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一兆年の夜 第五十六話 再誕の火 再誕の灯火(八)

 六十日午前三時十一分一秒。
 拠点型銀河連合の塞翁に辿り着く一名の仙者。彼の肉体は既に限界を迎えようとしていた。
(へへへ、昨日の指揮官型との戦いで六の時以上は掛かったかな? 調子に乗って言ってもいざ刃が居られると本当に俺は死ぬかと思った。でもまあ、奴の使う刃を借りる事で何とか……何とか行けても直後に来やがった援軍には逃げるので精一杯。奴の持つ刃は所詮銀河連合だからな。仕方なく俺は折れた包丁を持って逃げ続けた。相棒であるこいつの方が銀河連合のそれよりも信用出来る。要はそんな物だ、なあ)
 直後、斬弥は拠点型が繰り出す触手型に絡め取られ、相棒である古式神武包丁を落としてしまった。
「へ、ここまで良く保った。どうやら俺も天同生子には届かんかったな。ここで俺の五体は裂かれてしまうのか? さっきから痛いんだけど」
 そう口にしながらも心の中では打開策を模索する。
(まだ死ぬ訳にはゆかん。こんな物じゃあ想念の海に旅立っても七を始めとした歴代仙者達に叱られてしまう。その為に退路を断ったんじゃない。退路を断ったのは……拠点型を倒して真正神武の同胞達の仇討ちを果たす為だよ。こんな所で、こんな……所でえええ!)
 肉体の限界なのか、それともたまたま上手く行ったのかは定かではない。斬弥の脱力は成功し、触手が漂う空中で落下の衝撃に備えて重たい五体を繰り出しながら触手型の動きを読んでわざと絡め取られながらも何とか成人体型百もある所から激突する事を避けた斬弥--代わりに利き腕だった右が機能しなくなった。
(折れてしまったな。やっぱり高さがあれば受け身で回避出来る訳じゃないな、現実は)
 成者式に高い所から跳ぶ事には成功しても実際の戦いでは高い所から落下すれば死は免れようとも何処かを損傷するのは自然の摂理。生命は未だ重力を克服出来ない。それを改めて思い知った斬弥は……立ち上がる!
「オイ、俺が右腕折られても立ち上がる事に何か満足しないのか?」
 と斬弥は挑発する程の態度を見せる。
「おっと、右腕は折れても残りで補助すれば何とかなる」
 それでも素手では何とか出来ないと知ってる斬弥は少しでも拠点型を死に至らしめる何かを探す。
(そう簡単に真正神武の国民が遺した在処ってのは……お、あれは!)
 斬弥は結局、真正神武国民が遺したありかを発見するには至らなかった。が、今残ってる物ならば……それに等しい。
「よお、待たせたな。じゃあ最後の仕事と行こうか」それを口に咥えると直ぐに跳んだ。「気合い入れるからお前も気合い入れろよおお!」
 次々と襲い掛かる触手型を蹴って登ってゆく斬弥。限界が近いのにどうしてまだ力が湧くのか? その答えは斬弥の思ってる事にあった。
(果物は別腹であるように俺の底力にも別腹は存在する。そうゆう事にしとけば世の中ってのは単純に出来てると思うだろう……マルータ!)
 ようやく蠢く心臓部を発見した斬弥はそれが閉じる前に咥えていた折れた神武包丁を左手に持って触手型の動きを読んで蹴り飛ばした--と同時に全身を潜り込ませるように突く!
 その一撃は届き、斬弥は噴き出す赤黒い液体に吹っ飛ばされ、内壁に背中を強く打った!
