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一兆年の夜 第五十五話 再誕の火 日は火を呼び寄せる(七)

 二月十七日午前七時二分四秒。
 場所は古式神武首都タイガーフェスティ中央地区古式神武聖堂。
 そこに一通の手紙が届く。それを受け取るのは齢三十一にして五の月と十六日目に成る神武人族の熟女が齢零にして十日目に成る第二子を心配しながらも齢三にして四の月と九日目に成る赤子はひたすら七弓の髪を引っ張る。
「こら、弓八! いい加減に母さんの髪を引っ張らないの」
「こら、ななちゃん。いいかげんあたいにかまって」
「ななちゃんじゃなくておかあさん、でしょ?」
「ばぶうう」
「よおしよおし、良い子ね。えっと名前なんだったの?」
 またお忘れですか--と呆れ気味なのは齢三十六にして六日目に成るゼノン人族の飛遊美咲。
「あら、美咲ったら……それ何?」
「斬弥様からのお手紙です」
「え、あいつから?」
 子を儲けようとも幼い頃の口調の癖は直らない七弓は美咲が持つ手紙を強引に取るとそれを開いて読む。
「相変わらず斬弥は文章校正が下の手ね。何々?」
 その中身は次の通りだった。
『やあ、元気か? 俺だよ、斬弥だよ。
 単刀直入だが、俺は引き返す事にした。何故かって? 部下の為だよ。これ以上部下を
病で死なせる訳にはゆかないと判断して俺は引き返す事にした。それはだな--』
 途中で新たな手紙が齢十八にして十四日目に成るアデス九官族の少女が嘴に咥えながら駆け込んできた。
「タイヘンデス、ナユミサマアアア!」
「如何した、慌ただしく」
「コレヲ、コレヲオオオ!」
「えっとお預かりしますので封は切っておきましょうか?」
「あたいが切るから美咲は二名の相手をしてて」
「って真っ先に私を弓八様と七斬様を押し付けますか」
「だってあたいは子供の面倒は余り好きじゃないから」
「というかそうゆう仕事は本来私達が--」
「五月蠅みたいに喚かないの。だから全部読んだら助けるから待って」
 遠すぎる過去に於いても子育てが良くない親は存在する。七弓はそうゆう親の一名と数えるのも正しい。そんな七弓は一枚目の手紙の続きを読んでゆく。
『--真正神武は予想を遥かに超えるくらいに穢れが進行していた。銀河連合に依る土地
の穢しは俺達の中にある物に火を付けるのに十分なまでだ。これを書いてる俺は咳き込み
ながらも未だに怒りで我を忘れそうなくらいだ。あいつらはやっぱり全て倒さない時が
済まない。いや、気が済めない。
 だが、俺達があいつらを倒すには現行の装備ではどうにも出来ない。数を揃えたつもり
でもまだ数が足りない。武器を揃えたつもりでもまだ武器は足りない。食料を揃えた
つもりでも衛生面ではまだまだ不足がある。こんな状態でどうやってこの先も進行を進められる?
 俺がここまで弱気に成る程だ。いや、俺がこうして書いてる事自体が部下達を代弁してる
としか言いようがない。
 まあ今回の手紙はここまでだ。続きは後で送られる手紙に記しておく。それよりも
そっちは大丈夫か? 俺が居なくてずっと苦しいか? 苦しいなら俺は真っ直ぐ帰る為
に急ぐよう指示するけど良いか?
                                愛する斬弥より』
 ふう--七弓は内心、その手紙を読んで安心と安らかに成れない何かを共有する。
「次はこの手紙……無事でいて、斬弥」
 恐る恐る開こうとしたその時、先程駆け付けた九官族の少女が駆け付ける!
「コラ、キュー子! 折角生命が手紙を読んでる時に駆け込まないで! 心臓に良くないわよ!」
「ソノ、エンセイブタイノミナサンガ! エンセイブタイノミナサンガ!」
「回りくどいのは止して本題だけ告げて」
「カエッテキマシタヨ、カエッテキマシタヨ!」
 何だって--七弓はそれを読むのも忘れて外へ出ようと足を踏み入れた!
「七斬はあたいが抱えるから美咲は弓八を抱えて行こう!」
「え、手紙は--」
「そんなの後回しよ、美咲!」
 あ、ちょっと--老婆で膝の痛みを抱える美咲の右腕を引っ張って外へ出る七弓。
 そんな二名の後を追うようにキュー子は戸を閉めてそれを追った。

 午前十時二分十五秒。
 七弓は途中で空腹を訴える。故に走るのを止めて歩いて彼らを迎えに行く。その道中、彼女を警護する軍者が集まり出す。それは彼女の向かう先に生命だ仮で一杯に成るのを防止する為に。やはり古式神武で斬弥の正式な嫁に成ろうとも他者の迷い惑わす性質だけは変わらなかった。その性質はやがて第一子の弓八のみならず、第二子である右も左もわからない七斬にも受け継がれてゆく。そんな七弓が空腹で走るのを止めるのも彼女がお転婆であり続けるからだろう。
「全くどうして向かう前に朝食を抜いたんだろう、ねえ?」
「私は膝の痛みが来てますよ。そろそろどなたかに--」
「いやよ、最後まで抱えなさい」と七弓は勝手が過ぎるのであった。「乳母である以上はあたいの子の面倒を見るのが大事よ」
「フウ、どうして私は七弓様の従者に成ったんだろう?」
「何か言った?」
「いえいえ」
 全くお前という奴は飛遊家の婆さんにまで無茶を要求するなあ、七弓--とそこに七弓が頬擦りしたい相手が目の前に立つではないか。
「無事だったのね、斬弥!」
「第五防衛網で断念した--」
「良いのよ、斬弥。君が……あ、そうだ。抱えて良いの?」
「気付いたか。読んだな、二通目も」
「いいえ、遠征部隊が到着したと聞いて急いできたのよ……朝食も摂らずに」
 全くお前という奴は--斬弥は泥塗れで我が子を抱く事も出来ない己の言いたい事を素早く呑み込む七弓に涙を流した。
(これはまだ終わりじゃないよな? まだ終わりは早いよな? 真正神武を取り戻す戦いはまだまだ始まったばかりだよな? だったら俺達はまだ戦えるよな? そうだろう……死んでいったみんな)
 尚、帰還したのは斬弥含めて僅か二十六名。その二十六名が後に次の遠征の時に真正神武を救う銀河連合を震わせてゆくだろう。それは次回であるICイマジナリーセンチュリー百七十四年二月十四日まで待たなくてはならない。
 そう、それは天同斬弥の齢が三十三、その妻七弓が三十九の時である。

 ICイマジナリーセンチュリー百七十二年二月十七日午前十時十分十秒。

 第五十五話 再誕の火 日は火を呼び寄せる 完

 第五十六話 再誕の火 再誕の灯火に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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