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一兆年の夜 第五十六話 再誕の火 再誕の灯火(二)

 二月二十三日午前十時六分四秒。
 場所は真正神武第一防衛網。
 そこに合流するは齢三十三にして四の月と二十七日目に成る神武人族の中年率いる本隊。彼らの数は前よりも一分にも満たない。当然である。生命の数には限りがあるし、況してや即興で子作り出来たら苦労はしない。当然ながら少ない数しか率いないのは当然の帰結。
 兄さんの仇は何時に成りますか--そんな状況にもかかわらず、仇討ちに燃えるのは齢二十二にして二の月に成ったばかりのロディコチーター族の青年。
「今回は領土の維持の為だ、チーチェン」
 納得いきかねます、斬弥きるみ様--と青年チーチェンは小出しに満足しきれない声色で漏らす。
「バーバリッタ分隊長君は若いからそう言えるけど、戦いってのには数が必要さ。だが、その数を揃えるには待つしかないんだ。ほら、『果報は寝て待て』って諺は聞いた事あるだろう?」
 何ですか、かほうとか言う病は--チーチェンはどうやら学問に疎い模様。
「こう成ればわしから解説を進めったな」と齢三十六にして二の月と二十八日目に成るメデス蠍族の老年は分隊の頭脳係として説明を始める。「果報……つまり果っての報告だ。それっで寝て待て……これは寝てでも待てば、だっ。これら二つを合わっだ意味は即ち、果っての報告の為に寝てまで待っぢ身。要するに『良い報せが届っまで忍耐せよ』という意味だ!」
 すまん、途中で聞かなかった--どうやらチーチェンが屈して退く程に蠍族の老年の話は眠気を催す物らしい。
「キッズィ爺さんの言う事は長いから僕から説明するね?」と齢二十二にして二の月と一日目に成るラテス山椒魚族の青年は補助を担当する。「要するに我慢すれば良い事あるね?」
 成程、何となくわかった気がする--それでも理解に程遠いチーチェン。
「はあ、これだから我が分隊は馬か鹿のようんな軍者しか居ないんだよ」
「常の識とは思われても俺から言わせようとお前さんも大して変わらかろうぜ」
「そうそーう、七名しか居ないバーバリッタ分隊はみんーな問いたい題名の児童の集まーりだから」
 次々に喋り出すは齢三十にして三の月に成ったばかりのゼノン栗鼠族の中年式部リッ堂と齢二十七にして一の月と二十三日目に成るエウク燕族の青年木戸デュー台、齢二十五にして五の月に成ったばかりの物部犬族の青年物部フルふる。そして次に口を開くのは分隊一の暴れん坊を自称する齢二十四にして四の月と三十日目に成る蘇我熊猫族の青年蘇我パタ八十。
「気を付けてやわ! 下から何かが--」
「ああ、蘇我フク分隊長の言う通り……だ」
 斬弥もその気配に気付くと素早くデュー台の足下から出てこようとする何かに向けて古式神武包丁を抜いてまるで刺していないかのように見せる芸術的な突きを放った。それを浴びた泥土は盛り上がるように何かを吐き出そうとし、次の瞬間に赤黒い何かを噴き出した!
「わわわわ、浴びてしまわれた! 浴びられちまいまされた!」
「清掃係よ、早速仕事に取り掛かれ!」
 足下から土竜型の前右足が出て、掘り出してみるとそれは頭頂部に包丁のような刺し傷を受けて息絶えていた。
「刃毀れはありませんか、斬弥様」
 そう声を掛けるは齢二十歳に成ったばかりのゼノン人族の青年である飛遊三浩みひろ。彼は斬弥に気に入られて付き者に選ばれるが、同時に斬弥に無理矢理戦の場に送り出された少々運勢の宜しくない生命。それでも他者を心配する心優しい性根は斬弥の心を安らがせる。
「大丈夫だ。少し練習していた技術だが、もう心配要らない。実践しても大丈夫そうだな」
「何でも実験はいけませんよ。僕をこんな危ない所に連れて行こうとする--」
「もうお喋りする時間は終わった。これより俺達は戦線の維持を心掛ける為に第十五防衛網まで一気に駆け抜けるぞ! 駆け抜けた後は一気に抜けるんだ! 奴らに俺達は休みなしだと思わせる為だ! 良いなあああ!」
「「「「「「「「やってやろおおおおう!」」」」」」」」
 号令と共に斬弥達仮遠征部隊は駆け抜けた! だが、所詮は仮の遠征部隊。銀河連合はこれに直ぐ気付いて陣営を固める作戦に出られて開始から五の日と経たない内に犠牲者を一名も出さない為に僅か十一まで足を運んだ後に退散してゆくのだった!
『--そう、これが最初の仮遠征の末路さ。どうやら銀河連合も俺達の事は御見通しの
ようだな。全くこれでわかったのはつまり、本気の遠征を心掛けないと良くないってな。
まあそうだよな。という訳で俺達は誰一名たりとも犠牲者を出さずに首都まで帰って
ゆく訳だ。これじゃあ首脳陣もお怒りだろう。何の為に金を掛けたんだ。食料を
出したんだ、ってね。
 おっとそうだ。七弓よ。九名は元気か? どうも七美も七弥も仙者なのに余り肉体が
宜しくないって聞くんだ。まあまだ赤子だからな。無理は出来ないのはわかる。初めて
だよな、仙者切開なんて。その影響は大きいからどうしても。あ、そうか。お前も腹を
切られて痛みに耐える時間だったな。済まない。直ぐに帰って来てみんなを励ましに
行く。だからそれまで待ってくれよ
                                愛する斬弥より』

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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