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一兆年の夜 第五十六話 再誕の火 再誕の灯火(三)

『--あれから三の年が経過。俺はすっかり怠け者と化した。それも理由が付く。俺には
目的がない。全てお前の目的に沿って生きてきた。
 と誰かが言ってたような気がした。実際俺はそれを引用してこの手紙を書いて君
に送る。俺がやろうとしてる事は真正神武の奪還。真正神武の仇を討ち取る。それともう
一つが新たな国家神武の建設。国家神武とは天同家の仙者が興し、天同家の血を継続
して来た尊い物。水の惑星で初めて実現した国という形。
 まあ国というのは長々と説明したら今は亡きキッズィ・キシェールみたいに眠気を
誘うしな。なので簡単に纏めるだけに留める。えっと国とは村から町に、町から市に、
ではなく生命と生命の交流と全ての生命の望む為の形として国は誕生した。国とは生命
と生命の一体感と銀河連合と呼ばれる俺達にとって、長いな。つまり銀河連合の存在が
国を誕生させたんだよ。それで良いな、もう書き直せないのは辛い。石灰で文字を記せば
消すのも大丈夫だろうけど、石灰は文字を維持させられないから俺達は墨で文字を記す
しかないしな。
 さて、長く成り過ぎた。今は如何だって? 真正神武へ後一日で到着する。取り敢えず
期待してるぞ、七弓。一昨日交わった事で今度こそ俺達の望む理想の子供が産まれる
事を。もしもまた雌だったらもう天同家を維持するのを諦めて他の生命と同じように自由
に生きてみるのもいいかもな。まあそんな泣き言は帰ってからしよう、じゃあ帰りをしっかり
待ってくれよ。
                               愛する斬弥より』

  ICイマジナリーセンチュリー百七十四年十一月十六日午後十一時三十一分四十三秒。

 場所は旧真正神武。その入り口にて齢三十六にして四の月と十八日目に成る神武人族の老年に成ったばかりの仙者にして象徴兼遠征部隊の総司令を務める天同斬弥は齢二十九にして十一日目に成るアデス九官族の女性臨兵キュー子の右足にしっかり乾かした手紙を折り畳んで括りつけると次のような言葉を送る。
「良いか、キュー子。もしも俺に万が一のことがあったらその時は次期象徴は臨時で七弓にするよう伝えてくれ」
「エエ! マルデシヌトワカッテイルヨウナコトヲイワレマストサスガニタイジニエイキョウヲオヨボシマスヨ!」
「今回は百万で行く。それと中途半端に変える訳にはゆかん。依って俺は命尽き果てるまで戦うと決めた。
「ソレハソレハ!」
「それから蛇の足を追加しておく」
「ヘビノアシ?」
「今度産まれてくる子供だ。それは俺と神々の話し合いの結果……雄だ。だから七弓の跡は自動的にそいつに継がせるよう七弓達に伝えろ!」
「エエ、マタマタソンナコトヲイワレタラコンランシマス」
 もう十分伝えたから行け--そう言ってキュー子を送る斬弥。
(行ったな。俺が死ぬつもりだと決めたのは七弓と抱き合った時だ。だが、その時に七弓には伝える事が出来なかった。伝えたらあいつは止めて腹に何重も巻いて出陣するかも知れないしな。その可能性は十分ある。それはな)
 そこから先は斬弥自身が余りにも説明が長たらしいので大雑把に纏めると次のように成る。
 子を九名も儲けながらも七弓は者前で隠れて武芸に明け暮れる。たまに赤黒く染めて帰って来る事が度々ある。たまに手合わせするとどうしても加減が出来ない。そう、七弓の包丁の腕前は母と成っても、四十過ぎても衰える気配が見えない。いや、腕前だけでなく身体能力も斬弥や老齢なのに未だに衰えを知らない齢四十二にして八の月と四日目に成る神武鬼族のヤマビコノシデンドウ、後は齢二十七にして四の月と二十一日目に成る蘇我熊猫族の蘇我パタ八十に届かないにしろ油を断って良い雌ではなかった。
 さて、斬弥は七弓ばかり気を取られて至極大事な者の一名にして七弓の性格を最も受け継いだ雌の子の存在を軽く視ていた。彼女は遠征部隊が運ぶ物資車の中に忍び込んでは油を断っていた斬弥の背後に向かって飛びついて来た!
「わわ、お前は!」
「捕まえたから、キル!」
 だからお父さんと呼べ、弓八ゆみは--齢十四にして四の月と六日目に成る神武人族の少女である弓八に訂正するよう注意する。
「やだよ、そんなの。だってそれ呼んだらあたしが子供扱いされてるみたいだからさ」
「今も子供だろ。幾ら第一子でもまだ十四の雌の子が……なあ」弓八を降ろすとすかさず右平手打ちをする斬弥。「物に隠れてここまで来るんじゃないぞ!」
「痛いよお」
 右手で右頬を抑える弓八に斬弥は左から平手打ちをする。
「二度もぶった」
「これは二回言っても聞かない子への注意だ。さて、注意は終わった」
「え、終わったって?」
「俺も母さんも良い大人じゃない。これだけ年を摂っても弓八すら碌に育てられないからな。だから今度は弓八は何の為に命を懸けるかを問う」
「ええ、認めてくれるんじゃなかったの?」
「あのなあ、弓八。大人足らずな大人でも最低限は守らなければならない事がある」と言った後、再び問う。「それで弓八、お前は命を懸けにここまで来たのか?」
「そ、それは……わからない。だってあたしはずっとタイガーフェスティの中で過ごして来たんだもん。外が如何なのかなんてわからない。でもわかる事がある。それは……あたしは知りたいんだよ、キルも七弓ちゃんも見て来たしんせいじんむだった場所を」
「だから父さんと母さんと呼べ……と言っても聞かないんだな」と言いつつ、弓八の願いに対する答えを出す。「若い命を散らす事に成っても、か?」
「大丈夫。あたしには一兆年の神々が味方してくれるから」
「そう来たか……良いだろう。だが、恐かったら全力で逃げろ。例え俺が危ないとわかっても、だ!」
 そんなこと言うな--弓八は先程ぶたれたお返しに頬の右と左にそれぞれ四発ずつ握り拳をぶつける。
「四の倍数に成ってないか?」
「七弓ちゃんは何時も言ってたよ。雌の肌は雄よりも繊細だって」
「もう注意しない……好きにしろ!」
 やったああ--その喜びの声を聞いて斬弥は疲れを感じたらしい。
 こうして斬弥は弓八というとんでもない雌を連れて真正神武奪還に臨むのだった……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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