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一兆年の夜 第五十五話 再誕の火 日は火を呼び寄せる(六)

 午後八時零分二秒。
 第一防衛網にて凡そ一万もの仮設民家が建てられる。これが意味する所には第一防衛網における戦闘で少なくとも半数の五万二千六百十五名の死亡が確認。少なくとも二千四十八名の重軽傷者を出した。これについては仮設民家にて会議を開く首脳陣も危惧する所である。
「こっれは良からぬ数値でっせ」
「わかってるよ、そんな事は。まさか半数以上もこの地に還る事に成ろうとは」
「後端……ゴホゴホ、故乃穢れた大地斗それ於加速させる穢れた空気だ那」
「確かお前と同じ種族だった真正神武の……えっとダッジャールの者も患ったと七弓から聞いた」
「本当っす。ゲホゲッホ、はあはっあ。たった数の時戦っただけでこんなに苦しくなるって」
「俺はまだ実感出来てないが、只……泥に浸かっただけで服が黄ばんでる」
 本当ですね--とチーチョスは新品なのに既に破けが見られる理由に気付いた。
「これは流石に笑えまっさ」
「兄さんはこの泥もあって……悔やんでも戻らないス」
「兎に角、これだけは言える。真正神武への遠征は途中で引き返す時が来るぞ。今のままでは--」
「何を弱気な事を言いますかス、斬弥様ス!」
「いいっや、斬弥様の言っ通りだって」
「禾野よ、貴様端遺伝子摩出腰砕け科!」
「だって……ゲホゲッホ、幾ら生き残れても帰ってきてこの様じゃあ奪還した意味ないっす」
「だからって引き下がれる訳が……ゴホゴホス、何て息苦しいんだス!」
 まだ第一防衛網を突破したばかりだろうが--と会議に集まった猛者達も深刻な咳き込むをする程に弱まっていた。
「空気の正常化には十の年では済ませない程の期間を要する。それにこれだ……泥を元の土に還すにも更に期間を要する。だからこそ俺は……ここでも迷いが生じる」
「斬弥様、貴方斗いう御方端」
「言ってくれまっしたね。じゃあ--」
「だが、今は奴等に一泡吹かせる程防衛網を突破していない! ここで引き下がると思うなよ、コケ都留!」
「ウウウ、全然わかってくれってない」
 どうやら斬弥は七弓の影響を強く受け過ぎたせいで既に無理難題を押し通すつもりで居た。其処でどれだけの犠牲が出るのかにも把握しきれない状態であろうとも。
「やはりそう出なくて端、ね」
「最後までついていきまス、斬弥様ス」
 足りない補給は根性で補うだけ--と一聞すると無理難題そうな根性論を主張するチーチョス。
「みんな……それじゃあ寝ようか」
 そうして会議は短時間で終了し、それぞれの仮設民家に戻って就寝するのである--見張りの者達以外は。
(こうゆう時に限って奴らは俺達を起こしに来るだろう。そうに決まってる。だからこそ俺は……寝られない)
 戦う者に休息はない。仮に真夜中に襲う銀河連合が居ないとわかっていても簡単に寝付ける生命は極僅か。名を挙げるなら臆した病を持ち、尚且つ楽しんで天国を味わうような禾野コケ都留。他の者達はそうもいかない。だが、悲しみに観察する軍者の思考はこういった長期的な活動では却って足枷又は羽枷にも繋がる。そう、寝不足。それが齎す深刻な病にまだ誰も気が付かない。だからって安易に休息するのは命取りにも繋がろう。
(眠れ、眠るんだ。こう成ったら一兆年の神々にお願いしよう)
 目を開けた斬弥は泥の浸食が深刻な地面に藁で覆い、そこに胡坐をする。
(これで少しは泥の心配は要らないだろうよ。さあやろう、絶対やろう。天同家の代々の仙者はこれをずっとして来たと俺は信じてる。まあどんなやり方なのかを教わる事もなく、母は死んでしまったのは少し悲しいな。だからこれは七弓から教わったやり方で試してみるぜ)
 斬弥はそれを敢えて口に出して唱えてみせる。
「水の、大地の、山の、火の、風の、空の、重力の、それから宇宙に生きる一兆年の神々よ! 何を思い、何を為し、何を視るんだ! 俺達全生命体に神々の意志を教えくれ! 約束としてこの大地を再び豊穣にしてみせると誓いますので、どうかどうかどうか……」
 その時、斬弥の瞳に映るのは黒と灰という色から、赤く青い色、そして桃を越えた色に変化。それらは次の通り。
(これは……これが母や七弓が何時も見る神々が見せる明日? というかどう成ってるんだ?
 何……何だと! 赤黒い何かが……だとしても俺は!)
 斬弥はそこで自らの迷いの正体に気付く……そして--

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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