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一兆年の夜 第五十六話 再誕の火 再誕の灯火(五)

『愛する七弓と今もタイガーフェスティで健やかに育つ八名の娘達へ。
 一の月が経った。第十まで突破した。今の数は二十一万。これならば残り三十二もの
防衛網も突破出来る。あ、俺は斬弥だ。御覧の通り言葉を話す。銀河連合に書かされてる
訳じゃないからな。
 と余裕じゃないな。未だに弓八の容体は良からぬ方向に向かうばかり。とうとう、俺は
あいつを送り返す事を決めた。治る見込みが少ない場合は一刻も早く送り返さないと
司令官として面を上げきれない。奪還が果たせた暁に俺が考えたあらゆる物を実現させる
為にも俺は公よりも私を優先して重傷者ごとあいつを送り返す事を決めた。
 何、途中で心配だって? そう思ってシデンドウも同行させる。本当は老いぼれの身
だからパタ八十を返してやりたかったが、どうにも若い連中の覇気というのは今も
変わらないと気付いた今日この頃。俺もそう思ってる時点で年を摂ったと改めて
思ったさ。
 さて、俺の感想は良いとしてもこのまま真正神武を奪還出来るかはわからない。だが、
今回は必ず奪還させる。俺の命に代えても。だからこそ俺は、いや良い。次書く時は奪還
し終えた後にする。
                               愛する斬弥より』

 十一月四十六日午後八時三分八秒。
 場所は第十防衛網。第十一防衛網にもう直ぐ人族の成者の手が届く距離に仮設民家が建っており、そこで夜を過ごそうとするは遠征部隊総司令天同斬弥。彼はキュー子或はその代理が来る度に記した手紙を右足に括りつけてタイガーフェスティ目掛けて飛ばしてゆく。
「ア、イイワスレタコトガアリマス!」
「何だ、キュー子!」
「ナナユミサマガ……ゴカイニンナサイマシタ!」
「……これで俺は前に体を向けられる」
 キュー子を見届けると斬弥は前だけに体を向け、正座したまま眠りに就いた。
(七よ、そして数多もの仙者達よ。どうか俺に力を貸してください。俺は喜ばしい報を伝えられて体を硬直させるかもしれません。そうなれば遠征部隊のみんなは全滅を免れない。ここは銀河連合の都合が支配する地。弓八が穢れに耐えられなかったのも全ては銀河連合による都合の強大さ故、さ。泥の大地は徐々に浄化され、臭いも改善の見込みはあるだろう。それでももう生命の死で穢れを払うのは今回で最後にする。死は所詮、生きる者達にとっては寿命で果てる以外に道はない。死に場所くらいは己達で決めてこその生きるという物。そうだろう……母上)

 十一月五十七日午後九時七分六十一秒。
 そこは第二十防衛網。斬弥は残り一回の五本目の古式神武包丁を右手に目の前で多くの軍者達を死に追いやった指揮官型との終盤戦を迎えていた。
(はあはあ、左手の傷が思ったよりも重たい。軽傷の筈なのに重たく感じるのはやはりここが銀河連合の上位的存在によって支配された大地だからか?
 いや、そんな事よりも先ずは今度の指揮官型とやらの動きに注目する所だろう。俺の舞をちゃんと学んでいて、しかも俺よりも速く動いてると読んだ)
 斬弥の読み通り、一名と一体は疾風の舞・恵で反撃を試みるも……弾き飛ばされたのは斬弥だった!
「中断左腕に備えた隠し腕が……白羽取りでどうだ!」とわざわざわかるように叫んだ後、宣言通り白羽取りしながら左腰に掛けてある鞘を右踵で器用に飛ばして口で掴んだ斬弥。「びぶぞおお!」
 指揮官型の連撃を読んで回避すると奴が疾風の舞・弥で最速の動きを見るやそうでないやら、突然鞘を投擲。指揮官型は何と疾風の舞・弥と見せ掛けて剛胆の舞・季に切り替えて何とその動きで鞘を弾き飛ばした。
(ふう、そのお蔭で俺は……拾えた)
 何と斬弥は先程指揮官型が見せた剛胆の舞・季を使用して挑む。が、指揮官型にとってはその舞も既に読まれていた。徐々に後方に下がり、尚且つ左腕の傷が徐々に良くない状態へと変化する事もあって尻餅しそうに成る事これで十一度目。
「片腕だけで良くも俺は戦えたもんだな、なあ銀河連合」
 呼びかけに応えるならばわざわざ生命は戦いの道を選ばない。故に両方共、前に進み相手を倒すしか心にない!
「如何した指揮官型! 拠点型を防衛するお前が俺如きにここまで後れを取る事に焦りを見せてるか? 長文を叫ぶほど余裕のある俺に今まで油を断ったのか? じゃあその余裕の根本をここで思い知れ、指揮官型!」
 指揮官型は斬弥は普段馴れた疾風の舞のどれかを使って状況の打破を狙うと算段し、剛胆の舞・央で斬弥を逆に弾き飛ばし、その隙を見て最大加速して両断を試みる……が、指揮官型は瞬間に動揺! 斬弥は指揮官型が恐れる動きを披露して見せた--と同時に上空成人体型後も浮き上がらせるという信じられない動きを実現した斬弥!
「ヘ、そりゃあ誰も実現出来ないよな。でもこの動きはそれじゃない」と斬弥は畏れ多くもこの動きがあの舞の再現ではない事を告白。「これは疾風と剛胆を掛け合わせた『風雷の舞』……それからこいつはどの動きにもない俺の独自力だあああ!」
 そして指揮官型の頭部目掛けて投擲--見事命中し、指揮官型を絶命!
「ハアハア、疲れた」両膝を泥の大地に付けると既に斬弥の安否を確認しに歴戦の軍者達が駆け付ける。「何だ、お前達かよ」
 お前達とか言う物じゃありません、斬弥様--チーチョスを始めとしたバーバリッタ分隊は斬弥を保護するように取り囲む。
「それで第二十防衛網は突破出来そうか?」
「それは問題ありまっせ。只、軍者の数はもう一万を切ろっととしてます」
「後には退けん。それにまだ拠点型を突破してない。首都六影県のあった拠点型銀河連合。俺はそいつだけは必ず倒す事が大切だと思ってるからな」
「無理は良くないやわ、斬弥様よの」
「有難う。だが、今はまだ無理を言わせてくれ!」
 左腕は幸い間に合った模様。だが、遠征部隊は既に侵攻当初の一割を切った。どう足掻いても全ての奪還は果たせない。誰もが思うだろう。だが、たった一名だけ考えが異なった。
(拠点型さえ倒せば後はそこを中継にして他の防衛網を突破すれば……或は)
 斬弥は賭けに出る--第二十一防衛網を突破した先にある旧六影県である拠点型の打倒目指して!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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