「アッグ……あああ、はあはあ」ずり落ちながら斬弥はこう確信する。「ようやく長い戦いは……開始点に踏み入れた」
 尻餅し、それから俯せに倒れ込んだ斬弥。彼の周りでは次々と起爆するように血を噴き出す。この世界が終わりを迎えるかのように。
(俺の戦いはここで終わる。でも俺達の戦いはまだまだ続く。真正神武奪還はまだ始まったばかりだ。だが、俺はもう駄目だ。おいぼれの時代はここで幕引きと行こうか。後はバーバリッタを始めとした若い世代に託そう。だろう、もう直ぐ生まれるだろう……俺達仙者の連続性を受け継ぐ十五……おっとこんな名前だったかな? それに振り仮名はどうするんだろう? 忘れてしまった。けれども俺がもしも生き残れたら今度産まれてくる子供の名前は必ず十五にするぞ。これだけは譲れない。これだけは……な)
 そうして両の瞳を閉じる斬弥。崩壊する拠点型が造りし奈落に落ちようとも開く事は--





















 未明。
 雫が斬弥の右頬に当たる。
(ううう、ここは想念の海、か?)
 斬弥は瞳を開ける。すると飛び込むのは--
「キルウウウウウウミイイイイ!」
「お前は……その中に俺達の--」
「お前という男はどうしてあたいを心配掛けさせれば気が済むんだ!」
 有無も言わさずに斬弥は引き揚げられた--七弓と弓八とそしてシデンドウに依って。
 どうやら俺達は死ねない分隊だね--チーチョス・バーバリッタは二の年より後の戦いにて第三十防衛網突破の際に指揮官型の攻撃を全て受け切ってこの世を去った……享年二十七歳。
「まだまだイマジナリーセンチュリーは続きまっせ、親父さん」キッザス・キシェールは最後まで生き残ったが、戦闘での後遺症が元で五の年より後に僅か二十三歳で想念の海に旅立った。「その為にも最後まで奪還を果たっさなとね」
「全くバーバリッタ分隊の死ねなさには困った物ですね?」そんな事を言った糸風サンショウ七は二の年より後の戦いで第三十五防衛網突破戦にて見事な玉砕を果たした……享年二十七歳。「きっと神様が我々を守って下さってるんだね?」
「偶然は長続きし無かろうに」と釘を刺す木戸デュー台は三の年より後に始まった大陸藤原奪還戦にて最初の犠牲者に成った……享年三十三歳。「それでも今を精一杯生きるだけだろう」
「幸せだけ考えるんだ、デュー台」幸せを問うた式部リッ堂は天寿を全うした……享年三十九歳。「そうすれば長生き出来るんかも」
「そんーな無茶苦ー茶なあ」と後ろ向きな物部フル降も又、天寿を全うした……享年四十一歳。「まーだまだ真正神武跡ーは銀河連合で溢れまーすよ」
「それにしても斬弥様の生命力よの」パタ八十はデュー台が戦死した大陸藤原奪還戦でも最後まで最前線を進み続け、彼の死と共にそれが果たされる……享年三十一歳。「凄い事ですよの。まるで神々の加護を本当に受けてるかのようですやわ」
「実際そう出あろう。だからこそ斬弥様端生き残った」ヤマビコノシデンドウは真正神武奪還を果たしたその年に波乱万丈の一生を終える……享年四十四歳。「斬弥様端運命似愛された御方だ」
「確かにそうだろうな」飛遊三浩は斬弥及び七弓亡き後も最後まで天同家の為に尽くし、寿命が尽きる前に七弥ななみと婚約して交わりの後に没する……享年四十八歳。「斬弥様だからこそこの運命に打ち勝てた」
 さて、天同家以外のこの後を紹介した。では天同家のこの後はどう成るのか? それはこの戦いの後に斬弥と七弓の最後の子である十五とごは誕生。彼の養育係は姉である弓八に任された。それから二の年の後に斬弥は最後の真正神武奪還に臨み、それを果たした後に波乱万丈の生涯に幕を閉じた……享年三十八歳。
(俺は確かに死ぬ。でも俺の跡を継ぐ者達が居る限り、俺の魂は生き続ける)
 時代は斬弥が死んで十四の年に成るICイマジナリーセンチュリー百七十八年五月二十二日午前一時四分二十九秒。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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