらが優れるか……の」
「研究い?」
「って事はあ既に矛盾山を何名も登ってるってえ訳?」
「スポックさんは頭が宜しいようで」
「そんな研究してる暇があるなら少しでも多く銀河連合を倒して全生命体に貢献しろよおい!」
「あのなあ、そっちの猪突猛進--」
「五月蠅い。俺は犀族の雄だあい!」
「猪族も犀族とほとんど変わらん」
「さっきの質問の答えを言えい!」
「全あくサイい銅は昔いからせえっかあちなんだから」
 お前は亀族特有ののんびりし過ぎじゃあい--とサイ銅にはそれなりの返し言葉を有する。
「ああ、質問の答えだったな。えっと何の質問?」
「もう一回言うぞい。牙と盾の研究をしてる暇があるんだったら少しでも多く銀河連合を倒して全生命体に貢献しろおい、となあい!」
「これも貢献に繋がるのがわからんのか、犀族のおっさん」
「まだ二十九歳じゃあい!」
「それでもおっさんだ」
「まあまああ、サあイ銅。そおれで研ん究はあ捗あってるのお?」
 まだまだだね--とバルケミンと呼ばれる青年は現状を告白する。
(つまりどうゆう事だあい? もしかしてあの銀河連合を倒すにはそれだけじゃあ良くないと言いたいのかあい!)
 とサイ銅は敢えて口にしない。何故ならまた話が進まないと知ってて黙るのであった。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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