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一兆年の夜 第五十六話 再誕の火 再誕の灯火(四)

『--それから一の週は弓八の奇想天外な発想の数々に依り俺達は竹を破る勢いで
第一、二、三、四と防衛網を突破した。確かに弓八の言う通りだと思った。あいつには
一兆年の神々が味方してくれてる事をな。一兆年の神々は弓八に銀河連合を破る為に
必要な何かをお教え為さってる事を。
 まだまだ墨が足りないな。あ、弓八がどうしてこんな所まで居るかって? 俺達の
育て方が良くなかった。もう少しあいつには外の世界を知らせておくんだったな。これ
は俺達があいつを子供だと思って育てるから良くなかった。子供とは大人の想像を
超えて来るもんだと常々覚えておくものだったな。そう、それだけだ。
 まあ弓八についてはこれくらいで収めよう。最初の一の週までは弓八のお蔭もあって
遠征部隊は勢い付いた。だが、八日目にして急変。弓八が体調を崩した。どうやらあの子
にはこの穢れた世界は早すぎたか。或はもっと早く経験させるべきだった。何時も新しい
者達には助けられる代わりにあいつらを死地に送る自分達が甲斐性もなくて悔しい。それ
が真正神武に乗り込んで十三日目の現状さ。未だに第六防衛網の突破も出来ずに百万
居た兵も現在は九十万を切ろうとしてる。
 今は愛する七弓とそこで自由気ままに育つ七斬、斬美、斬実、斬三、九七、七美、七弥
とそこで我々や真正神武から来た銀河連合に依って現状の暮らしに安心しきれない心持
の国民全ての平穏を願うばかりだ。後は産まれてくる赤子も。それだけを俺は待ち侘びる。
                                愛する斬弥より』

 十一月二十九日午前七時一分四秒。
 場所は真正神武第六防衛網中間地点。そこにある五千六十四もの仮設民家の中で最も巨大な仮設民家にて斬弥は毛布にくるまれ、頑丈な石枕に頭を乗せて眠る弓八を起こしてお粥を口に流し込む。
「かゆ、美味しくない」
「我儘を言ってる場合じゃない。現状では美味しい物を食べさせられる状態じゃない。これでもお前の健康を考えて食べさせてるんだぞ」
「それ、よりも……ゴホゴホ!」
「斬弥様」
 二名しか居ないとある仮設民家の外からシデンドウは声を掛ける。
「何だ、シデンドウ?」
「一旦、第五防衛網摩出退くべき科斗」
「銀河連合に背中を見せたらそれこそ終わりだ!」
「です牙、弓八様乃健康於考えて--」
「弓八は覚悟してここまで足を運んだ。そんなあいつの望みを反るなど何の為の生命だ!」
「一生命の前に一父親でしょう」
「一父親だからこそ……俺はあいつの覚悟を汲み取らないといけないんだよ!」
「そう仰る乃端余り似模我儘過ぎません科!」
「老いで臆する病に罹ったか、シデンドウ!」
「何と--」
「止めてよ、年とった大人がささいな事で喧嘩して」
 そこでは流石に大人は降参するしかない。この状況下において子供は正しい意見を述べる場合もある。大人がまともに成れない時こそ子供は大人よりも先を行く物。これには斬弥だけでなく、シデンドウも我に返った。
「どうやら我々老者乃時代端終わり於迎えそうですね」
「子供に良いようにされたら大人は終わりだ。という訳で直ぐに支度するぞ!」
「ねえ、生きて帰って来る?」
「逃げる事も出来ない弓八を置いて俺が想念の海に旅立つかよ!」
「そういうと思った。だから必ず生きて、ね」
 母さんに似て無茶を言い出す--と斬弥は微笑みを見せまいと後二回斬る事が出来る古式神武包丁の刃ごと鞘を右手で取るとそれを紐に引っ掛けるように左腰に差した。
「ああ、生きて帰ってやるからな!」
(どうやら生きる理由が見つかってしまった。有難うな、弓八)
 そうして斬弥は仮設民家の外に出る……その隙に無理して布団から出ようとする弓八の真意に気付かずに。
「ゲホゲホ……キルは相変わらず雌の心がわかってない。あたしが病で大人しくしてる訳ないじゃないの」
 子供が大人に比べて勝手な理由。それは無茶ばかりして俯瞰的に成れない……そんな所だろう。弓八は予備で取っておいた片望遠刀とそれに合わせて製造された物部刃を百本入れた籠を背負うと、病で動きの硬くなった体を動かしてゆく。
「頭が痛いし、しかもめまい、が。で、でもあたしは、頑張るぞ!」
 一兆年の神々の教えに従い、弓八は密かに戦場へと足を運んでゆく……

 三十日午後十時四分三秒。
 斬弥は圧倒的な技量と得意とする疾風の舞・弥を使用して電光石火の活躍をしてゆく。迫り来る百獣型五体を相手に実戦では不慣れと評される疾風の舞・恵を使用する事で時間差を作り、疾風の舞・理で囲った三体を一瞬で尚且つ堅実に縦、横、斜めに一刀両断して見せる。それだけじゃない。残りの二体が時間差を利用して迫り来る時、何と剛胆の舞・央の動きを見せて相手にそれを刷り込ませると一気に元の疾風の舞・弥に切り替えて二体纏めて仕留めるのであった!
「凄ーい」これには齢二十八にして五の月と五日目に成る物部犬族の物部フル降も唖然とするしかない。「これが分隊ーのパタ八十と互角と謳わーれる斬弥様ですーね」
「こらこらやわ、フル降よの!」己こそ一番強いという自信を持つ齢二十七にして五の月と四日目に成る蘇我熊猫族の蘇我パタ八十は兎型一体の首を絞めながら注意する。「俺の方が強いやわ!」
「ハハハ、バーバリッタ分隊は相変わらずだな」
 困りますよ、余所見しては--と齢二十五にして二の月と五日目に成るロディコチーター族にして一分隊の隊長を務めるチーチョス・バーバリッタは後ろが留守に成った斬弥を助けるように襲撃した梟型の襟首を鋭利な上下の歯で掴み取ると抉り取るように仕留めてゆく!
「そうゆう事だッさ、斬弥様」と齢十九に成ったばかりのメデス蠍族の新米であるキッザス・キシェールは父親譲りの解説をする。「笑い合うのは本当に安心出来っ時ですな。安心ですよ。安らぐ心と書って、でっそよ」
「確かにな……そこの病者!」既に斬弥は弓八に気付き、彼女の居る方に振り返る。「まだまだ俺達老いぼれの卒業式は早いようだな、ええ?」
 既に戦いは終わった後。斬弥は第六防衛網の突破を果たすと平手打ちに依る躾ではなく、従来の言葉に依る躾で無理矢理弓八を寝かしつけるのであった。
(はあ、俺達も弓八の事は言えん。それでも俺は大人の責務を果たさないといけないのは辛い。俺達がやったからって後の時代の奴等にもやる自由を与えるのは後進育成が進まなく成るしな)
 諦めて斬弥は何時も通り手紙の執筆にとりかかった……が、良い案が浮かばなかった為に念を断じる。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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